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2009/12/28 2009:12:28:19:26:46

[ラ・シルフィード]開幕直前寄稿「サラファーノフ いま開花する個性」&特別動画!

今年もあと4日。皆さま、年越しの準備はお済みでしょうか。
2010年最初の公演となる、東京バレエ団「ラ・シルフィード」にジェイムズ役でゲスト出演する、マリインスキー・バレエ、プリンシパルのレオニード・サラファーノフ。今年は4月に東京バレエ団<創立45周年記念スペシャル・ガラ>の「エチュード」に客演したのを皮切りに、第12回世界バレエフェスティバルへの初出場、そしてマリインスキー・バレエ日本公演と、日本でめざましい活躍をみせてくれました。「ラ・シルフィード」の開幕を前に、そんなサラファーノフの魅力を、バレエ評論家の小町直美さんが寄稿してくださいました。
年末の皆さまへの贈り物として、第12回世界バレエフェスティバルのガラ公演で披露した「ラ・シルフィード」(オーギュスト・ブルノンヴィル振付)のハイライト映像もお届けします。東京バレエ団の「ラ・シルフィード」はピエール・ラコットの振付によるものですので、ロマンティックな香りにいっぱいの雰囲気は共通していますが、ブルノンヴィル版とは音楽も振付も違います。ブルノンヴィル版、ラコット版、二つの「ラ・シルフィード」を演じるサラファーノフを見比べていただくのも楽しみ方のひとつではないでしょうか。
新春1月17日(日)開幕の「ラ・シルフィード」にご期待ください!

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サラファーノフ いま開花する個性

小町直美(バレエ評論家)


 いま注目の若手、と思って見ているうちに、みるみるマリインスキー・バレエの中核をになうダンサーになっていた。レオニード・サラファーノフ。先日のマリインスキー・バレエ来日公演では、三演目の主役を踊る活躍ぶり。いままで知らなかった新しい魅力もたっぷり見せてくれた。
 まず「白鳥の湖」。オデットの登場ほどではないにせよ、第一幕の王子の登場に、やはり観客は胸をときめかせてしまう。貴族や農民の若者たちがなごやかに交流する舞台に、さわやかな風を吹きこむようにサラファーノフは現れた。輝くような若さを感じる。
 王子の役にはさまざまな個性のダンサーがありうるだろう。威風堂々とした人、甘くロマンティックな雰囲気の人、考え深く、憂いをたたえた人・・ サラファーノフはどのタイプともちがう。集まった友人たちに、さあ踊ろう、と語りかける身のこなしは、さすがに非のうちどころなく洗練され、気品に満ちている。だが短く刈った髪や、愛嬌のある童顔からは、現代的で身近な感じを受ける。何よりもまず、初々しく、活気にあふれるひとりの若者なのだ。
 第二幕ではロットバルトとオディールのはかりごとに振り回され、心乱れる様子をドラマティックに演じた。軽やかなトゥール・アン・レールを連続で披露する場面もあった。
 もうひとつの古典、「眠れる森の美女」では、幻影のオーロラ姫に心を奪われ、冒険に踏みこんでいくみずみずしい感性の若者になりきっていた。
 だが、サラファーノフの個性はもともと、古典作品だけにとどまっているものではない。彼の持ち味を見事に開花させたのが、シチェドリンの音楽、ラトマンスキー振付の「イワンと仔馬」だった。
冒頭で二人の兄の足元に、パンツ姿でうずくまっているイワン=サラファーノフは、まるであどけない少年のよう。実際お人よしのイワンは、家族から一人前に扱われていないのだ。みなが去って一人残されたイワンは、自分だってもう子どもじゃないんだぞ、とばかりに手足を伸ばし、ところ狭しと跳ねまわる。すっかり童心に返ったサラファーノフの茶目っ気、動きの敏捷さや軽やかさは、マイムを織りこんだ表情豊かな振付と見事に溶け合い、魅了した。
 もうひとつ、忘れがたいのは、オールスター・ガラで踊ったバランシン振付の『タランテラ』だ。たたみかけるように湧きあがるリズムと、熱いステップ。サラファーノフは磨き抜かれた技術を基礎に、陽気なイタリアの心意気を奔放に振りまく。最高のタランテラだった。

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第12回世界バレエフェスティバル「ラ・シルフィード」(photo:Kiyonori Hasegawa)


いま、サラファーノフはとにかく、おもしろい。新春、東京バレエ団を背景に上野水香と踊る『ラ・シルフィード』には、天に届くようなジャンプの見せ場がある。心揺れる青春期の若者役は彼にぴったりだろう。東京バレエ団とは今春、「エチュード」を共演したときのあざやかな演技が蘇る。再び彼らの熱い舞台が待ち遠しい。



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第12回世界バレエフェスティバル ガラ公演
「ラ・シルフィード」(振付:オーギュスト・ブルノンヴィル/音楽:H.S.レーヴェンスヨルド)