インタビュー: 2010年2月アーカイブ

 いよいよ、今週金曜日(2/26)東京バレエ団初演「シルヴィア」の幕が開きます。
 今回、振付指導をしてくださっているのは、元英国ロイヤル・バレエ団バレエマスター、クリストファー・ニュートンさんと、アンナ・トレヴィエンさん。
 初日を前に、2004年に「シルヴィア」の蘇演を手がけ、世界各地のバレエ団で「シルヴィア」の振付指導をされている、クリストファー・ニュートンさんにお話をうかがいました。


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リハーサル指導中のクリストファー・ニュートンさん



◎ニュートンさんは、英国ロイヤル・バレエ学校で学び、1954年に英国ロイヤル・バレエ団に入団しています。ニュートンさんと「シルヴィア」との出会いを教えていただけますか。

私がはじめて「シルヴィア」に出演したのは、バレエ学校の学生のとき、第3幕のラッパ手の役でした。バレエ団に入団後は、(第1幕の)農民の役や(第3幕の)春の使いの役を演じました。その後アメリカ・ツアーでも、繰り返しこの作品を踊り、最終的には、第3幕のイアセイオンも演じました。


◎その後、この作品は一度上演が途切れました。

アシュトンは最初全3幕の作品として創作したのですが、試行錯誤を繰り返していました。2幕版にしたり、最終的には1幕に切り詰めたりしたのですが、いずれも彼自身が満足できるものではなかったのです。その後しばらく上演が途絶えてしまいました。


◎その作品をニュートンさんが蘇らせることになりました。

私は1988年にアシュトンの「オンディーヌ」の復元を手がけ、アシュトンはその舞台をとても気に入ってくれました。そこで、次に「シルヴィア」の復元しようという流れになったのです。アシュトンとは「シルヴィア」の何が問題なのか、解決するにはどうしたらよいのかということまで話し合っていたのですが、残念なことに3ヶ月後に彼は亡くなり、「シルヴィア」の復元の話も消えてしまったのです。その後、長い時を経て、アシュトン生誕100周年に合わせて、(英国ロイヤル・バレエ団芸術監督の)モニカ・メイスンが「シルヴィア」の蘇演を決め、再び私に声がかかったのです。


◎30年以上も途絶えていた作品をよみがえらせるのには、ご苦労があったのでは。

アシュトンが亡くなる前に問題が何かということがわかっていたので、第2幕の再構築を中心に作業を進めました。私は若い頃とても記憶力がよくて、振付もすぐに全部を覚えることができました。ですから、かなり鮮明に「シルヴィア」のことも覚えていたのです。若いころの記憶というのはものすごいものですね(笑)。
また、古いモノクロのフィルムが残されていたので、それを参考にもしました。それに加えて、当時ダンサーとして出演していた人たちにも話を聞きながら、再構築作業を進めていったんです。実はモニカ(・メイスン)もシルヴィアのお付きの役で出演していましたし、1幕版では、主演していたんですよ。


◎そのように苦労して蘇らせた「シルヴィア」がいよいよ東京バレエ団で初演されます。リハーサルがはじまって3週間。東京バレエ団とのリハーサルはいかがですか。

リハーサルはとても順調に進んでいます。ダンサーたちは献身的にこの作品に臨み、リハーサルに参加する姿勢、仕事に対する姿勢が素晴らしいと感心しています。何よりも、グループとして協力しあい、互いに助け合っている姿が印象的です。本当にみんな一生懸命に取り組んでいます。


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◎(マイ・キャスト公演で)シルヴィアを演じる田中結子にリハーサルの様子を聞いたところ、「とても楽しい!ニュートンさんは、振付を押し付けるのではなく、私のよい部分を引き出そうと教えてくださる」と目を輝かせて話していました。

ひとつの役を杓子定規に教えるのも、演じさせるのも全く意味のないことです。キャラクターに無理やり当てはめるのではなく、踊る本人自体からキャラクターを引き出すことが大切なのです。アシュトンもそうした指導をしていました。ダンサーがわからないことや経験したことのないことを、無理やりに押し付けてやらせてみても意味はありません。ダンサーに合った指導方法で、稽古を重ねていくことにより、それをできるようにさせる。ダンサーから引き出してあげるように心がけています。


◎そうしたニュートンさんの指導方法が、活気ある稽古場の雰囲気をつくり、ダンサーたちの前向きな姿勢にも繋がっているのでしょうね。最後に日本の観客に「シルヴィア」の作品の魅力をお伝えください。

この作品は、踊りを通して物語が語られています。お芝居の部分ではなく、ひとつひとつのステップが、ストーリーや役柄、それぞれの役の感情を語っているのです。そうしたことを感じて、この作品を楽しんでいただきたいですね。



