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2017/09/16 2017:09:16:14:51:27

【ハンブルク・バレエ団】ダンサー・ファイル① エレーヌ・ブシェ

魂をゆさぶる傑作を次々生み出す巨匠振付家、ジョン・ノイマイヤー。彼に選ばれ、来年の日本公演で活躍が期待されるソリストたちをご紹介していきます。



円熟期を迎えるノイマイヤーの美しきミューズ

 1998年に17歳でハンブルク・バレエに入団して以来、長年ノイマイヤー作品を踊ってきたエレーヌ・ブシェは、南仏カンヌ出身の大変美しいダンサーだ。2005年にプリンシパル昇進後は、最優秀女性ダンサーとしてブノワ賞を受賞した『オルフェウス』のエウリディーチェ役をはじめ、数多くの役が彼女のために振付けられ、文字通りノイマイヤーのミューズとして彼のビジョンを体現し続けてきた。

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「ニジンスキー」より、右端がブシェ。 photo:Kiran West


 その長い四肢が描く美しいラインからは常に気品とエレガンスが漂い、同時に母性や慈愛といった繊細かつ人間味あふれる感情表現で観客を舞台に引き込む。前回2015年の来日公演では、『夏の夜の夢』において、ヒッポリータとタイターニアという一人の女性の中の異なる二つの顔を巧みに演じわけ、鮮烈な印象を残したことも記憶に新しい。

 前回の来日公演の際のインタビューでは、ノイマイヤーの作品の醍醐味は、どんな役であってもダンサーが自分自身でいることができ、生身の人間の物語を語れることにあると語ってくれたブシェ。「我々はみんな違う人間です。『椿姫』にしても、舞台となった19世紀のマルグリット・ゴーティエ像をステレオタイプ的に演じるのではありません。私たちが生きる今の社会にもたくさんのマルグリットがいるように、一人一人のダンサーが舞台の上でそれぞれのマルグリットを生きるのです」----今回の日本公演で踊る予定の『椿姫』のタイトル・ロールと『ニジンスキー』のロモラ役は既に何度も踊っている役だが、様々な人生経験を経て円熟期を迎えた今のブシェだからこそ表現できる、深みのある踊りを期待できるはずだ。

實川絢子(ライター)



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