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2015/10/07 2015:10:07:20:10:49

シュツットガルト・バレエ団 アリシア・アマトリアン インタビュー
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  今夏の第14回世界バレエフェスティバルに、12年ぶりに参加したアリシア・アマトリアン。フリーデマン・フォーゲルと組んでジョン・クランコ作品を踊った彼女は、痩身をしならせ、空を切るように宙を舞った。その雄弁な姿は、アマトリアンが今日のシュツットガルト・バレエ団の屋台骨を支えるバレリーナであることを物語っていた。
 フェスティバルの合間に、シュツットガルト・バレエ団の3年ぶりの来日公演への抱負やバレエ団の近況をざっくばらんに語ってもらった。

上野房子(ダンス評論家)

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---スペイン出身のアマトリアンさんが、ジョン・クランコ・バレエ学校に編入した経緯は?

「スペインで師事していた教師に勧められてオーディションを受け、バレエ学校に入学しました。当時のスペインにはプロフェッショナルなバレエ団がなく、プロとして踊るためには、遅かれ早かれ、 海外に出なくてはなりませんでした。家族と離れてホームシックになったけれど、すぐに友人ができ、今ではシュツットガルトは私の第二の故郷です」

---フォーゲルさんとは同学年でした。

「同じ年にバレエ学校を卒業したんですよ。彼は思いやりのある人で、ユーモアのセンスがあって、大らかなハートの持ち主。もちろん素晴らしいダンサーです。演じているのに、それが演技だと感じさせない。ごく自然に役に入り込めるのね」

---第14回世界バレエフェスティバルでは、フォーゲルさんと組んでクランコ作品である『オネーギン』の"鏡のパ・ド・ドゥ"と『伝説』を披露されました。

「クランコ作品のデュエットは振付がとても難しいので、パートナーとの相性は大切です。実はわたし、高い所が大の苦手。パートナーを信じて、勇気を振り絞ってデュエットを踊ります。リフトされた時にキャーって叫ばないように、目をつぶってしまうけれど(笑)」

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14回世界バレエフェスティバルより「オネーギン」のパ・ド・ドゥ photo:Kiyonori Hasegawa


----アマトリアンさんから見た『オネーギン』のヒロイン、タチヤーナ像は?

「若い頃のタチヤーナはオネーギンに夢中になりますが、けっして無分別な少女ではありません。だからグレーミン公爵と結婚し、魅惑的な貴婦人に成長できたのでしょう。オネーギンと再会した時には動揺します。かつて拒絶された男性から、情熱的に愛を告白されたのですから。でも、彼女は悟ります。自分はグレーミンへの穏やかな愛情を貫くべきだと。タチヤーナは聡明な女性なのです」

---昨年秋、フォーゲルさんが初めてオネーギンを演じた時のタチヤーナ役は、アマトリアンさんでした。

「彼のオネーギンは、心の中に燃えるような強さを秘めていました。レンスキーとの決闘の後、涙ぐんだ彼の瞳は澄み切った誠実さを湛えていて、彼に見つめられた瞬間、オネーギンを失うなら死んでも構わない!と感じてしまったほどです」

----クランコ作品には、ダンサーが自由に演じられる"余白"があるそうですね。

「私達ダンサーにとって、そこがクランコ作品の面白いところです。オネーギンに見つめられたタチヤーナの身じろぎ、ジュリエットがマントを持って舞台を駆け抜ける姿。何気ない動きに自分ならではの思いを込めるために、私達は試行錯誤を重ねます」

----初めてタチヤーナを演じた際には、どのような準備をしましたか。

「プーシキンの原作を読み、バレエ団の資料室であらゆる映像を見ました。オネーギンに手紙を書く時に使う羽ペンの練習もしました。でも、事前に演技を固定することはありません。振付を忠実に踊り、オネーギンを演じるダンサーと共にそこから涌き上る感情に身を任せます。舞台の上で誰かを演じるのではなく、役柄そのものになるために」

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「ロミオとジュリエット」より photo:Stuttgart Ballet


---クランコ版『ロミオとジュリエット』の標題役も、アマトリアンさんの当り役です。

「ジュリエットは、まっしぐらにロミオと恋におちます。初めての恋、初めてのキス、何もかもが初々しい。年齢は13、14歳、ちょうど私がクランコ・バレエ学校に入った年周りで、私のファースト・キスもその頃だったわ。東京公演ではフリーデマンと、思い切り情熱的に演じたいですね」

----前回の来日公演以降、主役級ダンサーの顔ぶれが随分と入れ替わり、2018年にはタマシュ・デートリッヒが芸術監督に就任することが発表されました。バレエ団の最近の様子を教えてください。

「一連の変化を、私はポジティブに受け止めています。私がバレエ団に入団した時も、変化の真っただ中でした。芸術監督がマリシア・ハイデからリード・アンダソンに交代し、ベテランダンサーの退団が相次いでいた。一緒に踊ってきた仲間と別れるのは寂しいけれど、若手が躍進する絶好のチャンスです。クランコの遺産を守るだけでなく、伝統を継承しつつ、前進していくこともまた、シュツットガルト・バレエ団のお家芸。日本公演で、私達の今と未来をぜひ見て頂きたいです」



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