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2016/02/19 2016:02:19:23:03:05

ハンブルク・バレエ団特集⑧ 現地特別取材[6] レスリー・ヘイルマン インタビュー
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「真夏の夜の夢」のコミカルなヘレナで抜擢!

  親しみやすい雰囲気と屈託のない笑顔が印象的なブラジル出身のプリンシパル、レスリー・ヘイルマンは、19年前、17歳のときにコンクールで奨学金を得てドイツ・ドレスデンのバレエ学校にやって来た。その後ドレスデン国立歌劇場バレエ団に入団したが、そこで初めて大役に抜擢してくれたのが、ジョン・ノイマイヤーだった。「2002年、ドレスデンは大洪水に見舞われて劇場も一時閉鎖され、とても大変な時期だったのですが、ジョン(・ノイマイヤー)はそんな私たちに彼が振付けた『真夏の夜の夢』を踊るチャンスを与えてくれたんです。キャストが発表されたときは本当にびっくりしましたね。それまでコール・ド・バレエを踊っていた私が、いきなりヘレナ役に抜擢されたのですから!これがきっかけとなって、色々な役を躍らせてもらえるようになり、プリンシパルにも昇進できたんです」

 ドレスデンで10年間踊った後、ハンブルクに移籍を決意したのも、ノイマイヤーと仕事をしたこの経験が忘れられず、彼がいるバレエ団で新しいことに挑戦したいと思ったからだという。「ドレスデンでは色々な振付家と仕事をしましたが、ジョンは、何よりも"魂(ソウル)"を大切にしている点が違うと感じました。彼のもとで踊ることは、テクニックだけでなく、人として成長させてくれます」

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 初めての大役だったからこそ、格別の思い入れがある『真夏の夜の夢』のヘレナ役は、喜劇的な要素が強く、演技力が問われる難しい役柄。ハンブルク・バレエ団に移籍した後も、長年踊る中で徐々に発展させてきたという。「ヘレナは踊っていてとても楽しい役ですが、なかなか一筋縄ではいかない役でもあります。スラップスティック・コメディになってはいけませんからね。ヘレナは、はじめは誰にも愛してもらえない、いわば"醜いアヒルの子"で、とても純粋。そして、喜劇的な部分はあくまでも、恋の四角関係にある4人のやり取りのなかで生まれていくものであって、ただ面白おかしいことをして笑いをとるのとは違います。喜劇が間違った方向に行かないようにするのはとても難しいんです」 

「リリオム」には心を動かす何かがある。

 一方『リリオム』では、初演からずっと主人公ジュリーの親友マリー役を踊ってきた。「アリーナ・コジョカルと一緒にリハーサルをできたのは素晴らしい経験でした。アリーナはスターなのに謙虚でとても愛らしい人。初演の後で彼女に"ありがとう"と言われてびっくりしたことは一生忘れません。お礼を言うのはむしろ私のほうなのに!それに、ミシェル・ルグランの美しい音楽も、本当に素晴らしいですね。はじめは踊りにくいように思えても、ジョンがステップを作っていくと、ある時突然、すべてが音楽にぴったりフィットするんです。やはりジョンは天才だなと思います」。明るいマリーのキャラクターは素の自分に近いのでやりやすく、いくつもの層になった彼女の感情を少しずつ解き明かしていくのはとても興味深いという。「『リリオム』には観る者の心を動かす何かがあります。招待した人たちが皆"こんな作品観たことない!"と口をそろえて言うので、観て損はない、本当に特別な作品だと思います」


取材・文:實川絢子(ライター)


photos:Holger Badekow







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