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2010/04/19 2010:04:19:16:18:48

[オネーギン]主演ダンサーインタビューVol.1 /吉岡美佳(タチヤーナ)

「今までの集大成になるような演技をお見せしたい」


取材・文/高橋彩子(舞踊・演劇ライター)


10-04.19_483f.jpg これまでに『白鳥の湖』『ジゼル』『眠れる森の美女』『ドン・キホーテ』などさまざまな全幕ものを踊りましたけれども、いつか『オネーギン』のような、1人の女性の内面を演じきる演劇的なバレエに挑戦したいと願っていたんです。ですから、バレエ団での上演が決定し、トライアウトで配役が決まると聞いて、「ああ、踊りたい!」と感じました。
 ところがトライアウトの2週間前、膝を怪我してしまったんです。人間の膝がここまで腫れるのかというくらい腫れ、お医者さまからも最初は「もう踊れないかもしれない」と診断されて。実際、3日間はまったく歩くこともできませんでした。その時期の『ホワイトシャドウ』の稽古は、私以外のパートを優先していただいてしのいだものの、トライアウトはとにかくその日、そこに行かなければ選ばれないわけですから、無理なのではないかと思ったけれども、どうにかこうにか参加して。リード・アンダーソンさんから「芝居としてとらえてほしい。演技が見たい」と言われ、自分なりのイメージで演じました。とはいえ、膝が完治しないまま踊ったため、トライアウト後にまた悪化してしまったんです。それだけに、今は無事に本稽古に臨んでいること自体への喜びを、かみしめているところですね。
 オネーギンへの激しい愛と夫への理性的で穏やかな愛情との間で葛藤し、最後は後者を選ぶ。切ないですよね。全てを捨てて愛に生きたい----そんな願望って、女性なら一度は抱くのではないでしょうか。とても共感できるドラマですし、振りと音楽が驚くほどマッチしているので、家でもビデオを観るたびに泣いてしまいます。
『ホワイトシャドウ』では、それまで当たり前だと思っていた目線の使い方や感情の表現方法とは違ったものを求められ、とても苦労しました。その経験がこの作品で生き、感情をより深くリアルに表すことができるのではないかという予感がするんです。今回の舞台で、今までの集大成のような表現ができたらと考えています。

(NBSニュース Vol.278より転載)

photo:Shinji Hosono、make-up:Kan Satoh