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ジェイソン・レイリー インタビュー

ジェイソン・レイリー(プリンシパル) インタビュー




08-09.03Blog2.jpg漆黒のマントをひるがえし、所狭しと舞台を駆けるカラボス。美しき猛虎のような怒声を宙に猛らせ、蒼白い炎のような嫉妬を静かに沸きたて、妖艶な魔女のような気位の高さを見せつける。そしてそんな5分ほどに及ぶ爆風を巻き起こす独壇場のあと、ぴたりと、舞台中央で台風の目が静止するーー、と、一瞬の静寂ののち、観客から津波のような大喝采が沸き起こる。その喝采の中央に立つのは、カラボス役のジェイソン・レイリー。彼の演技はいわゆる典型的な「バレエダンサー」から想像するものとはあまりにもかけ離れている。いったいその型破りな思考回路は、どんな人物から生まれてくるのか? 直接取材をして思ったのは、彼自身がとてつもなく自由でやんちゃで繊細な精神の持ち主だということだ。


―――7月にシュッツットガルトであなたの素晴らしいカラボスを観て背筋が震えました。

ありがとう、照れるね。あの役は......、観てて分かるだろうけど、あまりにも演じていて楽しい役柄だから、下手をすると舞台上で自分自身を見失ってしまう。そうならないように、何よりうまく自分をコントロールすることが大切。そもそも振付家のマリシア(ハイデ)は過剰演技することを嫌う。とてもナチュラルな演技を求める。だから僕は自分のパーソナルな感情の中から、カラボスとコネクトすることのできる何かを探し出して、それを演技に注入するようにしてる。とはいえ、僕は女じゃないし女装趣味もないからカラボスの感情を理解するのは大変なんだけどね。しかもあの衣装がすっごく重い。1時間半かけて化粧をして、つけ爪をつけて、長い髪がターンするたびに顔にべたーって張り付いて。楽しいことは楽しいんだけど、何もかもが大変な役でもある(笑)。


―――あなたは王子も青い鳥もレパートリーとして踊られるんですよね。意外です。

うん、自分でもつい最近まで王子になれるなんて思ってもいなかった(笑)。だって、ほら、こんなピアスをしてバギーパンツを履いてる王子なんてどこの国にいる? だけど02/03シーズンに代役ではじめて『白鳥の湖』の王子を演じてみたら、これが本当にクールで面白かった。ワオ、僕も白いタイツを履いてノーブルになれるんだって驚いた。それからは、ほとんどの王子役を演じている。芸術監督のリードはそうして、僕自身でさえ考えつかないような挑戦を与えてくれるから。シュツットガルトにはもう12年いるけど、絶対に飽きることがない。


―――東京で演じられるもう一方の役=オネーギンも、また全く異なる役柄ですね。演じようによっては、とても自己中心的な男性にも見えてしまいます。

そうなんだよ。とても傲慢で、とても...ろくでなしな野郎(笑)。だけど人間誰しも人に対してそういう態度をとってしまうことはある。だから僕は、繰り返しになるけど、この役に関しても自分のパーソナルな感情とつなげて演じるようにしてる。たとえば3幕では、僕が一時期狂ったようにある女性に恋をして、だけど上手くいかなかったときの経験、その心が粉々に破壊されたときの経験を思い出して、オネーギンに入れ込むようにしてる。でも本当にこれは数あるクランコ・バレエのなかでも最も難しい役柄のひとつ。あまりにも多層的で、ひとつ演技を間違えると観客にオネーギンの心の繊細な機微が届かなくなる。だからこの役にはいつも100%の集中を持って臨むようにしてる。だからオネーギンを演じたあとは、彼の魂が自分のなかから抜けきるのに丸一日かかることもあるぐらいだよ。

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「オネーギン」 オネーギン:ジェイソン・レイリー

ジェイソン・レイリーの出演予定日
11月23日(日) 1:00p.m. 「眠れる森の美女」(カラボス)
11月29日(土) 3:00p.m. 「オネーギン」(オネーギン)