What's NewNews List

2017/02/02 2017:02:02:19:35:05

タマラ・ロホ(ENB芸術監督)インタビュー
ENBには世界随一のバレエ団になりうる大きな可能性を感じていた

Tamara Rojo(photo_Jeff Gilbert)400-.jpg

英国ロンドン第二のバレエ団、イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)を、たった4年の間に個性的でエキサイティングな世界一流のバレエ団へと鮮やかに変身させてみせたタマラ・ロホ 。今回満を持しての来日公演にあたって、芸術監督としてのビジョン、そして公演への意気込みを語ってくれた。

- ENBの芸術監督に就任されるずっと以前から、芸術監督になるための勉強をされていたと伺っていますが、あなたにとっての理想のバレエ団とは、どのようなものだったのでしょうか。

「私の目標は、優れた芸術の創造、一流アーティストの育成、 独自のレパートリーの発展 、そして現代の観客の心に訴える 古典作品の上演を可能とするようなバレエ団をつくることでした。私は以前、ENBでダンサーとして踊っていたので彼らをよく知っていましたし、ツアー・カンパニーであるということもあって、ENBには世界随一のバレエ団になりうる大きな可能性を感じていました」

- ENB芸術監督に就任されて、まずどんなことに取り組まれましたか。

「 核となるアーティスティック・チームの再編です。経験あるバレエ・マスターたちを新たに迎え、バレエ団のレベルを技術的・芸術的に向上させることを目指しました」

- ロイヤル・バレエ団というエスタブリッシュメントが存在するロンドンで、具体的にどのようにしてENBというブランドを確立されたのでしょうか。

「バレエ団内部でのアーティストの育成を通してです。加瀬栞、金原里奈など、 若い才能を伸ばしていくことは、とても重要だと考えています。また、 他のバレエ団とは違う独自のレパートリーを発展させていくことも大切です。まずは英国で他のバレエ団が上演していない『海賊』 の新制作を行い、そして、ピナ・バウシュの『春の祭典』など、現代の振付家による重要作品をレパートリーに加えました。アクラム・カーンといった、バレエ団とコラボレーションすることの少ない振付家による新作も手がけています」

english_national_ballet_dancers_in_le_corsaire_c_laurent_liotardo600-.jpg
ヌレエフの遺志を継ぎたいと思って上演した『海賊』

- 今回の日本公演で上演される『海賊』についてお聞かせください。

「『海賊』は 、一晩で10人もの見ごたえのある ダンサーを観ることができる、ショーケース的な作品です。アン=マリー・ホームズ女史は、 私にも制作過程に関わらせてくれましたので、場面の順序を変えて物語にクリアな流れを作り、作品にリズムを生み出すこと、そしてキャラクター同士の関係性を明確にすることを目指しました」

- ボブ・リングウッドによる目を見張るばかりのセットと衣装も、作品に説得力を与えていたように思います。

「多文化都市ロンドンに拠点を置いている我々は、とても幸運です。ですから、インド、パキスタン、中東の伝統的な花嫁衣装を容易に入手することができました。それを裁断して作ったチュチュには、すべてが本物であるからこその美しさがあります」

- 『海賊』は、昨夏のパリ・オペラ座ガルニエ宮での公演も大成功を収めましたね。

「連日満員御礼となるほどの大盛況となり、 私自身にとってもたいへん誇りに思える公演となりました。というのも、『海賊』は、ルドルフ・ヌレエフがパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督時代に制作したいと願いながら、その早すぎる死によって実現することのなかった作品だったからです。私にとってヌレエフは、芸術監督としての指標でもあり、パリ・オペラ座バレエ団において彼がおこなった改革、そして彼が育成した次世代のダンサーたちに受け継がれた遺産、 その優れた作品の数々、すべてにインスパイアされてきました。そんなヌレエフがやり残した最後の仕事である『海賊』をパリ・オペラ座で上演することで、彼の成し遂げたかった夢を完成させることができたように思っています」

coppelia_5(photo_Laurent Liotardo)600-.jpg
愛らしい、きらめく宝石のような『コッペリア』

- 今回のもう一つの上演作品である『コッペリア』も たいへん人気があります。その魅力を教えてください。

「『コッペリア』は、たいへん愛らしい、きらめく宝石のような 作品です。ロナルド・ハインド版には、物語に明確な流れがありますし、 ドールハウスのように美しいセットも魅力です。『海賊』に比べるとより古典的な作品になりますが、コミカルで軽いタッチの作品は、お子様連れのご家族にもぴったりだと思いますし、バレエを観たことがない方にも、きっと楽しんでいただけるはずです」


- 最後に、芸術監督としては初めてとなる日本公演に向けての抱負をお聞かせください。

「世界中の優れたバレエを観て目の肥えた日本の観客の皆様に、私たちのカンパニーをお披露目し、公演を楽しんでいただき、願わくはENBと恋に落ちていただけたらと思っています。そしてこの公演を機に日本の皆様と長期的な関係を築き、 古典作品だけでなく、アクラム・カーンの『ジゼル』など、多様な作品を日本でもどんどん上演していけることを願っています」


取材・文/實川絢子

photo:Jeff Gilbert(Tamara Rojo)、photo:Laurent Liotardo(stages)

公演概要はこちら>>