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リード・アンダーソン インタビュー

芸術監督 リード・アンダーソン インタビュー



シュツットガルト・バレエ団という名前にあまりなじみがない人はまず、このサイトに載っている彼らの舞台写真を眺めてみて欲しい。その写真からは、ダンサーひとりひとりが、このカンパニーで踊ることに誇りと喜びをもって臨んでいることがハッキリと読み取れるはず。会社経営が芳しい状況にあるかどうかを知りたければ、社員の顔つきを見ればいいと言われるのと同じように、このカンパニーが脂ののりきった状況にあることはこうしたダンサーの表情から明らか。地元の観客もそれが分かっているからこそ、年間の人気演目はほぼ完売。他の券売も8割を切ることはないという。このカンパニーのトップの座について今年で12年目となる、芸術監督のリード・アンダーソンもいまの状況に少なからず満足していると語る。


―――シュツットガルトのプリンシパルたち多国籍で個性的で、みな自分だけのユニークな才能をのびのびと開花させている。それはあなたの指針ですか?

おっしゃるとおり、いま現在カンパニーには約30ほどの国籍のダンサーが集まっています。だから我々はダンス界の国連ですね(笑)。でも彼らはある日突然、世界のどこかからやってきて、オーディションを受けるわけではない。そうではなく多くの団員はカンパニー付属のスクールからそのまま成長して入団してくる。つまり私はほとんどのダンサーをティーネージャーの頃から知っているわけです。すると子育てと同じ要領で、この男の子はここが優れている、この女の子はここが優れているということが、時とともに次第に分かってくる。そうしたときに決してAの才能を持つ子をBに変えようとしたり、Bの長所を持つ子にAを押しつけたりしてはいけません。私の思想は一人一人のダンサーを、まったく別の特別な個人として尊重して育てること。これは私の恩師でありカンパニーの創設者であるジョン・クランコから受け継いだ理念でもあります。


―――そのクランコによる代表作のひとつである『オネーギン』を今回は東京で上演されます。

少しひいき目が入っているかもしれませんが、私はこの作品はバレエ史上最も美しい全幕物だと思っている。私自身、かつてダンサー時代にオネーギン役を踊りましたが、オネーギンと相手役のタチアナが踊る最後のパ・ド・ドゥは、この世でダンサーが味わうことのできる最も素晴らしい体験のひとつ。あの感情は......、いまでも思い出すだけで体の芯が震えます。本当に国籍も人種も宗教も政治も越えて、誰もが心から感動することができる壮絶な愛の物語です。

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―――もうひとつ東京で上演されるのは、非常に斬新な演出で人気の『眠れる森の美女』。

私自身このマリシア・ハイデ演出版のプロダクションが大好きです。まず幕が開いたときに目を奪われるのが、美術家ユルゲン・ローズによるセットの美しさ。プロローグでは春、一幕では夏、二幕では秋、三幕では冬、と背景が次々に変わっていき、その木々や花々の変化とともに私たちも時間の流れを体感することができる。それに何よりこの『眠り』の演出で素晴らしいのは、カラボスの描き方。普通のカンパニーではプリンシパルの男たちは皆、王子役を演じたがるのですが、ここではみんなカラボスをやりがたるぐらいです(笑)。とにかく『オネーギン』にしろ『眠り』にしろ、一日として同じ演目を同じプリンシパルが踊ることがありませんので、ぜひ素晴らしく個性的なダンサーたちの魅力を、存分に楽しんで頂ければと思います。

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