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2010/04/25 2010:04:25:08:00:24

[オネーギン]主演ダンサーインタビューVol.3 /田中結子(タチヤーナ)

「未知の世界の中で、たくさんのことを吸収しています」


取材・文/高橋彩子(舞踊・演劇ライター)


10-04.25_134f.jpg ガラ公演などでパ・ド・ドゥを観たことはありましたが、この作品を、全幕を通してはじめて観たのは一昨年のシュツットガルト・バレエ団公演でした。第1幕と第3幕で時間が大きく経過しているので、1人の女性の成熟を表現するのは大変だろうなあという印象を受けましたね。もちろんその時は、自分がタチヤーナを踊るなんて予想もしていなかったです。トライアウトの時にも最終的なキャスティングとは考えておらず、リード・アンダーソンさんの「完璧に踊れなくてもいい」という言葉を励みに、勉強のつもりでひたすら楽しんで踊っていて。
 実際の稽古が始まった今は、完全に"未知の世界"のまっただ中。不可能に思えるハードなリフトがたくさんあるんです。自分が今どこにいるのか、重心がどこなのかわからない! クランコさんはよくこんな振付を考えついたなあと、信じられない気持ちで......。でも、映像を観ると難しそうに見えないんですよ。ということは私にもできるはず。と、必死で自分に言い聞かせる日々です。
『白鳥の湖』オディール、『ラ・バヤデール』ガムザッティなど、去年は大役続き。海外の先生の指導も受け、多くを学びました。たとえばナタリア・マカロワ先生には、演技面ももちろんですが、私の発想にはなかった筋肉の使い方・動き方を教えていただき、"目から鱗"でしたね。ただ、プレッシャーからか、去年は何のために踊っているのか見えなくなってしまった時期も。それが、今年に入って『シルヴィア』タイトルロールを踊った時には、稽古中も本番もとても幸福な気分でしたし、今の力を出し切り、自分のために踊ることができたように感じました。精神的に、ちょっとだけ前へ進めたということなのかな。
 私は取り立ててスタイルが良いわけでも美人なわけでもない。だから少なくとも、技術的な失敗はするまいと自分に誓っているんです。まずはきちんと踊ること。そして、最終的にお客さまが、テクニックのことも私個人のことも忘れ、舞台上にタチヤーナをみつけてくださることが理想です。正直、どこまでできるかまだわかりませんが、吸収することがたくさんあって、毎日が充実しています。

(NBSニュース Vol.278より転載)

photo:Shinji Hosono、make-up:Kan Satoh