What's NewNews List

2017/10/06 2017:10:06:10:48:56

【ハンブルク・バレエ団】ダンサー・ファイル⑤ アレクサンドル・トルーシュ

二つの演目で主役を任された大注目の新鋭

 前回のハンブルク・バレエ日本公演で一躍注目を浴びたのが、アレクサンドル・トルーシュである。『真夏の夜の夢』三公演すべてで、いたずら好きの妖精パックを踊り、チャーミングな魅力を振りまいたかと思えば、「ノイマイヤーの世界」では、ノイマイヤーの想いがつまる『くるみ割り人形』を任され、さらにはアリーナ・コジョカルと『椿姫』のワンシーンまで踊ったのだから。テレビでも放映された2014年の新制作バレエ『タチヤーナ』では、重要な登場人物のひとり、情熱的な作曲家レンスキーを踊り、みずみずしくもナイーブな心理描写が印象に残る。

 だが、日本では踊る機会も少なく、その真価を私たちはまだ知らない。『椿姫』と『ニジンスキー』の両演目で主役を務める今回の来日公演こそが、面目躍如の場となるだろう。

600small_Die Kamiliendame 10 ツゥ Kiran West.jpg

「椿姫」より、アリーナ・コジョカルと photo:Kiran West


600small_Nijinsky ツゥ Kiran West 9.jpg
「ニジンスキー」より、カロリーナ・アグエロと photo:Kiran West


 とりわけ『椿姫』は公演の幕開けを飾る。パートナーは前回に引き続きコジョカルである。相手役や観客の反応でダイナミックに感情が変化するコジョカルを前に、彼のピュアな感性が刺激されないわけがない。素のままでも、充分に主人公アルマンを演じられそうなトルーシュだが、その演技が、そのダンスが、役柄にどんな深みを与えるのだろう。作品を彩る三つのパ・ド・ドゥはもちろん、物語全編を通して、トルーシュにしか描けないアルマンの生きざまを見せてくれることだろう。一方、バレエ史に燦然と輝く伝説のダンサー、ヴァツラフ・ニジンスキー。こちらもどう演じるのか、興味は尽きない。
 

(柴田明子 バレエ評論家



公演概要はこちら>>