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2012/03/02 2012:03:02:12:39:25

モンテカルロ・バレエ団 小池ミモザ インタビュー


モンテカルロ・バレエ団で凛とした美しさと存在感を見せ、人気を集める日本人プリンシパル、小池ミモザ。来日公演では『シェエラザード』『シンデレラ』などの主役をこなし、公演最終日には、東日本大震災の特別セレモニーで自身の新作ソロを発表する。震災時、モナコは朝の 6時 46 分。ジャン=クリストフ・マイヨーとベルニス・コピエテルスから連絡を受けた彼女は、テレビをつけて震災の映像を目の当たりにし、大きな衝撃を受けたという。離れた地から故国を思い続けた彼女に、バレエ団の現在から踊りへの思いまでを語ってもらった。

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----先週まで、ミモザさんにとって初めて、バレエ団でも久しぶりのアメリカ公演だったんですよね。いかがでしたか?

『シンデレラ』を上演したカリフォルニアのコスタメサでは、継母が首を絞められる場面で歓声が上がり、びっくりしました(笑)。『アルトロ・カント1』『OPUS 40』を上演したNYでは、ジャン=クリストフの独特の世界がどう受け止められるだろうかと気になっていたのですが、非常に好感触でしたね。嬉しかったのは、『バレエ団内の仲の良さがわかる』という感想をもらったこと。うちは実際、踊りだけでなく人柄も見てダンサーを採用しているのかと思うくらい、雰囲気が良いんです。


----確かに客席から観ても、作品世界と相まって、暖かい気持ちになることが多いです。

ジャン=クリストフは観客に向けて踊るよりもまず、キャスト同士のコミュニケーションを重視します。それを、映画のように観客に観てほしいという考えなんです。昨年12月に行われた、ボリショイ・バレエとモンテカルロ・バレエ団の『白鳥の湖』合同公演では、ボリショイの人と舞台上で目線が合わず、不思議な感じでした。でも、私が気持ちを込めて見つめたら、相手もとてもドラマティックになったんですよ。みんな驚いていました。そうした踊り方や印象というのは、劇場の大きさによっても変わるのかもしれないですけれども。

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『アルトロ・カント1』

----一昨年、プリンシパルになられました。予期していましたか?

全く(笑)。ただ、私がプリンシパルになる前のことですが、ベルニスがこう言ったんです、『自分はクラスレッスンを最後までやらなくなっているけれど、ミモザはレッスンでもバレエ団を引っ張っていくようにならないといけない』と。それ以来、クラスでセンターに行った時も、本番のような気持ちで踊っていました。


----次の世代へ、たすきを渡すようなお気持ちだったのでしょうね。

かもしれないなと。そういう先輩がいて嬉しいし、まだまだ学ぶことは尽きないですね。


----今回はプリンシパルになってから初めての来日公演となります。出演演目について教えてください。まず『アルトロ・カント1』について、うかがいたいのですが......。

自分の理解では、一人の人間の中に誰もがもつ男性性/女性性を扱った作品です。私は女性の中の男性部分、もう一人の女性は女性の中の女性部分......と、役割が分かれていて、衣裳も、私は女性的なコルセットを着つつ下はパンツ、他のダンサーは男っぽいタンクトップだけどスカートといった具合に、その世界観を表しているんです。


----衣裳を手がけたのはファッションデザイナーのカール・ラガーフェルドですが、クリエイション時、印象に残ったことは?

こういうパンツがほしいとなったら、その場ですぐディオールに電話してオーダーし、はいOK、じゃあ次......と、ものすごいスピードで進めていくんです。ファッションの世界では、ああいう速さも重要なんだろうなあと感じましたね。

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『シェエラザード』

----『シェエラザード』ではタイトルロールを踊られます

ジャン=クリストフから、ゾベイダは男性を吸い寄せるように踊らなければいけないと言われました。彼はお父さんが絵描きだからか、動きの線がきっちりした作風だと思いますが、この作品では、柔らかな動きがベースになっているのも特徴的です。


----『シンデレラ』では主役の仙女役。実はシンデレラの亡き母であるという設定です。

シンデレラを舞踏会に連れて行く際のいたずらっ子みたいな雰囲気から、お父さんと踊る切ないデュエットまで、様々な表現ができて面白いです。本当に素敵で大好きな世界です。

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『シンデレラ』

----公演最終日の3月11日には東日本大震災の追悼セレモニーがあります。特別に、ミモザさんのソロが上演されるそうですね。

5月にはモンテカルロで、震災と日本をテーマにした作品を振りつけるんです。今回は『シンデレラ』の前ですから短いものになりますが、私の思いをかたちにできたらと。震災で改めて感じたのは、人間は一人ではなく、みんなで生きているのだということ。悲しい出来事だったけれども、何よりもそれを乗り越えて"生きる"との意味を込めて、『La Vie』というタイトルを考えました。プリンシパルのガエタン・モルロッティによる、チベットの楽器の生演奏に合わせて、春の芽吹きを思わせる、弱いようで強いものを表現し、皆さんに"希望"を感じていただけたらと思います。



取材・文=高橋彩子(舞踊・演劇ライター)

photos of Marie-Laure Briane.


モンテカルロ・バレエ団2012年日本公演公式サイト>>>