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2016/11/19 2016:11:19:14:00:00

【パリ・オペラ座バレエ団】エトワール★インタビュー[6] ミリアム・ウルド=ブラーム
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ロマンティシズムは私に語りかける

 『ラ・シルフィード』をマチアス(エイマン)と踊るミリアム。意外にも、まだこの作品を踊ったことがないという。芸術監督オレリー・デュポンは、「ミリアムはシルフィード役を踊るためのクオリティが全て備わっています。愛らしいお人形の ようなクラシック・ダンサーの彼女は、あの役柄にはぴったり」と太鼓判を押す。
 
 前回パリ・オペラ座での公演時は健康上の都合で踊れなかった『ラ・シルフィード』。日本で踊れることになり、彼女はとても喜んでいる。
「ロマンティシズムは私に語りかけることが多いだけに、この作品を踊れるのはすごく楽しみです。昔、学校公演の〈ガラ・デ・カデ〉で、ラコット版ではないけれど、その中で『ラ・シルフィード』の一部を踊りました。彼女って愛に満ちた理想の女性ね。魅惑的な女性だわ。精霊だから非現実の存在とはいえ、しっかりと実体があって ...言葉で表現するのは難しいけれど、第2幕めのジゼルのよう、といえばいいかしら。いずれにしても『ラ・バヤデール』のニキヤや『ドン・キホーテ』のキトリより、シルフィードは私にはずっと入り込みやすい役だといえます」

マチアス(エイマン)と舞台上で視線が合うと、いつも微笑みが浮かんでしまうの。

 パートナーはマチアス。彼とは10月22日から11月15日まで続いたオペラ・ガルニエでの〈ジョージ・バランシン〉でも、毎晩のように舞台をともにした。

 「彼と踊るのは、大好きよ。私たち、とても良い関係なんです。私が彼を必要とする時、彼はちゃんといてくれて、逆に彼が私を必要とするときも、というように。私が疲れているときは、気持ちをなだめてくれたり、あるいは今日は休んだら?って、気遣ってくれたり。彼って世界的なトップダンサーなのにとても謙虚で、自分らしさを失わずにいる人ね。繊細な感性の持ち主で、すごく人間的。初めて一緒に踊ったのは『リーズの結婚』だったから、もう10年くらい前かしら。舞台上で彼と視線が合うと、私、いつも微笑みが浮かんでしまうのよ」

〈グラン・ガラ〉では『テーマとヴァリエーション』もマチアスが相手だ。これも日本で踊るのが初めてという作品。すごく大変そう!と今から覚悟している彼女だが、バランシン作品はパーソナル・タッチをプラスできるので踊るのが快適らしい。

 久々の来日を喜ぶ彼女だが、その前にオペラ座でも大きな楽しみが待っている。それは、12月の公演『白鳥の湖』(これもマチアスと!)だ。
「あらゆるバレリーナが踊りたいと夢見る役でしょう。これまで機会に恵まれず、私はこの作品には不向きなのかしら、って思っていただけに、今回オレリーに配役されて、とにかく嬉しくって! 存分に舞台を享受するでしょうね。34歳になった今、こうした作品を踊るのに頭の中もしっかりしていて、良い時期だと思っています。黒鳥オディールは 視線と指の仕事を大切に、思いっきり誘惑的に踊るつもりよ」

 出産復帰後、ダンスの深みが増した、とバレエ・ファンの評価が高まっているミリアム。『白鳥の湖』によって、アーチストとしてさらに成長するに違いない。その後の来日。彼女の素晴らしい舞台を楽しみにしよう。

 
インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


Photo:James Bort/OnP


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