What's NewNews List

2010/07/01 2010:07:01:10:34:19

[ジゼル]アリーナ・コジョカル インタビュー

英国ロイヤル・バレエ団日本公演「ロミオとジュリエット」で、渾身の舞台を見せ、客席を感動の渦に巻き込んだアリーナ・コジョカル。
短い滞在中の忙しい時間の合間を縫って、9月に上演する「ジゼル」に向けてのプランを、演劇・舞踊ライターの岩城京子さんに聞いていただきました。


-----------------------------------------------------



アリーナ・コジョカル インタビュー

岩城京子(演劇・舞踊ライター)


この役を踊ることで彼女はロイヤルバレエ団のプリンシパルに任命され、この役を踊ることで昨年大怪我から復帰した。アリーナ・コジョカルがつねにキャリアの節目節目で見事に演じきってきたロマンティック・バレエ『ジゼル』。村娘の愛らしさ、恋人への一途さ、踊ることへの喜び、亡者ウィリの儚さ。ジゼルに求められる資性は彼女自身のなかに既にあり、だからこそ彼女はこの古典バレエに嘘のない新鮮な命を与える。「ジゼルを踊るときは、あえてプランを持たずに舞台に立ちます」と大胆な発言をする彼女に、9月の日本公演に向けて話しを訊いた。


----ジゼルの役づくりは「前もってプランしない」ということですが、それは具体的にどういうことでしょう? 基本プランは練習で作っておき、あとは自由に舞台上で演じるということでしょうか。

10-07.01Giselle_01.jpgいいえ、基本プランさえも持たずに舞台に立つのです。そして第一幕の冒頭でアルブレヒトをぱっと見たとき、その瞬間に、その日の物語のすべてが決まるのです。もしかするとそれはふたりの四度目の出逢いかもしれない。もしかするとそれはまだ二度目のデートかもしれない。あるいはそれはアルブレヒトの「結婚してくれないか」という申し出にすでにジゼルが「イエス」と応えたあとの再会かもしれない。つまり毎回毎回、その日のアルブレヒトと目があったとき、そこからストーリーが即興で決まっていくのです。


----あなたの造形するジゼルは、心が痛くなるほどアルブレヒトを信頼しきった目で見つめつづけますね。

私のジゼルはほとんどの場合、100%アルブレヒトを信頼していますからね。でもだからこそ、裏切られたときに正気を失うほど心が傷つけられる。少し込み入った話をしますと、実はおおもとの『ジゼル』のリブレットには、ジゼルの父親が登場するんです。そして一説では彼は貴族だったといわれている。つまりジゼルの母親は、娘が自分と同じ轍を踏むことを恐れていて、だからアルブレヒトに対して非常に懐疑的なんです。だけどジゼル自身は、まったく彼を疑わずに信じている。本当に心から愛している。だからこそ「狂気の場面」の最後、彼女は息を引きとる直前に、一瞬だけ正気を取り戻してアルブレヒトの腕に走りこむ。ジゼルはもうあの時点で、アルブレヒトを許しているんですよね。


----私生活でもパートナーであるヨハン・コボーとは、幾度となく『ジゼル』を踊られていますね。

ええ、でも踊るたびに新鮮な発見があります。たとえば私たちはこのあいだの五月にルーマニアで『ジゼル』を踊ったんですが、その公演前のリハーサルで、自分たちでも驚くような体験をしました。思わず二人でリハーサルを終えたあとに「今のはなんだったの、映像に残しておけばよかった、世界中の人に見せたかった!」って叫んでしまいました(笑)。なんて言いますか、本当にこの演目のなかで何をしてもいいような、完全なる自由、を感じることができたのです。このルーマニアでの発見をもとに、いままでにない『ジゼル』を、日本のお客様にお見せできれば嬉しいです。


photo:Kiyoonri Hasegawa



■アリーナ・コジョカル&ヨハン・コボー主演「ジゼル」7月3日(土)10時より前売開始!
 >>>公演詳細はこちら