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2008/08/13 2008:08:13:13:20:06

マニュエル・ルグリ、小出領子インタビュー&動画メッセージ


東京バレエ団「ジゼル」で2度目の共演を果たす、マニュエル・ルグリと小出領子。1ヵ月後に本番を控えた二人を、演劇・舞踊ライターの岩城京子さんがインタビューしました。

―――ルグリさんはキャリアを通して『ジゼル』を踊り続けられています。今の年齢でも変わらず、この演目を踊りたいと思われる理由を教えてください。


08-08.07ルグリ-小出 (55).jpg ルグリ今の年齢でも変わらずというより、今の年齢だからこそ、これは踊りたい演目だと言えます。というのも多くの人は『ジゼル』のようなクラシック作品には何より若さが必要だと言われるでしょうが、私の中ではこの演目は、若さではなく円熟味と結びついている作品だから。特にアルブレヒトという役は、30歳を越えてからようやく理解が深まってくる役柄です。告白するなら私は、最初にこの演目をボリショイ・バレエ団と共に踊ったとき、さんざんなできばえの踊りしかできず、そのあと数年間"ジゼル嫌い"になっていたほどです(笑)。本当にこのバレエが好きになれたのは、10年ほど前からですね。




―――小出さんは今回、初めてジゼル役に挑まれますね。


小出 はい。少しずつ個人稽古をはじめているのですが、特に2幕のムーヴメントに難しさを感じています。身体を使って空気感そのものを表現しなければならない。これもテクニックのひとつなのですが、とても苦労しているところです。全体的には、花を愛し自然を愛しとにかく純粋で、目の前に突然あらわれた男性に心から恋に落ちてしまうようなピュアな女の子を演じられればと思っています。

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ルグリ 領子とは『眠れる森の美女』でいちど共演しているので、彼女が役柄に対してどんなアプローチをとってくるのかなんとなく想像することができます。私にとって領子は、純粋なクラシックバレエのエッセンスを持つバレリーナ。一緒に踊っていると、とても優しい気持ちになれる。なので、今回も決して女性に乱暴なアルブレヒトにはならないと思いますよ。




―――話は変わりますがルグリさんは来シーズン、ベジャール、プティ、プレルジョカージュ、デュアト、クランコなど多彩な作品群を踊られます。特に楽しみにしている演目があれば教えてください。


ルグリ 『オネーギン』。あの演目をパリで踊れることが、このうえなく楽しみです。そしてこの作品が私のオペラ座でのアデュー公演になる予定です。ただこの演目じたいは、これからもずっと長く踊り続けていきたい。オネーギンはとにかく、自分にとてもあっている役柄なのです。自分にその役があっているか否かは、直感的に分かります。たとえば身体的な面から見て、明らかに私に『スパルタクス』は似合わない。けれどロミオやデ・グリューやオネーギンはあっている。あとはこの年齢になると、いかに衰えを見せない演目を選ぶかということも大切です(笑)。オペラのテノール歌手は年齢を重ねると、少しずつ声が低くなっていき、その声域にあった役柄を選んでいきますが。それと同じで私も、今の私の長所を最大限に生かせる役柄を選ぶことが大切。でもそうして年齢と共に進化していけるところが、ダンサーという職業の素晴らしいところ。領子もどんどんキャリアと共に成長していけるはずですよ。


小出 はい。私も最近になってようやくテクニック的なことではなく、演技を通して「自分らしい感情」を表現することにおもしろさを感じてきました。だから今後はよりドラマティックなバレエを楽しんでいけるんじゃないかと思っています。


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ルグリ そう、バレエにおいては何より「自分らしく」いることが大切。そうすればダンサーおのおのが十分に個性を発揮し、観客の心に一人間として触れることができるはず。いつも自然に、いつも自分らしく。そんな考えで、二人で『ジゼル』を踊れるといいですね。そうすれば、きっとうまくいくでしょう。


 
取材・文:岩城京子(演劇・舞踊ライター)



マニュエル・ルグリ&小出領子 動画メッセージ



【ルグリメッセージ】

まもなく領子と東京で「ジゼル」を踊りますが、彼女とは数年前に「眠りの森の美女」でも共演しました。その領子と再び共演し、「ジゼル」を一緒に踊れることは素晴らしい贈り物ですし、大変幸せに感じています。是非僕たちの舞台を観にいらして下さいね!