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2017/01/13 2017:01:13:11:30:00

【パリ・オペラ座バレエ団】エトワール★インタビュー[8] ドロテ・ジルベール
ロビンズを踊るのはとても快適なの!
 
 12月のオペラ・ガルニエの公演〈イリ・キリアン〉中、『ベラ・フィギュラ』と『Tar and Feathers』でドロテは大活躍をみせた。キリアン作品を踊りたい! と前々から願っていただけに、途中風邪で5日間も寝込んでしまったものの、喜びでいっぱいだ。

「イリ・キリアンと仕事をするって、これは素晴らしいこと。リハーサルで動きを説明するのに、彼は信じられないようなフレーズを発するのよ。例えばだけど、(体の前に横向きに平行においた両腕の間隔を徐々に縮めて行きながら)、ほら、世界が終わりだ、すべてが消滅する...というように。こうした強烈なイメージを与えられると精神的に語りかけてくることが大きくて、想像力が満たされます。精神面での手がかりを思いながら私たちは踊ることになります。クラシック作品のような物語なしに、彼は観客に精神的な旅をさせようと努めているのだと思います。彼の作品を見るたびに教会にいたり、ミサに立ち会っているような気がしたのがなぜなのか...今こうしたことが理解できるようになりました」

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 クリスマスも大晦日も劇場で過ごしたドロテ。来日公演のリハーサル開始前の冬休みは、昨年同様ドバイで開催されるガラに大勢の若いダンサーたちと共に参加する。ユーゴ・マルシャンとヌレエフ作品のパ・ド・ドゥを2つ踊るそうだ。これは来日ツアーで踊る『テーマとヴァリエーション』に備え、クラシックのテクニックの準備も兼ねてのセレクションとか。バランシンのこの作品を踊るのは、ドロテには東京のグラン・ガラが始めてとなる。彼女を配役した芸術監督オレリー・デュポンは、「ドロテは素晴らしいテクニックの持ち主です。これを踊る彼女のエネルギーにはパートナーも乗せられるはずよ」と。その期待に応えるのは、間違いないだろう。

 グラン・ガラではジョジュア・オファルトと共に『アザー・ダンス』も踊る。オペラ座ですでに『イン・ザ・ナイト』『コンサート』などに配役され、ロビンズ作品の常連のようなドロテだが、こちらも来日ツアーが初舞台となる。
「これが踊れることになって、すごく嬉しいわ。踊る二人の間でちょっとした遊びがあるので、パートナーとの間に通うあうものが必要ね。その点パートナーのジョジュアとは、過去にガラを含めて舞台を何度も共にしているので...。ロビンズの作品は音楽がいいし、どことなくジャズっぽい感じも好き。踊るのがとっても快適です。私、コンクールで自由曲にロビンスを踊るごとに昇級できたのよ。ロビンズの作品って、踊り手のパーソナリティーが現れる...裸にされる感じがあって...。シンプルなだけに難しいんですよ、ロビンズを踊るというのは」

 来日ツアーから戻るや、彼女に『真夏の夜の夢』の公演がオペラ・ガルニエで待っている。そしてオペラ座外の活動としては、短編映画フェスティバルに出品される作品の撮影が春にスタート。彼女はオペラ座のダンサー役で、それに向けて演劇の指導も受けているそうで、いよいよ女優デビューである。フォロアーが40Kを超えたインスタグラムには、愛らしい長女リリーの姿も時々登場するようになり、私生活の充実ぶりもうかがわせる彼女。日本ではすでにおなじみのドロテではあるが、活動の場を広げ、内面的にも成熟を続けているエトワールダンサーとして、新たなる輝きで観客に喜びと驚きを与えてくれるだろう。


インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


Photo:James Bort/OnP(ポートレート)