※ニュートンさんは、「シルヴィア」の蘇演時の詳細を、今回のインタビューではあまり語られませんでしたが、実際にはかなりのご苦労があったようです。公演会場で発売する「シルヴィア」のプログラムに、"「シルヴィア」の再生-復活上演の舞台裏"(クリフォード・ビショップ/ロイヤル・バレエ団プログラムより転載)として、その詳細が記されておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

『シルヴィア』の東京バレエ団初演まで、いよいよあと1週間となりました!
ポリーナ・セミオノワ演じるシルヴィアに思いを寄せる牧童アミンタを演じるのは、アメリカン・バレエ・シアターのプリンシパル、マルセロ・ゴメス。来日直前のゴメスに公演への思いを聞きました!


●これまでアミンタ役を何回くらい踊っていますか?

3~4回くらい踊っています。初めて『シルヴィア』に出演したときは、オリオンを演じました。アミンタとオリオンは正反対の役柄。アミンタはとても高潔でロマンティック、それに対してオリオンは他を圧倒するような力に満ちた役柄なので、2つの役柄とも演じていてとても楽しかったです。


●アミンタ役を踊る上でどのような難しさがありますか?

アシュトン作品はどの踊りも詩的で、精密なアシュトン・スタイルのあるべき姿から離れてはならないので、テクニック的にとても難しいですね。僕が大好きな場面の一つに、第1幕のアミンタの登場のソロがありますが、とてもゆったりとしたテンポで、厳格なアシュトン・スタイルで踊らなければなりません。ただ、彼の作品は振付そのものが物語や役柄の感情を語っており、踊りながら役柄そのものと繋がっていると感じられるので、僕は大好きなんです。

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『シルヴィア』アミンタ(photo:GeneSchiavone(ABT))


●アミンタとその恋敵オリオン、正反対の役柄で好評を得ていますね。

一つの作品で異なる役柄を演じることは、作品全体を把握する上でとてもためになっています。『シルヴィア』以外では、『白鳥の湖』でロットバルトとジークフリート王子、『海賊』でアリ、ランケデム、コンラッドを踊っています。通常、一つの役柄に複数のダンサーがキャスティングされるので、他のダンサーとのコントラストを見せるためにも、俯瞰的な視点を持って役柄を演じることにとてもやりがいを感じています。なにより、舞台の上で演じることが本当に好きなので、さまざまな役柄を踊れることをとても楽しんでいます。


●それでは、『シルヴィア』について言えば、どちらの役柄を演じるのが好きですか?

それは答えるのがとても難しい質問ですね(笑)!アミンタもオリオンも大好きな役柄ですし、それぞれ何かしら僕自身に与えてくれる役柄なので、この2役を演じられることを本当に感謝しています。ただ、アミンタは、僕のハートの中でも特別な場所に位置しているということは言えます。


●お気に入りの場面はありますか?

たくさんあります!第3幕のグラン・パ・ド・ドゥは、美しい振付、美しい装置、そしてシルヴィアとアミンタの愛にあふれる場面なので、大好きです。また、第2幕の洞窟の場面のオリオンとシルヴィアの踊りも素晴らしいですね。もうすべての動きがゴージャスだと思います。あとやはり、第1幕でアミンタが登場する美しいソロ。シンプルだけれど、アミンタという人物そのものを表しているような踊りで、そのシンプルさがとても好きです。


●シルヴィアを演じる、ポリーナ・セミオノワとは初めての共演ですね。

ここ数年、いろいろな方から「ポリーナとの舞台が観たい」と言われ続けていたので、とても楽しみです。彼女とはガラ公演などで顔を合わせることが多く、初めて会ったのは数年前のギリシャでのマラーホフのガラのときのことでした。当時の彼女はとても若く才能にあふれていましたが、それから時が経ち、さらに経験を積み、美しいバレリーナとなった彼女の変化を、今回見られることを楽しみにしています。ちょうどいいタイミングで共演の機会を与えていただいたと思っています。


●公演を楽しみにしている日本の皆さんにメッセージをお願いします。

日本の皆さんがバレエ、そして芸術そのものに深い愛を持ってくださっていることに感謝しています。僕も、バレエだけではなく、さまざまな芸術を愛しているので、皆さんがアーティストや芸術家にどのような敬意を抱いてくださっているかが理解できます。こういった芸術に深い理解をいただいていることは、他のどの国でもあまり見られないことだと思います。日本でステージに立つときは、いつも心からの拍手を送っていただいていると感じられますし、そのことにとても感謝しています。
今回の舞台が東京バレエ団と初共演なので、とても楽しみにしています。また、僕が今まで重ねてきた経験を日本の皆さんにお見せできることも楽しみにしています。皆さんにも僕がステージを思いきり楽しむように、舞台を楽しんでほしいです!

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