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2018/01/30 2018:01:30:19:20:24

ハンブルク・バレエ団 開幕記者会見レポート
 昨日(1月29日)、都内でハンブルク・バレエ団の開幕記者会見を行いました。会見の様子を町田麻子さんのレポートと難波雄史さんの写真でご紹介します。ぜひご一読ください。

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 バレエ界の"生ける伝説"、ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団の2年ぶり、通算8度目となる来日公演の開幕が4日後に迫った129日。ノイマイヤーとダンサーのアレクサンドル・リアブコ、アレクサンドル・トルーシュが会見に登壇し、今回上演する3演目への思いを語った。3人はこの日に来日したばかりだったが、長旅の疲れなど全く感じさせることなく熱弁を振るう姿が、バレエへの尽きない情熱を物語る。


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 幕開けを飾る『椿姫』40年前に初演された作品だが、「11回が唯一の公演だと、ダンサーには常に言っている」とノイマイヤー。「踊り手が替わる度に新たな発見があり、形も色も陰影も変わる」と、今回の公演が過去の焼き直しではないことを強調した。デ・グリュー役のリアブコは、「バレエ団に入って初めてのツアーが日本公演で、『椿姫』ではアンダースタディだった。それから様々な役を踊り、今回デ・グリューとして日本の皆さんの前に立てるのが楽しみ」と充実の表情。日本でアルマン役デビューを飾るトルーシュは、「振付と音楽と感情が一体となった、宝石のように美しい作品。123歳の時に初めて観て以来ずっと夢見ていた役を、素晴らしい仲間たちと踊れることに感謝しています」と喜びを語った。


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 続く<ジョン・ノイマイヤーの世界>は、ガラ公演と銘打たれてはいるが、ノイマイヤー曰く「ただ作品が次々と出てくるのではなく、全体をつなぐテーマのある演目」。そのテーマとはノイマイヤー自身であり、「バレエは私にとって"自分の大部分"といえるもの。バレエを創作することは、無意識のうちに私自身について語ることでもあるのです」と解説した。その上で、「といってもドキュメンタリーではないから、観たからって私の秘密の人生が分かるわけじゃないけどね」と付け足し、笑いを誘うお茶目な一面も。

 

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 掉尾を飾る大作『ニジンスキー』については、折に触れて見直しをしてきた中でも、今回上演されるのは初演時(2000年)の映像にまで立ち返って改訂したバージョンであることを明かしたノイマイヤー。タイトルロールに扮する二人は、「男性ダンサーにとって、テクニック面だけではなく感情面において最も難しい役。自分には無理だ、という思いや恐れは何度踊っても消えません。でも、それを克服できた瞬間には特別な達成感があるのです」(リアブコ)、「狂気に陥るに至るニジンスキーの様々な感情を追体験しなくてはならない上に、出ずっぱりなので体力的にも大変です。出ずっぱりで踊り続けることによって、自然と狂気に陥っていけるという一面もあるのですが()。疲れるけれど、とても不思議な経験ができる役ですね」(トルーシュ)と、それぞれの言葉で役の壮絶さを表現した。


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 「ぜひ何回でも通ってほしい」。まだまだ語り足りない様子そう締めくくったノイマイヤーの言葉通り、バレエファンにとってはどの演目も、そしてどのキャストも見逃したくない悩ましい来日公演となりそうだ。


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取材・文 町田麻子(ライター)
写真 Yuji Namba