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2010/04/22 2010:04:22:08:00:03

[オネーギン]主演ダンサーインタビューVol.2 /後藤晴雄(オネーギン)

「この作品に取り組める幸せを噛みしめながら」

取材・文/高橋彩子(舞踊・演劇ライター)


10-04.22048f.jpg この作品を初めて観たのは、シュツットガルト・バレエの05年の来日公演。オネーギンを演じるマニュエル・ルグリさんの立ち居振る舞いがあまりにもナチュラルだったので、一観客としてドラマ全体を観て「いいなあ」と、ただただうっとりしていました(笑)。そのオネーギン役に自分がキャスティングされた時には、心底びっくりして。まだまだ、この役を踊る前に勉強しなければならないことがあるはずなのに!というのが率直な気持ちでしたね。それくらい、ここには多くの要素が散りばめられている。踊ってみて改めて、まさに"奇跡のバレエ"だなあと実感しています。踊り手にとってはハードな作品だけれども、名だたるダンサーの方々が踊り継いで来た役柄に挑むことができ、幸せでなりません。稽古場では毎日があっという間に過ぎていくんです。
 自分はオネーギンのような都会的なタイプではないので、感情面で言えば1~2幕の役作りがとくに難しいです。指導者のボーンさんからの「自分の中でシナリオを作りなさい」というアドバイスに従って、たとえば物思いにふける場面などは、直前まで彼がいたサンクトペテルブルグでの仕事について「もっとできたのに」と悔やんだりイライラしたりと、僕なりの空想を施しながら演じて。そういうふうに心理を考えた上で技術面をクリアにして踊ると、振付に感情の流れがすべて入っていることがわかって、すごく合点がいくんですよ。
 パ・ド・ドゥの多い『オネーギン』に対し、1つ前の舞台『ザ・カブキ』の由良之助はほぼ1人での演技。ある意味、対照的ですが、きちんと演じ分けなければと思います。今回の稽古の最終日に初めて、キャスト全員と合わせることができ、全体の動きの中でオネーギンとタチヤーナがどう存在するのかがわかってきたところ。その感覚を忘れずに、パートナーの田中結子さんと力を合わせて、踊りに磨きをかけたいですね。マルシア・ハイデさん主演の映像を観ると、技術どうこうより、もはや感情のみという印象ですから、そのレベルに少しでも近づけるよう、ベストを尽くします!

photo:Shinji Hosono、make-up:Kan Satoh