2013年1月アーカイブ

13-01.31BBL01.jpg 1989年生まれのガブリエル・アレナス・ルイーズは、まさに新世代のベジャール・ダンサー。BBL入団4年にして数々の主要な役柄を任されている期待の若手です。

──日本公演で上演される『ライト』で踊っている"裕福な者"とは、どんな役柄ですか? 
 私が登場するのは豪華な空間、ヴェネツィアの宮廷のような場所で展開する複数の場面。私が踊っている"裕福な者"は、"侯爵"とも呼ばれている役柄です。彼はメセナ、芸術のパトロンです。真白に化粧をし、立派なウイッグをかぶるので、この役の準備には時間がかかるんですよ。
 冒頭のシーンで、侯爵は誕生のシンボルである卵を、エリザベット・ロスが踊る母親に持ってきます。侯爵の周囲には、侯爵夫人、オスカー・シャコンが踊るヴィヴァルディ("赤毛")、宮廷人たちがいて、舞台はバロックの雰囲気に包まれます。このバレエでは数々のソロが踊られ、どれもダンサーにとっては非常に難しい踊りなのですが、とても美しいですよ。

──難しい役柄でしたか?
 最初は少し心配でしたが、とても自然に取り組むことができました。洗練と優雅さ、控えめさが要求される役柄ですから、その高貴さを表現するためにずっと"自信満々"な顔をしていなければならない。それがうまくいったんですね。
 この役を演じるのが大好きです。訴えかけてくる人物、自分と何か共通点のある人物について語るのは好きですね。こうした役柄には徹底的に打ち込みます。あらゆる振付は、ダンサーがその振付を生きること、その振付の精神に憑依されることを強いるもの。それによって、作品を観客の皆さんに伝えることが可能になるのです。

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──『ライト』の初演は1981年ですね。ベジャールの過去の作品に取り組むことについて、どう感じていますか?
 モーリス・ベジャールの作品に取り組む際には、過去への敬意を持つ必要があります。現代から見れば、時代的に少々ズレを感じます。『ライト』で使用されているさまざまな音楽から、当時のモーリスの表現の意図を思い浮かべることができました。作品が誕生した当初は前衛的だったザ・レジデンツの音楽が、今日では当時と同じように感じられない、それも時代のズレを感じる理由でしょう。けれども『ライト』のストーリーは、現代のダンサーそして観客に直接に語りかける普遍的なテーマをいくつも含んでいます。『ライト』はとても美しいバレエだと思います。


 日本公演では『ディオニソス組曲』、またジル・ロマン振付『シンコペ』でも重要な役柄を担います。80年代の傑作を踊りながら、新たな作品への創作にも参加と、カンパニーに不可欠な存在として、そのキャリアを着実に積み重ねています。

──では、Aプロで上演される『ディオニソス組曲』の魅力について、作品の魅力を教えてください。
 舞台は、ギリシャの怪しげなタベルナ(酒場)です。ギリシャ人のカップル、水兵たち、ジゴロ、娘たちがいます。ディオニソス、そして全体を通して重要となる母親的人物もいます。陽気なバレエで、悲劇は起こらず、非常にダイナミックで音楽も素晴らしい。女性アンサンブルは喜びに溢れた快活なダンスを踊ります。彼女たちはディオニソスを凄くセクシーに魅惑するんですよ。終盤の男性たちのダンスは、まるでお祭りみたいで非常にフィジカル。舞台の後は心地良い疲労感が残ります。

──この作品での役柄は?
 私が踊っているのは、2人いる水兵のうちの1人。とても自然な雰囲気を醸しているバレエですから、人物を演じ過ぎないことが重要です。ただし、見かけは自然でも、振付は身体的にとてもハードで、たくさんのダンス・ポジションを含んでいます。
 カンパニーでギリシャを旅したことがあるのですが、確かに、この作品と同じ雰囲気を感じたんです。カンパニーのツアーは、常に私たちを豊かにしてくれるもの。他国での発見を自分たちのダンスに取り入れ、関係性を築き上げ、それを自分のものにしようと努力しています。

──ジル・ロマンの作品、『シンコペ』も踊っていますね。
 このバレエの筋は、フランス語で"サンコップ(シンコペ)" という語が持つ二つの意味に拠っています。それは人間の心臓のリズムが止まる瞬間であると同時に、音楽におけるリズムの要素の一つでもある。けれども、作品の主要なテーマは、イマジネーション、そして記憶です。この作品の世界観、深遠さのなかに現れるユーモアは、すぐに私に訴えてきました。私たちの世界とは全く違う世界に包みこまれるのです。

