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2015/05/21 2015:05:21:12:08:39

オレリー・デュポン パリ・オペラ座アデュー公演レポート

1 photo Julien Benhamou_ Opeフ〉a national de Paris_tw.jpg オペラ座バレエ団のエトワールの中で、ダンスに興味がない人々にも広く名前を知られているのがオレリー・デュポン。そんな彼女の『マノン』によるアデュー公演はガルニエ宮の席を埋めた2167名(その中には映画界、政界のセレブリティも大勢 !!)だけでなく、ライヴ放映したフランス国内の映画館に足を運んだ人々も立ち会えるという特別なアデュー公演となった。
 常に定刻に開始するオペラ座だが、この晩の開始は19時30分の開演時間を数分すぎてから。オレリー・デュポンとゲスト・ダンサーのロベルト・ボッレによる『マノン』はこの晩で5回目ということもあり、二人の息はぴったり。特別な晩であり、しかも生中継なので、コール・ド・バレエも豪華なエトワール共演者(ステファン・ビュリオン、アリス・ルナヴァン、バンジャマン・ペッシュ、カール・パケット)も完成度の高い仕事で、誰の目にも忘れがたい舞台を作り上げた。一幕目の登場シーン、馬車を降りたところで大きな拍手で迎えられたオレリーは、テクニック面でも演技面でも円熟そのもの。42歳定年制度さえなければ今後も観客を多いに楽しませ続けられただろうにと悔やまれる(注・2014〜2015年のシーズン最後まで在籍するので、シーズンの最終公演『感覚の解剖学』を踊る可能性もあり)。 

2 photo Julien Benhamou_ Opeフ〉a national de Paris_tw.jpg アデュー公演ではカーテンコール後、金の紙吹雪が舞台上から舞い落ちるのが常なのだが、この晩、感極まったオレリーは紙吹雪を待つことなく涙を見せた。『マノン』の出演ダンサーに遠巻きに囲まれ舞台中央に立ち、会場からの鳴り止まぬ拍手に涙と笑顔で答えるオレリー。エルヴェ・モロー、ピエール・ラコット、マニュエル・ルグリが順に舞台上手から現れ、またバンジャマン・ミルピエ芸術監督に導かれてブリジット・ルフェーブル前芸術監督も。下手で惜しまぬ拍手を送っていたアニエス・ルテスチュ、ローラ・エケ、ドロテ・ジルベール、アマンディーヌ・アルビッソン、レティシア・ピュジョルたちは、姿をみつけたオーリーが舞台中央へと招いた。会場が脇に沸いたのは、7才の長男と4才の次男の登場だろう。ママが観客に向かって挨拶する後ろで、床の星を拾い集めては散らし・・・。投げる勢いが余って長男がすてん !と転ぶ一幕もあり、微笑ましさをプラス。パパのジェレミー・ベランガールは下手で子供目線で座ったまま、拍手を続けていた。この晩、観客は偉大なエトワールに別れを告げつつ、一人の女性としてのオレリー・デュポンの姿を垣間見ることもできたといえよう。彼女は9月からはオペラ座のバレエ・マスターに就任することが発表されている。このアデュー公演は26年のダンサーとしてのキャリアを全うした後、新しい人生の章を開く42歳の女性の未来を祝福する機会でもあった。

 最後、会場全体に届けとばかりに大きな投げキスを送り、舞台後方に引っ込んだオレリー。手を振りつづける彼女の姿に幕が降りたが、日本のバレエファンには大きな楽しみが待っている。オレリーはこのアデュー公演の『マノン』のパートナーにエルヴェ・モローを指名していたのだが、あいにくと彼が怪我で降板。音楽性、感受性という点でエルヴェこそが最高のパートナー、とオレリーは公言してやまない。その彼と共に、今年8月に開催される第14回世界バレエフェスティバルに彼女は来日する。エルヴェと舞台を共にするというパリで果たせなかったダンサー人生最後の夢を、オレリーは夏に日本で叶えることになるのだ。

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取材・文:濱田琴子(在パリ・ジャーナリスト)


写真:Julien Benhamou(舞台)、Michel Lidvac(カーテンコール)