ナタリア・マカロワ インタビュー

ナタリア・マカロワ インタビュー

2009年9月22日 20:10 インタビュー | 新着情報

「ラ・バヤデール」開幕まで、あと3日。初日を前に振付家のナタリア・マカロワさんに、マカロワ版「ラ・バヤデール」はどのように創られたのか、そして東京バレエ団の印象についておうかがいしました。


■マカロワ版「ラ・バヤデール」の制作について

アメリカのダンサーたちに、ロシアで学んだ自分のクラシック舞踊の知識、アカデミックなスタイルを教えるのに最適だと考え、1974年に「幻影の場(影の王国)」のみ、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)で上演したのが、「ラ・バヤデール」の全幕を振付するきっかけとなりました。このときはひとつひとつのステップ、指一本一本の動きまで、すべて自分が動いて教えました。苦労の甲斐あって、批評家に「マカロワの奇跡」と賞賛される仕上がりとなり、1980年「ラ・バヤデール」の全幕を新演出へとつながりました。

私はワガノワ・バレエ学校時代から、この作品の持つエキゾティックでドラマティックなところが大好きでしたが、一方で古めかしさも感じていたのです。そこで、自分が演出するにあたっては、プティパの原振付の優れた箇所は残し、物語にあまり関係していない箇所を削除し、4幕から3幕へとまとめました。また、長い間上演されていなかった(第4幕の)ソロルとガムザッティの結婚式の場面、寺院の崩壊を、新たな振付でよみがえらせました。これが私の演出の大きな特徴といえます。

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復活させた場面の音楽は、新たにジョン・ランチベリーに依頼しました。当時、ソ連から全幕の楽譜を入手することは、困難を極めましたし、プティパがミンクスと共同作業を行ったように、私もパートナーが必要だと考えたのです。演出、振付、音楽、そして美術にまで自分で関わったため、実に2年にもわたる大掛かりなプロジェクトとなりました。自分の記憶とプティパ時代の作品が描写された批評などを参考に全幕を再構築したのですから、これは本当に大変な取り組みでした。

初演の時には、私もニキヤを踊る予定だったのですが、ゲネプロの際、振付家・演出家としてニキヤの衣裳を着たまま、客席で指示を出し、自分の出番になると慌てて舞台に上がって踊るということを繰り返していたので、膝を痛めてしまい、途中で降板せざるを得なかったのが残念で仕方ありません。
このように2年にわたって心血を注いだこのプロダクションが世界各地のバレエ団で上演され、多くの方に愛されているのを本当に幸せに思っています。


■東京バレエ団の印象

リハーサルが始まって2週間が過ぎましたが、団員の皆さんが私の指導から、すべてを学びたいという姿勢でいてくれるのでリハーサルの様子にも満足しています。私も自分の持っているものをひとつでも多く伝えようと思っています。
リハーサルでは役柄の解釈だけではなく、細かいことまでダンサーと話し合ったりしていますが、とてもレベルの高いダンサーたちですね。皆さん、このクリエイティブな時間を楽しんでいるようで、私もワクワクしています。

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今は身体をもっと表現力豊かにいかに動かすかということ、心の中で強く感じている感情をいかに豊かに表現し、奏でるかということを指導しています。
ぜひ、一人でも多くの方に私と東京バレエ団の皆さんが創り上げた舞台をご覧いただきたいですね。

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