──踊っているのはどんな役柄ですか?
 孤独、複数の思い出、そして思い出による癒しを物語るのが、私の役。パートナーはエリザベット・ロスで、彼女は私の人生を照らし、私を支え、バレエの内部へ連れて行きます。私はこの役をとても気に入っています。私はこの作品で、伝達すべき新しい感覚を見出しました。この仕事は私を成長させてくれたのです。

──では、あなたにとってモーリス・ベジャールとは?
 モーリスは人間的に本当に心打たれる人物でした。ジルも同じです。モーリスの人間的な一面は、私たちにとって一種の教訓となっています。私は彼を非常に尊敬しているし、彼の作品を踊ることは本当に自分を豊かにしてくれる。が、クリエーションへの参加は、さらに一層、自分を豊かにしてくれます。ジルの作品で、私はより自由を感じます。振付家が自分たちのために一緒にクリエーションをしてくれるのは幸運なことです。それはムーヴメント誕生の特別な瞬間であり、そのとき私たちの身体は真に何かを語るのです。

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(取材・文・舞台写真撮影 アーノルド・グロッシェル)

英国ロイヤル・バレエ団2010年日本公演で収録された、ケネス・マクミラン振付「ロミオとジュリエット」(全編)の再放送が決定いたしました。
ジュリエット役は、この公演が英国ロイヤル・バレエ団との最後の共演になった吉田都。ロミオ役を演じるのは、八面六臂の活躍を続け、今年の英国ロイヤル・バレエ団日本公演でも「不思議の国のアリス」、「白鳥の湖」に主演するスティーヴン・マックレー。
7月の来日公演の前に、気品と伝統に満ちた英国ロイヤル・バレエ団の魅力をたっぷり味わってください。


13-01.30.jpg英国ロイヤル・バレエ団
「ロミオとジュリエット」


●番組名:Eテレアーカイブス
●放送日時:2月16日(土) 
        00:00~2:21(金曜深夜)
●放送局:NHK Eテレ












photo:Kiyonori Hasegawa

13-01.25BBL02.jpg これまでの日本公演でも『バレエ・フォー・ライフ』、『火の鳥』をはじめ、さまざまな作品で重要な役柄を踊り、BBLの活動の中核を担うダンサーとして、その存在感を印象づけてきた那須野さん。インタビューでは、今回の日本公演で上演される『ディオニソス組曲』の魅力、ベジャール作品への思いについて語ってくれました。


──『ディオニソス組曲』の魅力を教えてください。
 40分程度の長さの作品ですが、これは長編バレエ『ディオニソス』からの抜粋です。明確なストーリーはなく、モーリス・ベジャールのクラシックなスタイルによる作品です。バレエは静寂と暗闇の中で始まり、さまざまなダンスを経て、エネルギーに満ちあふれた男性アンサンブルで終わります。
 このバレエは、なんと言っても男性のバレエだと強く感じます。タベルナ(酒場)のシーンの一つで、僕は若者を踊ります。そのあとに男性ダンサー全員が、ヴェルサーチのデザインした独特のフォルムの赤いパンツ姿で登場します。全員が半円を描いて座り、独特な雰囲気とエネルギーが生まれ、同じ音楽が何度も繰り返される。それはまさに日本のお祭りのようです。

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──では、那須野さんにとって、モーリス・ベジャールとは?
 ダンスの神様であると同時に、カンパニーのメンバーと付属学校の生徒みんなの祖父でした。モーリス・ベジャールは、私のことを"サンジュ(猿)" と呼んでいて、たくさん跳躍があり、速いリズムの音楽を使ったフィジカルな作品をいろいろ練習させてくれました。スタジオにモーリスと一緒にいること、彼と一緒に仕事をすること、それだけでも既にとても意味深く、強烈な経験でした。今は、まだ知らないモーリスのバレエを踊りたいという気持ちもあります。カンパニーの提案に沿って、取り組んでいきたいですね。

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(取材・文 アーノルド・グロッシェル)


東京バレエ団「ラ・シルフィード」の公演概要が決定いたしました。
1984年、東京バレエ団創立20周年記念公演で初演して以来、30年にわたり国内外で上演をつづけ、東京バレエ団を代表するレパートリーとして、高い評価を得てきたピエール・ラコット版「ラ・シルフィード」。創立50周年プレ企画として開催される今回の公演では、東京バレエ団期待の若手キャスト2組が主演いたします。
創立50周年を機に更なる進化を遂げる東京バレエ団にご注目ください。



