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2012/01/27 2012:01:27:17:17:47

ウィーン国立バレエ団芸術監督 マニュエル・ルグリ インタビュー


  2010年にマニュエル・ルグリを芸術監督として迎えて以来、ウィーン国立バレエ団は彼の指導のもとで劇的な進化を遂げている。ファン待望の2012年日本公演に向けて、ルグリに、彼のウィーンでの活躍ぶりやカンパニーの様子について話を聞いた。


11-12.16_01.jpg---芸術監督に着任される以前から、ルグリさんにとってバレエ団は馴染みのあるカンパニーだったのではないでしょうか。

 ルドルフ・ヌレエフがパリ・オペラ座にいた頃、またその後も、ウィーンでは何度も踊りました。芸術監督に着任し、実際に現在のカンパニーを見て、ダンサーのレベルの高さには非常に驚きました。ウィーンはヌレエフにゆかりの深い場所です。それもあって僕はウィーンを選んだのです。

---ルグリさんが芸術監督に着任されてから、バレエ団が非常に良い方向へ向かっていると伺いました。どんな改革をされたのですか?

 一番大切なのはバレエ団のダンサーを積極的に登用したことです。以前カンパニーにはプリンシパルという階級がなく、ダンサーはいつも第3キャストや群舞のような役を踊るだけでした。それではやる気が出ません。着任してまず、プリンシパルという階級を設けました。また1年で2人の客演しか呼びませんでした。だから彼らは1シーズンを自分たちだけで踊り終え、自信を持つことができたのです。

---レパートリーに新しい作品も加えられました。

 新任の芸術監督として大切なのは、ダンサーをよく知り、彼らの近くにいることです。だから僕が彼らに教えられるような、僕自身が良く知っている作品を選びました。ジェローム・ロビンズの作品やヌレエフ版『ドン・キホーテ』のような演目です。特に斬新な内容ではありませんが、ウィーンでは新しい作品でした。問題はダンサーがそれをこなせるかでしたが、彼らは本当によくやりました。

---レパートリーには、クラシックとモダンバレエの作品両方を選択されました。

 僕の根底にはいつもクラシック・バレエがあります。だから僕はクラシック寄りの芸術監督だと言えるでしょう。しかし僕はいつも新しい振付家に心を開いて来ましたし、新しい経験をしたいと思っています。これがバレエを生かすのです。
 同時に、観客のことを気にかけなければいけない、という意識も選択に関係しているのかもしれません。ウィーンの観客はとても保守的です。だからモダン作品をあまり上演できないのです。僕の信念は観客に何かを押しつけないことです。しかし「これが好きなら、こんな作品もあるんですよ」と紹介することは出来ます。ある時点で、好みの変化は訪れるものです。

---ウィーンの観客に変化があったとお考えですか?

 そうだと思います。「変わった」と言うには尚早ですが。しかし希望はありますね。

---芸術監督として素晴らしいスタートを切られたわけですね。

 本当にたくさんのことを成し遂げました。ダンサーも幸せそうだし、お客様も劇場に来てくださいます。試練の時ではありましたが、成功に終わったと思います。

---もともとダンサーの水準は高かったということですが、ルグリさんはそれ以上の要素をバレエ団にもたらしているように見えます。

 このバレエ団には、僕より技術的に優れたダンサーがたくさんいます。彼らは僕に出来ないような技を次々と決めてみせます。しかし僕にはピルエットとステップの間にあるものを与える事が出来ます。それこそがバレエの魔法を作るのです。バレエの世界で、一体何が違いを生むのでしょう?それはいかに観客とコミュニケーションを取るか、どうやって物語を伝えるか、いかに舞台上で芸術家として存在するかなのです。僕にとって大切なのは「君の技術で色々なことが出来るのなら、どうやってそれを見せるかを考えなさい。何を観客に与えられるか考えなさい」と伝えることです。それがスター、更にはスーパースターを生むのです。

---日本公演に「こうもり」を選ばれました。

 まずヨハン・シュトラウス2世の作品で、ウィーン的な演目であること。そして振付家がローラン・プティで、フランス人である僕に関わりのある作品であることが理由です。カンパニーにとって得意な演目でもあります。また〈ウィンナ・ガラ〉では、バレエ団の主要なダンサーをお目にかけることが出来ると思います。


 バレエ団のメンバーと話すと、ダンサーに多くの機会を与え、芸術性に重きを置くルグリの方針が歓迎されていることが分かる。2011年7月の日本公演に参加した木本全優は、ルグリが着任して以来、カンパニーに「みんなで競い合って、やろう」という雰囲気が生まれたと話す。ルグリと共演したニーナ・ポラコワは「彼はスタイルを重視するし、それが好き」だと語った。またデニス・チェリェヴィチコは、ルグリは「歩き方、視線、雰囲気」まで彼に教えるのだという。持ち前の卓越した技術と、ルグリのもたらす優れた芸術性。ルグリを得たウィーン国立バレエ団は、無敵のカンパニーに生まれ変わろうとしているのではないか?

インタビュー・文/尾崎瑠衣

NBSニュースvol.299より転載



photo:Wiener Staatsballett-Michael Poehn




●ウィーン国立バレエ団 公式サイト>>>

☆ウィーン国立バレエ団2012年日本公演チケットは明日(1/28)10時より一斉前売開始!