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2013/10/03 2013:10:03:17:18:55

マッツ・エック振付「カルメン」 振付指導 ポンペア・サントロ、ラフィ・サディ インタビュー(1)

 9月中旬、東京バレエ団のメインスタジオで〈シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2013〉の演目、マッツ・エック版『カルメン』のリハーサルが佳境に突入していた。一心に乱舞するダンサー達を見つめているのは、ポンペア・サントロとラフィ・サディ。長年、エックが芸術監督を務めたクルベリ・バレエで主役から群舞まで種々の役を踊り、同作を知り尽くした振付指導者である。

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ポンペア・サントロとエスカミリオ役の柄本弾


サントロ「カルメンという女性は、マッツによって月並みなステレオタイプから解放されました。お姫様でも妖精でもなく、リアルな感情を持った人間として、彼女は人生を生き抜くのです。私も何度も舞台で踊りました。マッツと彼の振付に導かれ、自分のなかに眠っていた未知の感情が引き出されたような、素晴らしい経験でした」
サディ「振付の指導でもっとも重要なのは、マッツの振付に忠実であること。彼はよくこう言うんですよ。芝居を演じようとしてはいけない、振付が自ずと語り出すはずだ、と。マッツが求めるクォリティを体現するには、彼が精密に定めた振付を忠実に踊らなくてはなりません」

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ラフィ・サディと柄本


 スタジオのダンサー達は、寄せては引く波のように全身を振り動かしながら跳躍し、フロアを転げ回る。バレエとは異質の動きを随所に取り入れたエック作品を踊ることは、バレエダンサーにとって大いなる挑戦だ。
ポンペア「マッツの振付では、上半身をとても大きく動かします。古典バレエではあり得ないほどの激しさも不可欠。重力を使いこなし、フロアを踏みしめることも特徴です。フロアはパワーの源なのです。今回の出演者は、とても熱心で振付の覚えがはやく、音楽性も優秀。予想以上のスピードでリハーサルが進んでいます」

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M役の高木綾

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オフィサー役の木村和夫

 7月初旬にエック本人が東京のこのスタジオで短期集中リハーサルを行い、彼の意にかなった出演者を選考した。
サディ「ほんとうに良いキャストに恵まれました。ダン(柄本弾)はエスカミリオそのもの。エネルギッシュで、そこにいるだけで人の目を引きつける。存在感は教わって身につけるものではなく、生来の資質なのです」
ポンペア「M役のアヤ(高木綾)も適役ですね。優しさと強いハートを持っていて、なおかつ自分のボディをコントロールできる」
サディ「シルヴィ・ギエムとホセ役のマッシモ・ムッル、ダン、アヤ、カズオ(オフィサー役の木村和夫)達が一堂に会した時、いったいどのような"絵"がそこに描かれるのか。私自身、楽しみでなりません」

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取材・文:上野房子(ダンス評論家)