〈東京バレエ団50周年プレ企画〉
「ラ・シルフィード」 La Sylphide


■公演日時:
6月15日(土)3:00p.m.
ラ・シルフィード:渡辺理恵、ジェイムズ:柄本弾

6月16日(日)3:00p.m.
ラ・シルフィード:沖香菜子、ジェイムズ:松野乃知

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■会場:東京文化会館

■前売開始日:3月9日(土) 10:00a.m.より

■入場料(税込み):
 S=\8,000 A=\6,000 B=\4,000 C=\2,000 
 エコノミー券=¥1,000(5/17(金)よりイープラスのみで発売)
 学生券=¥1,000 (5/17(金)より、NBS WEBチケットのみで発売)
 ※未就学児童のご入場はお断りします。

■指揮:ワレリー・オブジャニコフ

■演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

■お問い合わせ・お申し込み:
NBSチケットセンター TEL03-3791-8888(平日10:00~18:00、土曜10:00~13:00)

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舞台写真:長谷川清徳

モーリス・ベジャール没後5年記念シリーズII
<ベジャール・ガラ>

振付:モーリス・ベジャール  振付指導:小林十市

◆主な配役◆

「ドン・ジョヴァンニ」 音楽:フレデリック・ショパン (モーツァルトの主題による)

ヴァリエーション 1:加藤くるみ、三雲友里加、高浦由美子
ヴァリエーション 2:矢島まい
ヴァリエーション 3:河合眞里、伝田陽美
ヴァリエーション 4:乾友子
ヴァリエーション 5:奈良春夏
ヴァリエーション 6:渡辺理恵
シルフィード:吉川留衣



「中国の不思議な役人」 音楽:ベラ・バルトーク

無頼漢の首領:森川茉央
第二の無頼漢―娘:小笠原亮
ジークフリート:柄本弾
若い男:田中結子
中国の役人:木村和夫



「ギリシャの踊り」 音楽:ミテキ・テオドラキス

I.イントロダクション 
II.パ・ド・ドゥ(二人の若者):宮本祐宜-岡崎隼也
III.娘たちの踊り 
IV.若者の踊り 
V.パ・ド・ドゥ:小出領子-梅澤紘貴
VI.ハサピコ:上野水香-高岸直樹
VII.テーマとヴァリエーション 
ソロ:後藤晴雄
パ・ド・セット:西村真由美、乾友子、高木綾、渡辺理恵、村上美香、吉川留衣、矢島まい
フィナーレ:全員


※音楽は特別録音によるテープを使用します。


◆上演時間◆

「ドン・ジョヴァンニ」 15:00 ~ 15:25
休憩 15分
「中国の不思議な役人」 15:40 ~ 16:15
休憩 20分
「ギリシャの踊り」 16:35 ~ 17:10

モーリス・ベジャール没後5年記念シリーズII
<ベジャール・ガラ>

振付:モーリス・ベジャール  振付指導:小林十市

◆主な配役◆

「ドン・ジョヴァンニ」 音楽:フレデリック・ショパン (モーツァルトの主題による)

ヴァリエーション 1:川島麻実子、河谷まりあ、沖香菜子
ヴァリエーション 2:阪井麻美
ヴァリエーション 3:高木綾、岸本夏未
ヴァリエーション 4:西村真由美
ヴァリエーション 5:奈良春夏
ヴァリエーション 6:上野水香
シルフィード:吉川留衣



「中国の不思議な役人」 音楽:ベラ・バルトーク

無頼漢の首領:後藤晴雄
第二の無頼漢―娘:小笠原亮
ジークフリート:柄本弾
若い男:西村真由美
中国の役人:小林十市



「火の鳥」 音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

火の鳥: 木村和夫
フェニックス:柄本弾
パルチザン:乾友子、奈良春夏、川島麻実子*
       氷室友、宮本祐宜、梅澤紘貴、岡崎隼也、吉田蓮

※当初の発表より、*印のキャストが変更となっております。何卒、ご了承ください。

※音楽は特別録音によるテープを使用します。


◆上演時間◆

「ドン・ジョヴァンニ」 15:00 ~ 15:25
休憩 15分
「中国の不思議な役人」 15:40 ~ 16:15
休憩 20分
「火の鳥」 16:35 ~ 17:00

