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2011/02/28 2011:02:28:18:14:34

[バーミンガム]ダンサーインタビュー(1) ツァオ・チー

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団2011年日本公演の開幕に向けて、本日より主演ダンサーインタビュー連載をスタートします。
第1回目は先日プロモーション来日が決定したことをお知らせしたツァオ・チーです。


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11-02.28CaoChi02.JPG 3年前の英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)日本公演では、『美女と野獣』(デヴィッド・ビントリー振付)で野獣役を踊り、その存在感と表現力で感動をもたらしたツァオ・チー。昨年公開された映画「小さな村の小さなダンサー」では、毛沢東の文化大革命下でバレエを学び、アメリカに亡命した実在のダンサー、リー・ツンシンを好演し、話題に。中国の北京舞踏学院出身、英国で活躍するツァオ・チーとは共通する部分が多い役柄だっただけに、バレエのために新天地を求めるその姿は、多くの人の心を揺さぶった。


──映画の主人公と同じように、ツァオ・チーさんも子どもの頃、バリシコフの映像に衝撃を受け、バレエ・ダンサーを目指す決意をされたそうですね。

 人間の身体でこんなことができるなんて、と驚きました! 彼みたいになるって(笑)、父に宣言したのを覚えています。どちらかというと私は、一か八か、これをやろうと決めたらとことんやり尽くすタイプなんです。


──映画の撮影のために半年間カンパニーを休まれたそうですが。

 皆、映画出演を応援してくれていたので不安はありませんでした。カンパニーはとても家庭的な雰囲気。誰かに何かがあれば必ずカヴァーするし、仲の良さは同僚だから、という以上のものがあるんです。


──2002年からプリンシパルとして活躍されていますね。

 実は、2008年の来日のとき、「あ、前と同じ劇場、同じホテルだ!」と気がついて(笑)、入団して1年目の、1995年の日本公演のことを思い出したんです。日本の劇場でプリンシパル・ダンサーがお客さんの歓声を受けているのを見て、自分もいつか、あんなふうになるんだ、と心に決めたこともね。当時は、心のどこかで名誉とかスターダムを求めていたのです。でも13年経って実際にそうなってみたら、名誉なんてどうでもよくなっていた。私は、いいパフォーマンスをお客さんにお見せできることに、ただそれだけに喜びを感じるようになっていたから。そう感じられるようになったのも、このカンパニーにいたからこそ、です。

11-02.28CaoChi.jpg
 日本公演では、まずピーター・ライト版『眠れる森の美女』に登場。古典ならではの魅力がたっぷりと詰まったこの舞台、佐久間奈緒とのパートナーシップにも期待が寄せられている。


──ライト版の『眠れる森の美女』の魅力を教えてください。

 ゴールド!ゴールド!ゴールド(笑)!! 本当にゴージャズな作品です。存在感のあるセットもとても素晴らしい。最近のプロダクションではモダンで簡潔なセットも多いけれど、これはまさに荘厳。古典ならでは、の豪華な『眠り』です。また、この版では眠りから目覚めたオーロラ姫と王子によって踊られるパ・ド・ドゥがあります。これは一時期省かれていたものですが、今度の公演では観ていただくことができるでしょう。とても素晴らしいパ・ド・ドゥなので、ぜひ楽しみにしていただきたいところです。『眠り』の王子は、何といってもテクニックがカギ。キャラクターとしてはごくシンプルだけれど、踊りは、これぞクラシック、という優雅なものです。それだけに、ごまかしがききません。ほんの少し跳んだだけですべてわかってしまう。流麗で精確な踊りが求められるので、難しいですね。


──日本公演では、もう一つ、フレデリック・アシュトン作品のプログラムが組まれています。BRBにとってアシュトン作品はどのような存在なのでしょうか?

 英国バレエの礎となった振付家です。ロイヤル・バレエ団と同様、BRBにとっても重要な振付家であり、上演頻度もとても高い。だから私たちは、アシュトン作品を上演するなら絶対に成功させなければならないんですね。


──『真夏の夜の夢』でツァオ・チーさんは踊られるのは、妖精の王、オベロンですね。

 以前はパックを踊っていたのですが、2、3年前からオベロンを踊るように。この役は(1964年の初演でオベロン役を踊った)アンソニー・ダウエルに習いました。最初に衣裳を見たとき、とても女性的な印象を受けたのですが、実際はとても男性的。森の妖精の王様ですから、それなりの威厳をまとっていなければなりません。また、英国のバレエの多くがそうであるように、動きがとても速い。上半身を正しくキープし、動きをよりクリーンに見せることで、皆さんには、よりエネルギッシュな踊りを見ていただくことができると思います。


──同時上演される『ダフニスとクロエ』は日本で初めての上演となります。

 ダフニスを踊ったとき、この役もやはりダウエルから教えてもらったのですが、"普通に。バレエ的なポーズは必要ない"と言われました。衣裳も現代的ですが、とても自由な作品ですね。全員が同じステップで揃って踊るフィナーレがあって、とてもエキサイティング! 作品によって盛り込まれる踊りの種類が様々なのも、アシュトン作品の魅力だと思います。


 次々と言葉が飛び出すなかで、ふと、「大丈夫? 今私が話したこと、つじつま合っていましたか?」と立ち止まるも、バレエの話はいつまでも尽きない。日本での舞台も、必ず、喜びに満ちた素晴らしいパフォーマンスになることだろう。

取材・文:加藤智子(フリーライター)
撮影:須藤夕子

-NBSニュースvol.289より転載-