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2015/10/05 2015:10:05:18:26:36

シュツットガルト・バレエ団 フリーデマン・フォーゲル インタビュー
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 今日のシュツットガルト・バレエ団を代表するプリンシパル、フリーデマン・フォーゲル。数多のクランコ作品を踊って地歩を固めている彼が、今回、東京の舞台では初めて『オネーギン』全幕に主演する。シュツッガルト団員にとって"神聖な作品"を初披露する日本公演への抱負を訊いた。

インタビュー・文/上野房子(ダンス評論家)

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シュツットガルトのダンサーにとって「オネーギン」は神聖な作品です。

----シュツットガルト・バレエ団の"顔"として度々、来日しているフォーゲルさんですが、意外なことに、日本で『オネーギン』全幕の主演を務めるのは、今回が初めてです。

「 昨年11月のシンガポール公演で、念願だったオネーギン・デビューを果たしました。シュツットガルトのダンサーにとって、『オネーギン』は神聖な作品です。 すべての団員が『オネーギン』と共にキャリアを歩み、地元観客も歴代のキャストを見ているので、誰もが作品を熟知している。私の持ち役はずっとレンスキーで、オネーギンを踊る機会は巡ってこないかもしれないと悲観したこともありました。三年前にガラ公演で第一幕の"鏡のパ・ド・ドゥ"を踊ったのを境に、少しずつ、オネーギンに近付いていきました」

----初役の手応えは、いかがでしたか。

「子供の頃から眺めていた絵画の全貌を遂に目にしたようで、感慨もひとしおでした。今までレンスキーを通して見ていたオネーギンを再発見しました。確かに彼は尊大な性格です。タチヤーナに見向きもしません。でも、彼女を惹きつける魅力を持っている。人生に諦念を抱いているのは、彼が紆余曲折を経た結果でしょう。その時どきの彼の在り様には、過去のしがらみの蓄積がある。ロシア人の心の底に流れるメランコリーを象徴するのが、オネーギンなのだと思います」

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「オネーギン」より photo:oman Novitzky

----もう一つの主演作は、『ロミオとジュリエット』の標題役です。

「ロミオは無垢な少年です。やんちゃな一面もあるけれど、悪事とは無縁で、過去を悔やんだり、将来を思い悩んだりしない。脇目もふらずに今という時間を生き、情熱的にジュリエットを愛し抜く。ロミオを演じる時は、彼の生き方さながらに小細工などはせず、演出に身を任せ、心の赴くままに演じます」

---全幕を演じるにあたり、心がけていることはありますか。

「クランコ作品には、全編の核心をつく重要な場面があります。その際のキャラクターの心情を的確に醸し出すことですね。『オネーギン』なら、第二幕、決闘の場面。オネーギンは、親友であるレンスキーを殺してしまう。呆然と立ち尽くす彼とタチヤーナが、一瞬、見つめ合う。すると彼は、雷に打たれたような衝撃を受ける。自分の犯した過ちの大きさに愕然とするのです。そこから彼の人生は転落の一途をたどり、タチヤーナは新しい人生を歩み始める...... 踊る度につくづく感じます。ダンスという表現はなんて雄弁なのだろう、と」


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「ロミオとジュリエット」より photo:Stuttgart Ballet


シュツットガルトには、ダンサーも振付家も才能ある若手が目白押しです。

----ガラ公演で踊る『伝説』を含めて、相手役はアリシア・アマトリアンさんです。世界バレエ・フェスティバルでもコンビを組んだお二方が、いま一度、東京で共演されます。

「相手役とのパートナーシップは、 作品の成否を左右するほどに大切なものです。クランコのデュエットは技術的に難しいだけでなく、役柄に命を吹き込んで物語を語り、観客を魅了する大任を担っていますから。 私が初めてレンスキーを演じた時も、オネーギンを演じた時も、タチヤーナ役はアリシアでした。アリシアやアリーナ・コジョカル、ポリーナ・セミオノワのように踊りの波長がフィットするバレリーナと組むと、彼女が何を考えているのか、見ているだけで理解できます。彼女が私の手を必要とするまで脇に控え、今だ!と感じた瞬間に全力でサポートする。言葉ではなく、体を通して会話を交わすのです」

---今回の来日公演では若手団員が主要パートに登場、ガラ公演では常任振付家のマルコ・ゲッケやデミス・ヴォルピ等の現代作品がお目見えします。

「いま、才能豊かな若手が目白押しです。たとえばエリサ・バデネス、ダニエル・カマルゴ、パブロ・フォン・シュテルネンフェルス。彼らはただ年齢が若いだけでなく、それぞれ異なる個性を持っていて、バレエ団に新たな息吹をもたらしています。若手振付家も充実しています。マルコ・ゲッケとのクリエーションは、刺激的ですよ。彼のイマジネーションは無限だと言いたいくらいに、次々とアイディアが湧いてくる。日本の観客の方々は、馴染みのない現代作品でも熱心に受け止めてくれます。私達の今日の姿を紹介できるのが楽しみです」


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