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2013/11/22 2013:11:22:11:48:41

ウィーン室内合奏団 タマーシュ・ヴァルガ インタビュー

Aプロはメランコリー、Bプロは生きる歓び。

新たなメンバーも加えて、ウィーンの伝統をお聴かせします。


 ウィーンの音楽のルーツ、エッセンスとして世界的評価の高いウィーン室内合奏団(WKE)が2年半ぶりに来日する。代表を務めるタマーシュ・ヴァルガ氏に同グループの近況などを伺った。同氏はウィーン・フィルの首席チェロ奏者としてオペラやコンサートでの流麗な名演奏には定評があり、独奏、室内楽のほか、近年は夏のバイロイト音楽祭管弦楽団にも招かれて大活躍している。


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─ 今回、新たに参加することになった2人のヴァイオリン奏者を紹介してください。


ヴァルガ 第1ヴァイオリンのヴィリー・ビュッヒラーはウィーン・フィルと並ぶウィーンの代表的オーケストラ、ウィーン交響楽団のコンサートマスターであり、一方で日本でもよく知られている通り、シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラでヴァイオリンを弾きながら指揮をすることで高い人気を誇っています。WKEのメンバーでウィーン響の団員でもあるパッヒンガー(クラリネット)とガラー(ファゴット)の強い推薦があり、室内楽のキャリアも豊富なビュッヒラーこそWKEのトップに打ってつけの音楽家に違いありません。


 第2ヴァイオリンのギュンター・ザイフェルトは1972年以来ウィーン国立歌劇場、およびウィーン・フィルのメンバーとして、我々とは毎日のように演奏していますから、彼の卓越した音楽性、さらに人格者である面も周知の事実です。彼自身、弦楽四重奏団を結成するなどアンサンブルの達人としても著名ですよ。


 ウィーンの音楽家は同一の教育を受けていることもあって、所属団体の如何(いかん)にかかわらず音楽の方向性が共通しているため、技術面のみならず精神的にも息が合って、合奏する際の問題が非常に少ないことが指摘されます。まさに"伝統"であり"継承"と言うことが出来るでしょう。またグループとして演奏旅行に出る場合、一定期間に渡って行動を共にすることになるわけで、人間的な相性に留意すべきですが、今回の8名のメンバーでの相互間の"調和"を確信しています。


─ 東京で演奏されるプログラムの特徴を教えてください。


ヴァルガ Aプロ(4月4日)はシューベルトの「八重奏曲」を中心に組まれていて、そもそもWKEはこの作品を演奏するための編成であり、1970年のグループ結成以来、つねに演奏を続けています。名手パッヒンガーに実力を発揮してもらうのがブラームスの「クラリネット五重奏曲」で、この名作を堪能していただけたらと思います。最初のシューベルト「弦楽四重奏曲ハ短調」は後半の「八重奏曲」に対する対(つい)の曲として取り上げますので、一晩、ウィーンのメランコリーに浸ってください。


 Bプロ(4月5日)は対照的に溌剌とした生きる歓びを前面に出した選曲になっています。「セレナード」、「ディヴェルティメント」はモーツァルトの陽気な一面をよく表していて、演奏する側も楽しくなる作品ですよ。後半は言わずと知れたウィーンの名物で、ワルツの間にポルカを挟んでコントラストを付けたほか、「くるみ割り人形」でロシア色を加えました。「愛の使者」と「ジョッキー(騎士)ポルカ」は私の編曲なので、どうかよろしく(笑)。ウィーンの音楽家にとって名刺代わりのレパートリーをエキスパートのビュッヒラーのリードでお聞かせする最強プログラムですから、安心してお任せください。


─ もちろん、おおいに期待していますよ(笑)。



インタビュー・文 山崎睦[音楽ジャーナリスト、ウィーン在住]