What's NewNews List

2011/05/08 2011:05:08:11:46:33

[バーミンガム]ダンサーインタビュー(4) エリシャ・ウィリス

 身体能力の高い抜群のテクニシャンとして評価されて、地元オーストラリアでキャリアをスタートさせたエリシャ・ウィリス。英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)移籍後は、その技術力に演技力が乗るように。特に近年は、彼女の素朴な田園風景のような美しさに似合う『リーズの結婚』といったアシュトン作品や、ビントリー振付による『シラノ』や『シンデレラ』といった物語バレエで注目を集めている。キャリアの成熟期を迎えるエリシャに、現在のダンサーとしての心境を素直に語ってもらった。


---- エリシャさんは昨シーズン踊られたデヴィッド・ビントリー版『シンデレラ』でとても高い評価を得られました。ただの美しいお伽の国のお姫様ではない、地に足のついた人物造形が評判でした。

私はいつでも「自分だったら、その状況下でどうするか?」と自問自答して役柄を作っていくんです。たとえそれが誰もがイメージを持っているシンデレラであっても。いったん外部の情報は捨てて、デヴィッドの振付意図を聞いたうえで、自分だけのイメージを追っていく。その結果、ただのか弱いお姫様ではないシンデレラができあがったわけです。あと私自身の性格として、わりと地に足のついた庶民的な女の子に親近感をもつ傾向があるんです。ですからシンデレラでも「普通の女の子」としての側面が、おのずと強調されたのだと思います。
11-05.07_03.jpg

---- なるほど。普通の女の子としての役柄に親近感を持つからこそ『リーズの結婚』などの作品でのあなたの評価も高いわけですね。

『リーズ~』は大好きな作品のひとつです。あとは『コッペリア』や『ジゼル』など、古典バレエのお姫様の役柄よりも、私は農家の女の子を踊るほうがずっと好きです。それは私がメルボルンというとても素朴で庶民的な町で育った影響もあるかもしれないですけど (笑)。庶民の女の子のほうが、より楽しんで踊ることができるんです。


---- そうでした、あなたはオーストラリアご出身でしたね。オーストラリア・バレエ団でソリストとして活躍なさったあと、03年にBRBに移籍されました。

11-05.07_01.jpgそうです。02年にグレアム・マーフィー版『白鳥の湖』のオデット役をサードキャストで務めてから、BRBに移籍しました。移籍の理由は完全に個人的なこと。ただ外の世界を見てみたくなっただけです。オーストラリア・バレエ団にはまったく不満はありませんでした。むしろグレアムの『白鳥〜』で、私ははじめて「演技」のおもしろさを発見したぐらいなので、このうえなく感謝しています。でも、バーミンガムに来てみたら、あまりにもこのカンパニーの居心地が良くて、しかもデヴィッドとの共同作業もとても充実していたので、いまにいたるまで8年も居続けることになってしまいました。自分でもこんなに故郷を離れるなんて思いもしませんでした。


---- 移籍をされて、デヴィッド・ビントリーやフレデリック・アシュトンといったそれまでオーストラリアでは踊られていなかった振付家の作品を多くこなされるようになります。踊り方のスタイルに適応するのに戸惑われたことはありませんでしたか?

いえ、それはありませんでした。幸運なことにデヴィッドはダンサー個々にあわせて創作をしていく寛容さのある振付家ですし、アシュトンに関してはなぜか最初からとても自分の体にしっくりくる感覚があったんです。今度、日本でもアシュトンの『ダフニスとクロエ』を踊ることになったので、とても楽しみにしています。


---- 日本で踊られる『ダフニスとクロエ』の魅力について教えてください。

私にとってアシュトンは「ムーヴメント」を見せる振付家。つまり、ひとつずつのステップの連なりから生まれる流れを重視する振付です。 逆に日本で上演するもうひとつの演目である『眠れる森の美女』では、古典演目らしく美しい「ポーズ」が重視される。このスタイルの対比を日本のお客様に見てもらえるのは、とても良いことではないかと思っています。私自身は東京では『ダフニス~』だけの主演になりますが、クロエというドラマティックで愛らしくて繊細で、非常に演じがいのある役柄をまた踊れることを楽しみにしています。

取材・文/岩城京子(演劇・舞踊ライター)

写真:【上】「シンデレラ」(シンデレラ)、【下】「ダフニスとクロエ」(クロエ) (c)Bill Cooper