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2016/12/15 2016:12:15:14:19:38

【パリ・オペラ座バレエ団】インタビュー ヴァランティーヌ・コラサント
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個性的なリュセイオンと控えめなエフィー、両極の女性役に挑戦

前回の来日公演では『ドン・キホーテ』のキトリ、『椿姫』のプリュダンス役を踊って大活躍をしたヴァランティーヌ。12月はオペラ・ガルニエではイリ・キリアンの『ベラ・フィギュラ』と『詩編交響曲』に、オペラ・バスチーユの『白鳥の湖』ではスペインの踊りに配役され、忙しい毎日を送っている。

「大変だけど、うれしいことです。キリアンは以前から仕事をしてみたいと夢見ていた振付家。化粧もなく、コスチュームも超シンプル、裏に隠れられる役柄もなく、ダンサーたちに自分自身であれ、と要求するのが彼の作品。だから私たちは気分や疲労の度合いで、毎晩異なることを観客にみせることになりますね。すごく面白い仕事です。『白鳥の湖』、これに参加できるのは、とても幸運です。毎回童心に返って舞台を眺めてしまいます! このようにオペラ座バレエ団では、さまざまなスタイルの作品を踊れる機会があるのがいいですね」

 種々の役を踊るが、表現しやすく、人物に入り込みやすいというのは、強く、個性のある女性だ。彼女がプルミエール・ダンスーズへの昇級を決めたコンクールでの自由曲は『カルメン』だったし、ガラ公演で演目が選べるときにはキトリを踊る、ということからもわかるだろう。

 3月の来日公演で彼女が配役されている『ダフニスとクロエ』のリセオン役も、こうした役の延長上といえるだろう。バンジャマン・ミルピエによるこの作品は抽象的ではあるが、古代ギリシャ時代に書かれた物語のようにリュセイオンはダフニスを誘惑する年上の女性というのが振付けにも生きている。

「ミルピエ作品を踊るのは、これが初めてとなります。でも彼のスタイルは知っているし、オペラ座でこの作品が踊られた時に目をつけていたパ・ド・ドゥがあって...それを日本で踊れることができるのが、とてもうれしいです」

 彼女は『ラ・シルフィード』でジェイムズの婚約者エフィー役にも配役されている。これは、リュセイオンとは180度異なる女性だ。プルミエール・ダンスーズに上がった直後に、オペラ座で踊っている。

「控えめで、恥ずかしがり屋、そして結婚を望んでいる若い女性というのがエフィーなので、ナイーヴや無垢といった面が要求されます...この女性に入り込むのは、私には簡単ではなかったですね。でも、それだけに、こうした役に取り込むことが仕事としてはとっても興味深い、といえます。まずは、私のあり余るエネルギーのはけ口をいかにみつけるか、から(笑)。テクニック的にはピュアなフレンチ・スタイルなので、下肢の仕事が大切。これはたっぷりと稽古しなくては!」 

 桜が咲く上野公園。これが彼女の前回の来日ツアーの最高の思い出だという。今回、きっと桜はまだだろうな、と少々残念そう。でも、日本のバレエファンの温かな歓迎、ポストイットやミニ手帳など細々とした品の買い物...ヴァランティーヌの来日への期待は尽きない様子だ。
 


インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


Photo:James Bort/OnP


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