10月の最新情報一覧お待たせしました! 以前よりお知らせいたしました岩城京子さんのシュツットガルト取材第2弾のダンサー・インタビューをお届けします。 マリイン・ラドメイカー Marijn Rademaker オランダのナイメーヘン出身。2000/2001シーズンにシュツットガルト・バレエ団に入団。2004/2005シーズンにデミ・ソリストに昇格。2006年6月『椿姫』のアルマンを初めて踊った直後、芸術監督のリード・アンダーソンにより飛び級でプリンシパルに任命される。レパートリーは『眠れる森の美女』の王子、『オネーギン』のレンスキーのほか、『ロミオとジュリエット』のロミオ、『白鳥の湖』のジークフリート、『カルメン』(クランコ振付)のドン・ホセ、『ラ・シルフィード』のジェイムズなど。 マリイン・ラドメイカー(プリンシパル) インタビュー木刀稽古ではからっきしなのに、真剣を使って勝負をしはじめたとたん、うってかわって目の輝きが変わるという、いわゆる本番に強い人種がいる。オランダ出身の美しき青年マリイン・ラドメイカーは間違いなくそんな人間のひとり。2年前に『椿姫』のアルマン役に初挑戦。全身全霊すべてを賭け命を燃やすような熱情的な舞に多くの客は心を打たれ、その本番直後に、芸術監督リード・アンダーソンは彼を飛び級でプリンシパルに任命。以後、マリインは世界中からオファーの絶えないカンパニーきっての成長株として人気を集めている。 ―――2年前にプリンシパルに任命されて、環境はどのように変わりましたか。 プリンシパルになってから予想以上に様々な国のカンパニーに呼ばれたり、期待以上の大きな役を与えてもらえるようになりました。本当に喜ばしいことです。けれど実際のところ僕自身のやるべきことは、コール・ドのときともソリストのときともさほど変わっていません。ダンサーとしてどの階級に属していようと、作品への、振付家への、そして何より自分への責任があるわけですから。いつでも自分は自分のベストを尽くすだけ。僕はそのような気持ちで、今でもひとつひとつの舞台に臨んでいます。 「眠れる森の美女」デジレ王子:マリイン・ラドメイカー
―――ひとつひとつの舞台にベストを尽くす。そのような覚悟でステージに臨むからこそ、あなたは人一倍本番で力を発揮するのでしょうか。 自分ではよくわかりません。けど確かに僕は本番で花開くタイプだと思います。ステージという特別な場に立つと、自分でも予想だにしなかったようなことをやりはじめるんです(笑)。たとえば『椿姫』のパ・ド・ドゥでアルマンがマルグリッドにキスをするシーン。あのキスの仕方ひとつとっても、本番ではより衝動的にしたくなることがあるんです。だから僕にとって本番は、リハーサルとはまったく別もの。何か異なる磁場がある。でも別にリハーサルも嫌いじゃないですよ。僕はまだまだ技術的におぼつかない面がたくさんあるので、なるべく真面目に稽古に励んで技術に磨きをかける必要がある。 ―――日本で演じられるレンスキーとデジレ王子について教えてください。 レンスキーは、とてもロマンティックで美しい詩人。特に1幕の彼はただただ甘く楽しく恋に酔いしれていて、さほど複雑な演技をする必要がない。けれど2幕になると少し入り組んだオネーギンとのいざこざが起こりはじめ、彼は自分のプライドの高さゆえに死という取り返しのつかない事態を招いてしまう。オネーギンが決闘前に「こんなことやめないか」という提案を持ちかけてくるにも関わらず、レンスキーは決闘という紳士的約束事にプライドを持ちすぎているために、あとにひけなくなり殺されてしまうんです。悲劇ですよね。 「オネーギン」レンスキー:マリイン・ラドメイカー
◇マリイン・ラドメイカーの出演予定日
ダンスマガジン12月号(新書館/10月27日発売号) フィガロ・ジャポン11/5号(阪急コミュニケーションズ/10月20日発売号)
シュツットガルト・バレエ団2008年日本公演初日まで、あと1ヶ月となりました。 さて、新着写真館3枚目はそのイリ・イェリネクの「オネーギン」です。
新着写真2枚目はこちら! フィリップ・バランキエヴィッチの「眠れる森の美女」"カラボス"です。 「眠れる森の美女」に続き、2006年に収録された「オネーギン」のハイライト映像をお届けします。 先日公開した「眠れる森の美女」の新着映像に続き、このたび新たに「眠れる森の美女」舞台写真が届きました。これから5週にわたって、新着写真をアップしていきますので、お楽しみに!
