2010年1月 一覧
ドロテ・ジルベール インタビュー
ドロテ・ジルベール(エトワール)
1995年 パリ・オペラ座バレエ学校入学。
2000年 パリ・オペラ座バレエ団入団。
2002年 コリフェに昇格。
2003年 スジェに昇格。
2005年 プルミエール・ダンスーズに昇格。
2007年 11月19日「くるみ割り人形」(ルドルフ・ヌレエフ振付)の終演後、エトワールに任命される。
7歳のときに故郷のトゥールーズでバレエを見て、「バレリーナって仕事なの?」とドロテは母親に尋ねた。こう思うほど、彼女に感銘を与えた作品、それが「ジゼル」だった。「私がみたときのダンサーはマニュエル・ルグリとノエラ・ポントワだったと、つい最近わかったのよ。信じられないでしょう!?」。大きな瞳をひときわ輝かせて彼女は語る。不思議な運命の巡りあわせだ。そのルグリが彼女のプチ・ペールとなり、そして彼女がエトワールに任命された「くるみ割り人形」のパートナーだったのだから。
「その時に見た「ジゼル」で、言葉を発することなく、踊りで物語を語ることができるということがすごく印象的だったの」
彼女をバレエの世界に導いた作品をエトワールとなって踊ることが決まったとき、どんな気持ちだったのだろう。
「願いに願った作品なのだから、とてもうれしかったわ。これはクラシック大作の1つ。エトワールの誰もが踊りたい役でしょう。私、いろいろなダンサーのDVDをみて、こうしたい、いや、私ならこうするわ・・・って思ってて。それをやっと実現に移せるときが来たんだわって、わくわくしたの」
ドロテの東京公演でのパートナーはマチアス・エイマン。2008年秋にモナコで初めて踊り、そして昨秋オペラ座で再び組んでいる。彼女がDVDなどで見たアルブレヒト役はローラン・イレールが多かったそうだ。「ローランのアルブレヒトはジゼルの気持をもてあそび、本当に彼女を愛してんだと気づくのは、彼女の死の直前。でも、マチアスのアルブレヒトは違うの。優しくて・・・情熱に押されて、彼女にすぐに恋をしてしまうのよ」
それでもアルブレヒトが嘘をつくことには変わりがない。狂乱のシーンを彼女はどう解釈してるのだろうか。「とても正直な娘で、周囲の村人も同じような人々ばかり。だから嘘をつくという行為が理解できない。自分の気持ちに誠ではないことをすることがわからない。素朴な自分はつけこまれたんだと感じ、知らなかった世の中の悪い面を知るの。たとえ心臓病があっても、ポジティブで陽気に生きてきた彼女は、その瞬間に、フリーズしてしまう感じね。わけがわからなくなって、何も受け入れられなくなってしまうんだわ」
第一幕より第二幕のほうが彼女自身は踊りやすいという。音楽、衣装、照明が織りなす非現実な雰囲気の中、まるで大きな泡の中にとじこめられたようで、自分が存在しないような特殊な感じがするそうだ。
東京では「シンデレラ」の義妹役も初めて踊る。まだ稽古前なので語ることがないの、と申し訳なさそうなドロテ。でも、この役は気に入ってる。これもDVDで何度もみているそうだ。「少しばかり、足がアン・ドゥダン(内向き)になってて・・この義姉妹役の難しさって、どこまでやるか、というバランスね。トゥーマッチになりすぎてもいけないけど、十分でないと滑稽にならないし。良い塩梅をみつけるのは簡単じゃないわ。でも、舞台でおバカを演じるのは、すごく楽しい。この作品はどの役も個性があるので、それで舞台が生き生きするのね。ヌレエフは舞台をハリウッドにおきかえたのは、すごく良いアイディアだと思う。ぜひ大勢の方に見に来てほしいわ」
◆ドロテ・ジルベール出演予定日
「シンデレラ」
2010年3月13日(土)1:30p.m. (義姉)
2010年3月14日(日)1:30p.m. (義姉)
「ジゼル」
2010年3月19日(金)7:00p.m. (ジゼル)
ステファン・ファヴォラン インタビュー
ステファン・ファヴォラン(プルミエ・ダンスール)
1983年 パリ・オペラ座バレエ学校に入学
1990年 19歳でパリ・オペラ座バレエ団に入団
1991年 コリフェに昇格
1994年 スジェに昇格
2005年 プルミエ・ダンスールに昇格
ステファン・ファヴォラン。「シンデレラ」の継母役を踊る彼を見たら、絶対に忘れられなくなるダンサーだ。彼本人も、「公演後、ファンが僕の服が破けるくらい僕を引っ張って、熱狂的にサインを求めてくるはずですよ」と冗談を言って笑う。もし「白鳥の湖」のロットバルト役や「パキータ」のイ二ゴ役で彼を知った人は、その女装での弾けぶりに「これがあのステファン?」と驚くに違いない。
