2017/12/20 2017:12:20:19:23:14[NBS最新情報]
ハンブルク・バレエ団ダンサーインタビュー vol.4 ~ アレクサンドル・トルーシュ
『椿姫』『ニジンスキー』両方に主演する要注目の若手プリンシパル
フレッシュでロマンティックで男性性を感じさせる、僕ならではのアルマンを踊りたい
来日公演の「椿姫」と「ニジンスキー」両演目で主演する若手プリンシパルのアレクサンドル・トルーシュ。特に「椿姫」に関しては、今回が満を持しての初の全幕主演となり、内外の期待が集まっている。
「子どもの頃から数え切れないくらい『椿姫』の舞台を観ていますが、ノイマイヤー作品の中でも特に好きなバレエです。多くの優れたダンサーが美しく個性的なアルマンを踊る姿を観て育ち、長い間をかけて、僕ならこの役をどう踊りたいかというイメージをふくらませてきました。日本での全幕公演では、振付家と作品に対する敬意を持って取り組み、フレッシュでロマンティックでありながら、男性性を感じさせる僕ならではのアルマン像を描けたら、と思っています。どのパ・ド・ドゥもそれぞれ情熱的で異なる味わいがあり、作品全体を通して人間の本質的な感情を描いているので、全幕を踊るのは素晴らしい体験になると思います」
前回ガラ公演の「椿姫」のパ・ド・ドゥで共演した、アリーナ・コジョカルと再び組んで踊るのも楽しみにしている。
「アリーナはクリエイティブで、舞台上で何も恐れずに自由になれる人。決して同じことを繰り返さず、いつも少しずつ違うので、毎回がとても興味深い経験になります」
『椿姫』より、アリーナ・コジョカルと
『ニジンスキー』を踊った後は抜け殻のようになる。楽に踊れることは決してないでしょうね。
一方「ニジンスキー」は、2016年にヴァスラフ役でロールデビューを果たしたばかり。この作品もまた、トルーシュが子どもの頃から何度と観て憧れてきたので、初めて踊った時は心震える体験となったという。
「踊りが紡ぎ出す物語、変わりゆく主人公のキャラクター、すべてが本当によく練られた作品だと思います。そんな素晴らしい作品を台無しにしてはいけないというプレッシャーもあり、僕にとっては非常に大きなチャレンジでしたが、プロとして作品への最大の敬意を持ってアプローチしました。ただ、身体的にも感情的に大変難しい作品なので、公演の後は毎回抜け殻のようになってしまい、たいてい朝の6時頃まで寝られません(笑)。特に2幕は出ずっぱりで途中で水を飲む間もなく、最後の場面まで一気に駆け抜けるのは大変です。でも、アーティストとしてこんなにやりがいのある作品はありません」
今秋の再演でも、再びこの難役に取り組んだ。
「初演時に比べ、ずいぶん役とニジンスキーの感情に慣れてきたとはいえ、毎回の公演のハードさは変わりません。この役が楽に踊れるようになることは決してないですね(笑)」
『ニジンスキー』より、カロリーナ・アグエロと
役作りに関しては、実在のニジンスキーに関する情報を知ることはもちろん役に立ったが、なにより大切なのは、振付に合わせて自分自身の物語を発展させることだという。
「バレエ全体を通して、自分自身のモノローグを語れるようにすることが大事です。そしてそれを僕自身が心から信じられなければ、観客を感動させることはできないのです」
また、この役を長年踊ってきたアレクサンドル・リアブコからも多くを学んできたというトルーシュだが、あくまでも独自のニジンスキーの物語を描き出したいと意気込む。
「バレエにおける僕の好みの大部分は、彼が形作ったと言ってもいいくらい、(リアブコは)僕にとってアイドルのような存在です。ただ、僕らは二人の異なる人間であって、僕には僕の物語が、彼には彼の物語があり、僕は僕自身の物語を信じて踊っていかなければならないのです。ジョン(・ノイマイヤー)がこうした違いを尊重してくれるのは幸せなことです」
實川絢子(ライター)
photos:Kiran West
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