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2011/11/22 2011:11:22:18:40:45

[ウィーン室内合奏団] 来日直前 現地コンサートレポート


 目下来日中の"ウィーン室内合奏団"が出発直前の11月19日、地元でコンサートを開催した。ウィーン国立歌劇場で今シーズンからはじまり、いま急速に人気上昇中の"ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団メンバーによる室内楽シリーズ"の一環として、歌劇場南翼のマーラー・ザールで開かれたマティネでは、日本で予定されているプログラムのうち、
 1.モーツァルト「弦楽四重奏曲 ニ長調 "ホーフマイスター" K499」
 2.ウィーバー「クラリネット五重奏曲 変ロ長調」
 3.シューベルト「八重奏曲 ヘ長調」、
それに儀礼としてのアンコールに「ポルカ」が演奏された。 

 クラシック音楽の精華であるウィーン音楽の、さらにそのエッセンスたる室内楽を演奏して彼等、"ウィーン室合奏団"ほど、世界的に評価の高いグループは他にない。ウィーン・フィルの歴代のコンサートマスターにあって、ひときわ傑出した存在であったゲルハルト・ヘッツェルは独奏や室内楽の分野でも卓越した音楽家であり、その彼が1970年に設立し、精魂を込めて育んできたこの合奏団には、いまも創設者の典雅で洗練されたスタイルが脈々と継承されている。
 三重奏、四重奏はもとより、さらに規模の大きいアンサンブルで、いわば彼らの母体であるウィーン・フィルの縮小版に相当するから、楽器編成がいかようにも可能であり、演奏される音楽もじつに多種多様なのが利点であり特徴だ。今回もそのような彼等ならでは魅力が十二分に発揮されたプログラム構成で、客席が大きく湧き上がった。

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 モーツァルトのしっとりとした佇(たたず)まいから、明るく軽快なクラリネットが疾走するウェーバーへと鮮明に一転する呼吸感。演奏する側にとっても大曲であるのみならず、なかなか手強いシューベルトで発揮される表情のゆたかさは、この作品を長年弾き続けてきた彼等の自信と余裕の表れに違いない。さすが実力者揃いであるだけに、一旦演奏がはじまれば、そこは文句の付けようがないほどの完成度の高さで聴衆を魅了したのだ。
グループ代表のタマシュ・ヴァルガ(チェロ)によれば、
「ほぼ1年前に国立歌劇場における"室内楽シリーズ"の企画が持ち上がったとき、つねに"ウィーン室内合奏団"の日本ツアーのことが念頭にあったので、即座にツアー直前の11月の日程を申請しました。日本向けのゲネプロ(最終総練習)に当てるのに絶好の機会だと考えたからです」。
「長い準備期間を経て実現した今日のコンサートで、ドミニク・マイヤー国立歌劇場監督、クレーメンス・ヘルスベルク楽団長以下、敵情視察のオーケストラ同僚(笑)、それに批評家、ジャーナリスト等々が揃った客席から十分な手応えが感じられましたね。これで日本の皆様に満足していただけることが確信できましたから、すぐに出発できますよ!」と誇らしげに語るヴァルガだ。
 錦秋の日本に雅(みやび)やかなウィーンの音楽家たちが、ひときわ彩(いろど)りを添える。

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山崎 睦(音楽ジャーナリスト・在ウィーン)

photo_Terry Linke



●ウィーン室内合奏団2011年日本公演 公式サイト
 >>http://www.nbs.or.jp/stages/1112_wiener/index.html