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2016/10/24 2016:10:24:19:41:16

【パリ・オペラ座バレエ団】エトワール★インタビュー[2] マチアス・エイマン
第2弾は息をのむ卓越したテクニックの持ち主、マチアス・エイマン。ダンサー人生の節目にピエール・ラコット作品があったというマチアスの『ラ・シルフィード』や、伝説のスター、バリシニコフと結びついた『テーマとヴァリエーション』『アザー・ダンス』は見逃せません。


ジェイムズを踊るのは喜び。物語を語る面白さもある。

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 パリ・オペラ座内、マチアスとのインタビューの場にフランスの雑誌が置いてあった。その表紙には、「オレリー・デュポン 大胆と優雅」とうたってある。「これは、とても良い見出しです。彼女は進行中のディレクションを途中で引き継ぐような形で、芸術監督のポストにつきました。これって簡単な役ではないですよね。とりわけ経験のない彼女には。でも、今のところカンパニーを上手く導いているし、彼女の美しさは例外的なもの。とても的確な表現といっていいですね」
         
 その"大胆で優雅"なオレリーからは"世界のベストダンサーの1人""素晴らしいテクニックの持ち主"と評価されているマチアス。久々に『ラ・シルフィード』を踊れること、とりわけピエール・ラコットと仕事できることを喜んでいる。

「彼はぼくのことをいつも保護者的視線で見守ってくれています。僕がプルミエ・ダンスールに上がったのは、彼の『パキータ』のおかげ、そして長期間休んでいた後の復帰作品がこの『ラ・シルフィード』でした。ダンサーのキャリアにおいて、彼がつねに僕に寄り添っていてくれるという感じがありますね。この作品では現存の振付家と直接リハーサルできることも、うれしいこと。ピエールが彼の意図を語りながら、僕たちダンサーを導いてくれるんです。これは特権です!

 そして、今回こそミリアムと踊れることを心から望んでいます。彼女と僕が組むのは、まずプロポーション的に見た目が揃っていることが基本的な理由なのだけど、彼女の穏やかさが、僕が少々神経質になってしまうところを和らげるので、とても良いバランスが作られるということもあります。そして彼女に自信が必要なときには、僕がそれを彼女にもたらす・・・オレリーが僕たち二人は美しいカップルをなす、と言っているのはこういうことだと思います」
 
 『ラ・シルフィード』は登場シーンも多く、ヴァリアションも多く、彼にとっては簡単な作品ではない。ラコットの振付けたピュアなロマンティック・バレエゆえ、ソーやプティット・バッテリーが盛りだくさん。しかし技術的な面を一旦克服すると、踊るのが喜びとなり、物語を語る面白さがあるという。前回踊ったときより、人間的にも成長しているので主人公ジェイムズ役の解釈も少し違ったものになるだろうと、まだ少し先のことだがリハーサルが待ち遠しそうだ。

 
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 グラン・ガラでは『テーマとヴァリアション』でもミリアムがパートナーである。これは嬉しいことなのだが・・・「これを踊ったバリシニコフの幻惑的なイメージがあまりにも強すぎて、実は作品に入りにくいんです。聖域に踏み込むような気がするせいかもしれませんね。音楽は僕が一番好きな作曲家のチャイコフスキー。最後の部分で音楽を歌うような振付を踊るときに得られるセンセーション、これはめったに得られるものではないんですよ! 」と。バレエファンとしては、この瞬間を見逃すわけにはいかないだろう。

 彼が踊るもう1つの作品は、今年彼のレパートリーに加わった『アザー・ダンス』だ。仕事以外でも、人間的に快適な関係で結ばれているというリュドミラ・パリエロがパートナー。エネルギーのレヴェルも仕事への接し方もそっくりな彼女と組むと、自分自身と踊っているような感じがすると語るマチアス。「リュドミラだけでなく、ショパンを奏でるピアニストと、僕たち3名の密接な関係が大切な作品です。踊る回数が増すほど、相手のことをより知ることができて、喜びや心の高揚が得られるんですよ」
 
 
インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


Photo:James Bort/OnP(portrait), Anne Deniau/OnP(stage)


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