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2016/10/14 2016:10:14:10:00:00

【パリ・オペラ座バレエ団】エトワール★インタビュー[1] エルヴェ・モロー

来春の来日が待ち遠しいパリ・オペラ座バレエ団。オレリー・デュポン監督につづいて、輝けるエトワールたちのインタビューをお届けします。第1弾はアーティスティックな魅力が人気のベテラン、エルヴェ・モロー。前回のパリ・オペラ座バレエ団公演、世界バレエフェスティバルで会場を感動に包んだオレリーとの名パートナーシップが、日本公演『ダフニスとクロエ』で蘇ります!

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気の合うオレリーと初演した「ダフニスとクロエ」を日本でふたたび


 夏前に足を怪我し、休んでいたエルヴェ。10月22日から始まるバランシンの「ブラームス/ショーンベルグ・カルテット」にてオペラ座で舞台復帰する。その後の具体的な作品は今のところは未定だが、もうじき年末公演のためのキリアンのオーディションがあるとか。そして年があけたら、来日ツアーのための稽古が始まる。

 自分に創作された『ダフニスとクロエ』を再び踊れる機会が日本で得られることを、彼はとても喜んでいる。学校時代にスキヴィンの振付でこの作品を踊っているのが、ミルピエとの創作時にとても役にたったそうだ。

「このラヴェルの曲は聞いてる分にはとてもきれいでいいのだけど、踊るとなるとカウントが難しくて大変なんですよ。バンジャマンとはこれが初めての仕事だったけれど、彼の動きは僕にとてもフィットするものなんです。アイディアに溢れている彼なので、創作はとてもスピーディに進みました。彼って、振付がより滑らかになるようにと、ダンサーにもけっこう自由をくれるんです。例えば、ポルテの時に最高のポジションのために手の位置を変えていいとか...。気の合うオレリーと一緒だったこともあり、この作品の創作にはとても良い思い出があります 」

 オレリーと初めて組んだのは、彼のコール・ド・バレエ時代に遡る。『シルヴィア』で主役の彼女と第二幕の舞踏会シーンで踊る予定のダンサーが怪我をしたので、エルヴェが代役で踊る事に。その次は『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』にて。これも代役だった彼が急遽3日で彼女と稽古をして、舞台を共にすることになったというから縁のある二人だったのかもしれない。今や彼女は彼にとってこれ以上ない最高のパートナー。動きの感覚、音楽性など共通する事が多く、二人で溶け合って踊れる関係だという。日本でも、その彼女と舞台を共にする。

「バレエ・リュスの『ダフニスとクロエ』は物語を追ったバレエだけど、バンジャマンのものは抽象的です。今の時代にこうしたコンテンポラリーなビジョンは悪くないですね 。もっとも物語の鍵は生かされていて、例えば二人の愛のパ・ド・ドゥや、邪悪な ドルコンの登場、リュセイオンの誘惑、海賊によるクロエの誘拐など物語を知っている人はちゃんと辿ってゆけますよ 」 

 42歳が定年のオペラ座で、彼は5か月前の2018年5月にアデュー公演を行うことを決めたという。彼とオレリーに創作されたサシャ・ヴァルツの『ロミオとジュリエット』を演目に選び、そのパートナーはもちろんオレリーだ。前回の来日ツアーでの『椿姫』では、特別な時間を彼女と過ごせたというエルヴェ。今回の『ダフニスとクロエ』も、彼のダンサーとしてのキャリアにおける素晴らしい思い出の1つとなるに違いない。バレエ・ファンなら、その瞬間に居合わせられる幸運は逃したくない。

インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


photo James Bort/OnP


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