アンナ・オサチェンコ(オーロラ姫)とマリイン・ラドメイカー(王子)のグラン・パ・ド・ドゥです。 photo:Ulrich Beuttenmueller
シュツットガルト・バレエ団より、「眠れる森の美女」の新着映像が届きました! この映像は、今年7月にシュツットガルトで行われた公演を収録したもの。オーロラ姫をアリシア・アマトリアン、王子をフリーデマン・フォーゲル、カラボスをジェイソン・レイリーが演じています。 フリーデマン・フォーゲル(プリンシパル) インタビュー初来日時は弱冠17歳。それから10年の月日が経ち、シュツットガルト・バレエ団のフリーデマン・フォーゲルは、堂々、世界指折りのダンスール・ノーブルとして名を成す身となった。その少女漫画の世界からそのまま抜け出てきたような線の細い美貌から、イノセントで純粋な王子役を振られることが多い彼だが。取材場所に現れた実際のフリーデマン青年は、意外なほど芯が強く魂がタフな成熟したアーティストであった。 ―――今あなたはバレエ団で唯一のシュツットガルト生まれのダンサーだそうですね。 シュツットガルト生まれどころか、唯一のドイツ人ダンサーなんですよ。ドイツのカンパニーなのに面白いですよね。でもそれがこのカンパニーのいいところ。いろんな国籍の人間が集まっているから、いろんな視野が生まれる。そしてお互いに意見を交換して高めあうことができる。それにまた芸術監督のリード(アンダーソン)が、ダンサー個々に「自由」を与えてくれるのも、このカンパニーの素晴らしさのひとつ。彼は決してダンサーを束縛せず、外部のバレエ団に客演することを、むしろ推奨する。だから僕らはいつでも広い視野を持って、アーティストとして人間として、成長していくことができるんです。ここ10年で僕自身、本当に人間としてよりいっそう強くなることができたと実感しています。
―――あなたはロミオやレンスキーなど、脆く繊細な役を踊ることが多い。けれどプライベートでのあなた自身はどちらかというと「強い」人間なんですね。 そうですね、僕はまったく脆くない。だからどうしてそういう役を振られることが多いのか不思議。まあ外見的なことなんでしょうけど。実際の僕はどちらかというと、とても芯の強い......、図太いと言ってもいいような人間なんです(笑)。たとえば僕は他人が自分のことをどう思うか、どう評価するか、なんてまったく気にしない。だからこのあいだ中国国立バレエ団に客演したときに、ドイツのメルケル首相が、わざわざ僕の踊りを観に来てくれたんですけど。それで余計に緊張するなんてことはなかった。まあ、首相が僕の踊りを観てくれるなんて事件としては面白いですけど(笑)。僕はたとえ5人の一般客の前で踊ろうと、5000人のセレブな客の前で踊ろうと、自分自身で満足のいく踊りをするためにベストを尽くすだけ。 ―――日本で踊られる役柄についても教えてください。まずは『オネーギン』のレンスキー。 冒頭でのレンスキーはとてもイノセントでピュアで、人生のすべてを愛している。だけどあるとき、大人になるには皆通らねばならない人生の辛さにぶつかる。「人に騙される」という人生の汚さに心を踏みにじられるんです。で、普通の人間ならそれに対処して、成熟した大人になっていくわけですけど。彼はあまりにもピュアだから、その汚さに絶えきれない......。だから僕の解釈では、レンスキーは決闘に赴くときには既に死を覚悟している。彼はもう完全に人生の汚さに絶望しているから。せめて自分だけはピュアなまま死のうと、あえて決闘などという無茶なことに臨むんです。 ―――『眠れる森の美女』の王子役に関しては。 たいがいの『眠り』では王子役にはさほどドラマティックな見せ場がありません。2幕に出てきて、ちょろっと踊って、それでお姫様にキスして、結婚式(笑)。だけどこのバージョンでは、僕は姫を得るために、必死に、戦わなくちゃならない! むちゃくちゃ汗をかいて彼女のために頑張る。だから、僕はこの王子役を踊るのが大好き。とても人間的で、演じがいがある役柄だと思います。 オーロラ姫:マリア・アイシュバルト、王子:フリーデマン・フォーゲル
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