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2011/04/08 2011:04:08:10:23:35

[バーミンガム]ダンサーインタビュー(2) 佐久間奈緒

中断しておりました英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団主演ダンサーインタビュー連載を再開いたします。
2回目は、「眠れる森の美女」のオーロラ姫、「真夏の夜の夢」のタイターニアで主演する佐久間奈緒。日本での公演を彼女自身もとても楽しみにしてくれています。

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11-04.08Sakuma01.jpg 「褒められても『もっとできると良かった』『次はこうしたい』と答えるので、いつも周囲から『ナオは満足しない』と言われます(笑)。昨日より今日、今日より明日と考えていて、終わりがない。そこが面白いんです」
 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)で02年にプリンシパルに昇進し、来年で10年。英国では観客のみならず専門家筋からも高い評価を受けている佐久間だが、その姿勢は意外なほど謙虚だった。
「まだまだ磨かなければならない部分がたくさんあります。その一方、以前は重点的に稽古して組み立てていた演技面ではここ3〜4年、自然に感情が湧いてくるようになって。最近は振り・動き・カウントをメインに稽古し、あとは本番で生まれる魔法のようなものを、思いきり楽しんでいます。日本と英国の滞在年数がほぼ同じになったのですが、英国では意思表示がはっきりしていてストレートですから、日常生活も舞台での表現に生きているのかもしれません(笑)」

 そんな彼女にとって、BRB来日公演で披露する2作品の一つ、フレデリック・アシュトン振付『真夏の夜の夢』は大いに演じ甲斐のある作品だという。
「コメディーありラブストーリーありで演劇的要素が強く、陽気な作品です。最初に踊ったのは2年ほど前。オリジナル・キャストのアントワネット・シブレーさんとアンソニー・ダウエルさんに直接、ご指導いただきました。アシュトンの動きはとても特徴的。私が踊るのは妖精の女王タイターニアなので、脚さばきは素早く、それでいて地に足がついていないかのような軽やかさを出さなければならない難しさがあります」
 今や世界中で上演されているアシュトン作品だが、英国のダンサーが踊るのを観て「さすがお家芸」と感心することはやはり多い。秘訣は何だろうか?
「普段のクラスでアシュトンそのものをやるわけではないんですが、速い動きのパなどが多く入っているので、間接的に練習になっているのかもしれません。彼の作品はBRBでもたくさんレパートリーに入っていますし、自分が踊る機会も他のダンサーが踊るのを観る機会も多いんです。英国が生んだアシュトン・スタイルを、この機にしっかりとお見せしたいですね!」

11-04.08Sakuma02.jpg 日本公演でのもう1つの演目は『眠れる森の美女』。BRBの前芸術監督ピーター・ライトによる改訂版だ。
「03年に初めて踊った時、ピーター・ライトさんから、テクニックは良いと言っていただいたのですが、同時にそこにこだわり過ぎないようにと注意を受けて。1幕ではオーロラの16歳の誕生日の高揚感や輝きを、2幕では幻想なので王子とも目を合わさず独特の雰囲気を、3幕では格式高いロイヤル・ウェディングで女性として成長した姿を......と、幕毎に異なるオーロラの色合いを出して踊るよう、心がけています」
 また、2幕の終わりには、通常のバージョンにはないパ・ド・ドゥがある点にも注目したい。
「王子がオーロラを起こしたあと、相手の目を見ながらお互いに寄り添うような感じで、7分間のパ・ド・ドゥを踊るんです。結婚式の前に二人が愛を育むさまが伝わる、とても素敵なパ・ド・ドゥなんですよ」

 さて、この日本公演の2作品両方で佐久間のパートナーを務めるのは、ツァオ・チー。長年コンビを組み、同時期に昇進を続けて今に至るプリンシパル同士だ。
「彼も私と同じく満足しないタイプ。だからこそずっと一緒に踊り、高め合うことができたんだと思います。『くるみ割り人形』の金平糖の精と王子で初めて主役をもらった時は、昼休みも惜しんで練習しましたね。13年間、ほぼすべての作品をパートナーとして踊ってきたので、息が合うといった次元を超えるほど、お互いを知り尽くしているんです。音楽的な感性も合いますし、難しい技も安心してできます。私たちが長い歳月をかけて築いたパートナーシップを、ぜひご覧いただきたいですね。バレエ団の日本公演で主役を務める重責を、きちんと果たしたいと考えています」

 今まさに充実期を迎えているといった印象の彼女。その舞台はきっと、止まることなく進み続ける者だけに許される、自信と輝きであふれるに違いない。

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取材・文:高橋彩子(舞踊・演劇ライター)
撮影:引地信彦、Bill Cooper (舞台写真)

-NBSニュースvol.290より転載-