30年代のハリウッドに舞台を置き換えたヌレエフ版「シンデレラ」は、主役の銀幕のスターとシンデレラの2人を囲む脇の人々のパーソナリティが、ひどく誇張されて描かれている。夢もあるが、笑いもたっぷり、というバレエ作品なのだ。意地悪な継母は男性ダンサーが踊るように創作されていて、3月のツアーではジョゼ・マルティネスとステファン・ファヴォランが配されている。
「シンデレラのアル中のパパの再婚相手。おかね、贈り物、贅沢、そして何よりも権力が大好きという女性で、女優になるという自分の叶わぬ夢を娘2人に託しているんです」とステファン。継母役が男性ダンサーによって踊られることで、シンデレラとのコントラストができ、彼女と連れ子2人によるシンデレラ苛めが陰惨に見えず、滑稽に転じるのだ。顔の表情もアクションも、優雅さを失うことなくオーバーにステファンは演じる。「この役、僕は大いに楽しんでますよ。これは舞台なんですから、観客に憂さを忘れて良い時間を過ごして欲しいんです」。オペラ座バレエ学校に通学しながら、15歳になるまでピアノのレッスンをつづけていた彼。優れた音楽性は当然ダンスにも大いに役だっていて、「シンデレラ」はプロコフィエフの音楽をヌレエフが上手く使った振付だと感心する。音楽に合わせ、自然とぎょっとした顔をみせたり、体の動きを誇張するようになっているので踊りやすいそうだ。
「役作りあたっては、街中でお金持ちの年寄り女性たちの振る舞いを観察しました。イタリア映画「老女の金(日本未公開)」も参考になりましたね。いかさまポーカーで調子よく勝っていたのに、ある時点から負け始めて・・・という映画で、メークをしっかりした老女の表情がすごく興味深い作品でしたね 」。また彼は以前に踊った他のダンサーたちの継母ぶりも、すべてチェックをしたそうだ。良い部分はいただき、ここはちょっと?と思う部分は、そうしないように・・・という具合に。「もちろんジョゼのも見ましたよ。彼って日頃は慎み深い人だけど、この役では思い切り感情を表してるのが面白いですね。役作りに熱心な彼から、あの部分、どうやったの?と聞かれ、教えてあげた部分もあるんですよ」。
30年代調のヘアスタイル、毛皮の襟巻を首に、トゥシューズ・・・意地悪な目つきで、舞台をかけまわるマダム。見事な化けっぷりだ。「僕は服もおしゃれも大好き。だから女装も楽しいんです。衣裳は役に入り込むのに、本当に役立ちますね」。オペラ座で観客を沸かせる、もう1つの彼の当たり役は「リーズの結婚」のコミカルなママ役。こちらも女装だが、毛皮の代わりに格子のワンピースにエプロン、トウシューズではなくサボ、と田舎の寡婦らしく素朴な装いである。次回のオペラ座ツアーに「リーズの結婚」を期待しつつ、まずはポワントで6~7回転も軽いという彼の「シンデレラ」の継母ぶりを堪能しよう。
◆ステファン・ファヴォラン出演予定日
「シンデレラ」
2010年3月12日(金)6:30p.m. (継母)
2010年3月13日(土)6:30p.m. (継母)
2010年3月15日(月)6:30p.m. (継母)
カール・パケット エトワール任命!
新年あけましておめでとうございます! みなさま、どのようなお正月を過ごされたでしょうか? 2010年も皆さまに喜んでいただける舞台をお届けできるよう、スタッフ一同取り組んでまいりますので、本年もよろしくお願いいたします!
さて、新年早々、嬉しいニュースが届きました!
3月の日本公演で、「シンデレラ」に主演するカール・パケットが、2009年12月31日(大晦日)の「くるみ割り人形」で王子/ドロッセルマイヤーを演じ、終演後エトワールに任命されました!
カール・パケットは、1976年生まれの33歳。パリ・オペラ座バレエ学校を卒業後、1994年にパリ・オペラ座バレエ団に入団し、2001年にプルミエ・ダンスールに昇格して以来、「白鳥の湖」のジークフリートとロットバルト、「ジゼル」のアルブレヒトとヒラリオン、「パキータ」のリュシアンとイニゴ・・・などなど主役から脇役まで多くの役を演じ、エトワールへの任命が待たれていました。実力、実績ともに申し分ないエトワールの誕生といえます。
新エトワール、カール・パケットの日本での舞台にご期待ください!