What's NewNews List

2016/10/18 2016:10:18:21:53:52

【パリ・オペラ座バレエ団】オレリー・デュポン(芸術監督)インタビュー[2]
パリ在住のジャーナリスト、濱田琴子さんによる現地取材シリーズ。芸術監督オレリー・デュポンのインタビュー[2]は、来春上演される『ラ・シルフィード』と〈グラン・ガラ〉の作品についてです。

s_small_Aurテゥlie Dupont 2016(photo_Sophie Delaporte).jpg

「ラ・シルフィード」はフランス的で、とても音楽的な作品。

 『ラ・シルフィード』は言うまでもなく、ロマンティック・バレエの大傑作。この作品を復元した振付家ピエール・ラコットがこのようにフランス的な作品をオペラ座に与えてくれたことに、オレリー・デュポンはおおいに感謝をしている。これは彼女自身も何度も踊り、代表作の1つであるが、日本での公演を前にこんなエピソードを披露してくれた。
 
 「ジゼルなどと違って、ロマンティク・バレエだけど、これは珍しく悲しくない作品。快活で子どものようでいたずらっ子なラ・シルフィードを踊るのは、とても楽しかったわ。最初に踊ったのはエトワールに任命されたての若い時。DVDの撮影も予定されていた舞台を私が踊るようにとピエール(・ラコット)が希望し、たった3週間で振付を覚えました。

 
  ところが舞台で録画が行われている最中に、第2幕のソロのところで何も思い出せなくなってしまったのよ。胸の前で腕をクロスして、足踏みして、視線をあちこちに動かして...あるところで、音楽を聴けば思い出せるかも?! と耳を傾け、それで最後のところだけ踊れました。すごく怒られるだろうなって思っていたところ、ピエールはそれを録画車の中で見ながら涙を流すほどに大笑いしていたとか。3度の録画あったのが幸いでした。ヌレエフ作品は時にステップと音楽が合わないことがあるけれど、ピエールの振付はとても音楽的なんですよ。いつも音楽がステップを思い出させてくれるんです」。


small_SYLPHIDE_2012-13-SYLPH-069_(c)Ann Ray_OnP.jpg
 
 日本では3名のエトワールが踊る。お人形のようで、この役を踊るすべてのクオリティを備えているミリアム(ウルド=ブラーム)。優美で自然な美しさの持ち主のアマンディーヌ(・アルビッソン)。つま先と脚の仕事が素晴らしく、とてもフランス的な踊りを見せるリュドミラ(・パリエロ)。このように評価する3名を彼女はラ・シルフィードに配役した。前述した自身のエピソードは、彼女たちには内緒に違いない。

 なお、ミリアムはこの作品だけでなく、『テーマとヴァリエーション』もマチアス(・エイマン)と一緒に踊ることになっている。パートナーが頻繁に変わることが現役時代、とても嫌だったという彼女。リハーサル・プログラムの組みやすさといった現実的メリットも得られるが、何よりも彼女は組み合わせというものを信じているそうだ。


「ダフニスとクロエ」をエルヴェという最高のパートナーと踊ります。

 〈グラン・ガラ〉で踊られる『アザー・ダンス』。〈世界バレエフェスティバル〉で、彼女とジョジュア・オファルトが見せた素晴らしい舞台を覚えている人も多いだろう。この作品を踊るダンサーには何が必要なのだろう。
「まず音楽性です。それから舞台上で技術的な難しさを感じさせないこと。ユーモア、新鮮さが失われぬように、考えすぎたりリハーサルスタジオの稽古を観客が想像してしまうことのないように、まるで即興であるかのように踊られる必要がある振付なんです」。これが経験者であり、今回の配役を決めたオレリーの答えだった。

 さて、この〈グラン・ガラ〉での日本のバレエファンの特権は、何と言っても『ダフニスとクロエ』を初演ダンサーである彼女とエルヴェ・モローという黄金のカップルで見られることだろう。
「体に快適なミルピエ作品をラヴェルの美しい音楽に乗せて、エルヴェという最高のパートナーと踊る喜び。それに、創作の時のとても良い雰囲気も覚えているわ。この作品はダニエル・ビュランによる舞台装置が、とっても個性的。驚くべきものだけど、これは成功しています。彼のような芸術家がバレエ作品の創作に参加するのはとても好ましいことですね」

small_DAPHNIS ET CHLOE_066-0691-ツゥ _(c)Elena Bauer_OnP.jpg
 
 

インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)



photo:Ann Ray/OnP(La Sylphide), Elena Bauer/OnP(Daphnis et Chloe)



公演概要はこちら>>