2017/12/14 2017:12:14:08:00:50[NBS最新情報]
踊るたびに客席を熱狂させる『ニジンスキー』初演ダンサー
舞台のすべてが、たった今起こっていることだと感じて踊っている
2000年の「ニジンスキー」初演でセカンド・キャストとしてヴァツラフ・ニジンスキー役を踊って以来、そのニジンスキーが憑依したような踊りで世界中を熱狂させてきたアレクサンドル・リアブコ 。伝説的なダンサーであり、時代の先を行く振付家でもあった、人一倍繊細なニジンスキーという実在の人物を演じるにあたっては、もちろんプレッシャーもあった。事前にリサーチもたくさんした上で取り組んできたというリアブコだが、ひとたび舞台に立てば、それを全て忘れるようにしているという。
「舞台では、ニジンスキーにまつわる事実に関しては一切考えず、ただその瞬間の、特定の状況にいる人物になりきることに専念します。僕自身が、妻となるロモラと恋に落ち、 バレエの新作を作り、兄を失い、心身をコントロールすることができなくなる・・・というように。だから毎回踊るたびに全く違う経験になりますし、すべてが100年前に既に起こったことではなく、たった今起こっていることだと感じることができます。僕の踊るニジンスキーは、もしかしたら実際のニジンスキーとはかなり違うかもしれませんが、このバレエ作品はジョン・ノイマイヤーによる、"ニジンスキーとはどういう人物か、そして彼の人生はどんなものだったか"、というひとつの解釈なのです。このアプローチのおかげで、僕はあくまで今を生きる人間を描き出すのであって、単なる歴史上の人物を演じるのではない、と感じられるようになりました」
ノイマイヤーとの創作過程に立ち会えたことも、リアブコにとっての大きな財産だという。
「なかでも強く印象に残っているのは、ジョン(・ノイマイヤー)がつねに、ニジンスキーという多くを要求する役に対して、僕自身のビジョンを持っていてほしいと思っていたことです。もちろん、彼はファーストキャストのイリ・ブベニチェクによる世界初演を念頭に入れて創作したはずですが、僕にファーストキャストのコピーを演じて欲しいとは思っていませんでした。 僕自身のニジンスキー役をつくりあげる時間と空間を与えてくれたこと、それがジョンから受け取った最も大切な贈り物です」
初演から進化した新版『ニジンスキー』を日本で上演するのが楽しみ
「ニジンスキー」の魅力の一つは、全く異なる性質の踊りが交互に展開され、ハイライトの連続になっていることにあるというリアブコ。いわゆる物語バレエではないが、コントラスト豊かな一つ一つのシーンが作品にリズムを生み出し、ニジンスキーという人物を多角的に描き出していく。日本では、この作品の上演は2005年以来2回目となるが、内容は前回の上演から大きく進化しているという。「2016年9月のハンブルクでの『ニジンスキー』リバイバル公演の際、初演時の振付の意図 をジョンと一緒に改めてじっくり見直す機会がありました。オリジナルの振付の記録と、長年踊る中で発展してきた実際のバージョンを比較する作業はとても興味深く、その結果は驚くべきものとなりました。この新版『ニジンスキー』を日本の観客の皆さんの前で上演できるのをとても楽しみにしています!」