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2017/06/06 2017:06:06:13:46:02

【ENB】高橋絵里奈インタビュー~仲間に信頼され、英国で愛されるバレリーナ


ロイヤルではなく、あえてENBのバレエ学校へ。

 バレエ団最高位のリード・プリンシパルとして長年ENBを牽引してきた高橋絵里奈は、精緻な技術と繊細な演技が魅力の、英国で大人気の日本人バレリーナだ。
 北海道釧路出身で、バレエはもともとやっていた新体操のために始めたという。 小学校高学年の時に、新体操に専念するためにバレエを辞めたところ、母親から「絵里奈の何かが変わってしまった」と言われバレエがかけがえのないものであることに気付き、それからプロを目指して真剣に取り組むようになった。踊りに専念できる環境を求めて、中学卒業とともにイングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールに留学。「オーディションはロイヤル・バレエ学校と両方に合格したのですが、 性格上規模の小さいENBの方が合うんじゃないかという話になって、最終的に決めました。 だからもしロイヤルに行っていたら違う人生になっていたかもしれません。日本に帰ることになっていたかもしれませんし(笑)」

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「コッペリア」より


「眠れる森の美女」で大抜擢、「くるみ割り人形」でプリンシパルに。

 学校を卒業後1996年にENBに入団し、以来人生の半分以上を英国で過ごしてきた高橋。中でも忘れがたい思い出は、 入団してまもなくのまだプリンシパルになっていない頃に、ベテランを差し置いてロイヤル・アルバート・ホールでの『眠れる森の美女』の初日の主役に大抜擢されたこと、そして2000年『くるみ割り人形』主演後にプリンシパルに任命されたことだ。「カーテンコール後、これから絵里奈をプリンシパルにすると監督に皆の前で言われて、それはもう、言葉にできないほどの感激と感動でした。中学を卒業してロンドンに来ることになり、長い間両親に遠くからサポートしてもらってきて、 こちらでプロとして成功したい、という思いでずっとやってきましたから」。 プリンシパルとなって17年、常に向上したいという思いは今も変わらない。その勉強熱心さとバレエに対する真摯な姿勢は、他の団員たちからも大きな尊敬を集めている。「ツアーが多いせいもあるかもしれませんが、ENBには大きな家族のような雰囲気があります。誰かが初めての役に取り組むときは皆でサポートしますし、他のバレエ団で客演しても、帰ってくるとなんとなく家に帰ってきたような気がするんです」

small600_Erina Takahashi in English National Ballet's Coppelia (C) Laurent Liotardo (3).jpg
「コッペリア」より

ストーリーのあるバレエで自分の思いを表現したい

 特にクラシック作品での評価が高く、ENBのほとんどの舞台で主演を努めてきた高橋。コミカルな演技もとても自然で、『コッペリア』のスワニルダ役はまさにはまり役だ。「人間と人形の違いを、お客様にすぐにわかってもらうにはどうしたらいいのか、初めて踊った時には悩みました。今でも、お客さんにもすぐ見てわかるように、一幕と二幕の違いをはっきりさせることを目指して踊っています。やはり私はストーリーのあるバレエで、自分の思いを踊りで表現するが好きなので、踊っていてもとても楽しい役です」
  今年2月に、夫であるソリストのジェームズ・ストリーターとの間に第一子が誕生したばかりで、今回の日本公演での『コッペリア』が産休後の本格的な舞台復帰となる予定。初めての日本となる息子を連れて、久しぶりに母国で踊れることを楽しみにしている。「小さい頃から踊りが好きでやってきたので、今でもその思いを忘れずに、心から踊りたいと思っています」

(取材・文/實川絢子 ライター)

photo: Laurent Liotardo