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2016/10/12 2016:10:12:15:47:46

【パリ・オペラ座バレエ団】 オレリー・デュポン(芸術監督)インタビュー[1]

来春3年ぶりの来日を果たすバレエの殿堂、パリ・オペラ座バレエ団。待望の日本公演までの間、パリ在住のジャーナリスト、濱田琴子さんによるインタビューをシリーズでお届けします。第1回はいま話題の中心、新芸術監督のオレリー・デュポンが語る、これからのパリ・オペラ座バレエ団について。

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若手たちの中に、未来のエトワールにふさわしい、多くの才能を見出しています。


 8月1日、芸術監督に就任したオレリー・デュポン。新シーズン開幕のガラ公演で美しいモノクロームのドレスを着てゲストを迎え入れる彼女の姿が、フランスのマスコミを賑わした。すっかり新しい肩書きが板についたようだ。

「パリ・オペラ座というのは、クラシック・バレエにおいて卓越したカンパニーであるべきなのです。私による2017/18年のプログラムにはクラシック作品を少し増やします。そしてコンテンポラリー作品にもオープンであり続けるので、これまでまだ踊られたことのない振付家の作品を加えます」。

 このように思い描くパリ・オペラ座バレエ団におけるエトワールは、クラシックもコンテンポラリーもどちらにも優れた完璧なアーティストでなければならない。両方を踊れるのは、知的な豊かさの証明だと語る彼女。あらゆるタイプのダンスを踊りたいと思う欲の持ち主を期待し、また振付家、観客、同僚などをリスペクトできる、人間的にも教育されていることをエトワールの資質としてあげる。

「私にとって大切なことは、エトワールは長いキャリアを通じて、優れたダンサーでなければなりません。今だけ、というのではなく。だから任命する私は、ビジョネアである必要がありますね。すでに若手の中に、素晴らしいダンサーを見出しています。これから遠くない時期に複数のエトワールが引退することは、まだ先のこととはいえ、これは若いダンサーたちにとって信じられないほどの好機であり、私にも良いタイミングといえます」

 引退後外からオペラ座を見ていたとき、ヒエラルキーが尊重されず、またオペラ座がカンパニーではなくグループになってしまったという印象を受けていたという。そして舞台に立つべきエトワールたちが配役されないことの心の痛みにも思いを馳せていた。公式発表された就任コメントの中で、思いやり、優しさのある芸術監督を目指すと語ったオレリー。それは具体的にはどんなことなのだろうか。

「例えば、自分の好みでないダンサーを配役しないというようなことはしません。人間をチェスの駒のように動かすようなことは、私には考えられません。今持っている権力を対人間に使うのではなく、ダンサーにとって良いと信じることをオペラ座にもたらすために発揮してゆきます。あらゆるダンサーがクオリティの持ち主なのだから、それを生かしてゆき、思ったことがあれば隠さず彼らに伝える...彼らにたいして正直でありたいと思っています」

 前芸術監督バンジャマン・ミルピエがリハーサル・スタジオの床を張り替えることを財政援助者もみつけて実現したことを彼女は評価している。彼が着手したメディカル・チームの結成については、ダンサーの怪我に即対応できる体制をより整えるべく、キネとMRI 検査の結果を読み取れる優秀な女性をプラスするそうだ。古典大作は体の痛みなしには踊れないことを体験してきたエトワール だからこその発想だろう。頼もしい芸術監督が率いるカンパニー。パリ・オペラ座バレエ団がますます輝きを増しそうで、楽しみである。


インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


photo:Sophie Delaporte


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