2016/08/12 2016:08:12:10:00:00[NBS最新情報]
【ミラノ・スカラ座バレエ団】クラウディオ・コヴィエッロ インタビュー

前回2013年の来日公演では『ロミオとジュリエット』に主演した、イタリア人プリンシパルのクラウディオ・コヴィエッロ。その若くエレガントなロミオを、覚えている方も多いだろう。本拠地でのシーズンを終えた直後の彼に、お話を伺った。
「ヌレエフ版「ドン・キホーテ」ならではの魅力を伝えたい」(コヴィエッロ)
─ バレエを始めたきっかけを教えてください。
5歳のとき、夏休みのアクティビティとして始めました。バレエといっても音楽に合わせて身体を動かすようなものでしたが、活発な子供だった僕には向いていたんですね。夏休みが終わると、両親がバレエ学校を探してくれました。初めは古典バレエの何たるかも良く分かっていなくて、唯一知っていたのが、当時すでに大スターだったロベルト・ボッレ。その完璧な身体美を見ては、いつかは自分もこんなダンサーになりたいと感じていました。

─ 今回踊られる、ヌレエフ版『ドン・キホーテ』の魅力は?
まずは、バジル役のキャラクターです。他の劇的なバレエの主役とも、素のままの自分とも違うので、なりきるのはチャレンジでもあり、楽しみでもあります。もちろん、ヌレエフの振付は男性の踊りの数が多いし、普通は右回りだけのところに左右両方の回転があったりと、技術的にも難しい。でも作品の本当の見どころは、この振付だからこそ醸し出せる独特のチャーミングさと、場面ごとのムードの変化だと思います。特に最後のグラン・パ・ド・ドゥでは、結婚する二人の心の高まりを伝えたいですね。
─ パートナーは、同じくイタリア人プリンシパルのニコレッタ・マンニです。
彼女と踊るのは、とても気持ちがいいですよ。僕たちは同い年だし、同僚というだけでなく友人としても気持ちの通じる相手。特に今回のキトリは、パワフルで技術も強い彼女に似合いの役で、踊る喜びが僕にも伝わってきます。
─ 前回公演の際の日本の印象は?
憧れだったロミオ役でデビューした特別なツアーでしたが、そのこと以外に、ひとつ忘れがたい思い出があります。僕はいつもお守りにブレスレットをしているのですが、開演直前にそれを外し、袖にいたスタッフの方に預けてそのままに...なくしたものと諦めていましたが、ある日スカラ座宛に東京から一通の封筒が届き、中からそのブレスレットが出てきたんです。これには本当に感動しました。その日本で再びみなさんのために踊れる日を、心待ちにしています。
スカラ座にいると全てが美に包まれており、特にリハーサルの舞台から誰もいない客席を見渡すたびに歴史の重みを実感するというコヴィエッロ。イタリア的な陽気さの横溢する『ドン・キホーテ』の中心に立つ彼の姿が、今から楽しみだ。
インタビュー・文/長野由紀(舞踊評論家)
photos:Marco Brescia e Rudy Amisano/Teatro alla Scala