 いまやBBLを代表するダンサーの一人として、数々の作品で主要な役柄を踊っているジュリアン・ファヴロー。最近ではベジャール最高傑作の一つ、『ボレロ』の主役=メロディー役をも任され、世界各地の舞台で喝采を浴びています。3月には、いよいよ彼のメロディー日本初披露が実現します。そんな彼に、まずは『ボレロ』の魅力、作品への思いを語ってもらいました。

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──ファヴローさんにとって『ボレロ』とは?
『ボレロ』は、モーリス・ベジャールの最も有名、最重要かつ神話的な作品で、強烈な象徴体系を持っています。あの赤い円台に上り、自分の解釈で踊ることができるのは、とても名誉で幸運なことです。

──『ボレロ』を踊ることになった経緯を教えてください。
 私がルードラに入ったのは16歳。その1年後、カンパニーに一つ空きができ、モーリスがそれを私に与えてくれました。最初は非常に困難でしたが、良い場所、良い時期に居合わせたと思います。いつも"我が家"にいるように感じていました。
 モーリスは私に『ボレロ』について話してくれていましたが、踊る機会はありませんでした。モーリスが亡くなり、ボレロを踊っていた唯一の男性ダンサーがカンパニーを去った。2、3年経ったあるとき、ジルが私のところに来ました。彼は私が十分に成熟し、"良い時期"にいると考えていたのです。6カ月の間ツアーで経験を積み、それから"準備万端"でパリで踊りました。私はフランス人なので、家族全員が観に来てくれましたね。私のキャリアにおける偉大な瞬間でした。

──『ボレロ』の踊りは、毎回違ってくるものですか?
 同じであることは絶対にありません。『ボレロ』は身体的に非常にきつく、数学の図式のように記憶しなければならない。振付も非常に難しい。どんな意味もあり得るし、いくつもの解釈がありますが、モーリスは「死に向かうこと」だと言っていました。円台の周りのダンサーたちは、まるで"メロディー"に食らいつく下顎のようだとも。しかし同時にモーリスは、ダンサーそれぞれが自身の解釈や独自のヴァージョンを発展させることを奨励していました。
 『ボレロ』に最初に出演したのは、円台の周りでした。あの戦い、求心力が大好きでした。円台の周りの男性ダンサーたちは、テンションとクレッシェンドを創り上げるのに重要かつ必要な存在です。円台上の私は、彼らを利用して気持ちを盛り上げ、自分を奮い立たせる。彼らなしに、『ボレロ』は機能しないでしょう。

──ファヴローさんの『ボレロ』は今回、日本初上陸となります。
 たくさんの日本のファンの方たちが、すでにヨーロッパ・ツアーでの私の『ボレロ』を観に来て下さり、それを再び観ることを楽しみにしてくださっている。シンプルに取り組み、ベストを尽くしたいですね。私にとってこれは一つの到達点であり、認められた証。期待に応えられたことを嬉しく思うと同時に、私に『ボレロ』を与えてくれたジルとモーリスに感謝しています。

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 また、30年ぶりに復活をとげ、今回待望の日本初演となる『ライト』で踊っているのは、"貧しき者"。ベジャールが、かのジョルジュ・ドンのために振付けた役柄で、ヒロイン=ライトの運命の鍵を握る重要な役割を担っています。

──伝説の傑作といわれる『ライト』ですが、この作品の魅力について教えてください。
 『ライト』は、複数の登場人物の人生をパラレルに織り上げた、とても美しい物語です。同時に展開する複数の筋が、7色の衣裳を着たダンサーが象徴する虹によって結びついていますが、主な舞台は芸術の庇護者、芸術家、聖者の世界であるヴェネツィアです。作品の主題は、誕生そして光が象徴している純粋さ。このバレエのためのモーリスの音楽のチョイスは、驚くほど見事です。

──ファヴローさんが踊っている"貧しき者"とは、どんな人物なのでしょうか。
『ライト』の重要人物たちに、普遍的な性格を与えたいとモーリスは望んでいました。"貧しき者"は、実は、貧困の誓いを立て、自分の所有する僅かものすら他者に分け与えていたアッシジの聖フランチェスコです。彼は光、つまりカティア(カテリーナ・シャルキナ)が踊る"ライト"を求めています。ライトに出会うことに成功し、彼の人生は変容します。作品の終盤には7人の男性ダンサーの中心で踊るシーンがあるのですが、私たちは回教の修道僧のように旋回し、トランス状態になります。ニルヴァーナ(涅槃)に到達しようとするかのように。ダンサーにとっては大変ですが、このバレエには真のポエジーとエモーションがあります。

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──『ライト』の初演は1981年。すでに30年以上も経過していますね。
 『ライト』は、再演であると同時に、指導者たちとともに手がけた再創造の仕事だったともいえます。ジルは言っていました。「いま、この難しいバレエを、オリジナルに最も近い形で再構築するための、"理想的"なダンサーたちがいると感じている」と。
 モーリス・ベジャールの振付作品に敬意を持っていますが、私たちは必ずしも当時のダンサーたちと同じには踊りません。モーリスは常に、私たちに再解釈の自由を与えてくれていましたし、私たちの新解釈が作品を現代に適応させていくのです。モーリスの旧作バレエを再び取り上げることは、レパートリーの豊かさを示すのに重要なこと。モーリスの作品は、用いる音楽によってさまざま、全く違っています。私たちにとって大切なのは、モーリスのあらゆる傾向の振付をお見せすること、若い世代に彼の仕事を発見してもらうこと、そして彼のメッセージと哲学を尊重し、それをできる限り多くの人に示すことなのです。

(取材・文 アーノルド・グロッシェル)

東京バレエ団<ベジャール・ガラ>1月20日(日)公演のキャストが、下記のとおり変更となりました。
「ドン・ジョヴァンニ」 "ヴァリエーション6"を踊る予定となっておりました吉岡美佳は、怪我のため出演することができなくなりました。代わって渡辺理恵が出演いたします。
また、全体のプログラム配役の関係から、「中国の不思議な役人」の"娘"が宮本祐宜から小笠原亮に、「ギリシャの踊り」の"二人の若者"が小笠原亮から宮本祐宜に変更となります。
何卒ご了承いただきますよう、お願い申し上げます。



<ベジャール・ガラ> 1月20日(日) 3:00p.m.

「中国の不思議な役人」
娘:小笠原亮 (←宮本祐宜)

「ギリシャの踊り」
二人の若者:宮本祐宜-岡崎隼也 (←小笠原亮-岡崎隼也)

「ドン・ジョヴァンニ」
ヴァリエーション6:渡辺理恵 (←吉岡美佳)

 昨年夏の世界バレエフェスティバルに参加し、モーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)の新世代のスターとしての存在感を印象づけた二人、『ライト』のタイトルロールを踊るカテリーナ・シャルキナと、赤毛=ヴィヴァルディ役を踊るオスカー・シャコンが、数々の謎に包まれた伝説の作品、『ライト』の魅力をひもときます。

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 カテリーナ(・シャルキナ)の存在が、『ライト』の再演を考える直接のきっかけになった──BBLの芸術監督で、この幻のベジャール作品の初演にも関わっているジル・ロマンはこう明言したが、カテリーナ本人はそれを知っている?
「ええ、ジルからは常々"君はいつも明るく楽しそうで、カンパニーの光のような存在だね"と言われていたし(笑)。でももう一つは、この数年間で、私のバレエ・テクニックは飛躍的に成長した。自分で言うのも何だけど(笑)。それに対するご褒美のようなものもあるんじゃないかしら。モーリスの振付って、一見そんな風には映らないけど、根本に物凄く厳格なロシア・バレエの基礎を必要としているの。ただし、それは脚というか腰から下だけで、上半身はとことん自由じゃなきゃいけない。そういう独特のテクニックを習得しないと、あの世界観は表現できないのよ」
 カテリーナとは昨年夏の世界バレエフェスティバルで『パルジファル』を踊ったオスカー・シャコンもうんうんうなずく。
「『パルジファル』は踊りのテクニックも大変だけど、下からライトをあてられ、それが影絵となって、生身の僕らとでいつの間にかパ・ド・ドゥというか、パ・ド・カトルを踊っている風に見える。映画的でもあり、演劇的でもあるんだ。もちろん『ライト』もひと言では説明できない多層的な魅力にあふれている。ヴィヴァルディの音楽と、現代音楽のザ・レジデンツの両方をまったく違和感なく使っていることでもわかるけどね(笑)」
 初演当時の紹介記事やレヴューを読むと、『ライト』のメインテーマは"女性の一生"といった記述が目につくが、二人に言わせれば、もっと複雑なものらしい。カテリーナいわく、「私にとってはもっと抽象的な作品で、私が踊るライトも、一人の女性というよりは妖精のような、一つのエネルギー体とでも言える、人間とは全く違う存在ととらえているわ。そしてジュリアン(・ファヴロー)演じる貧しき者や、オスカー演じる"赤毛"など、そういういろんな人々に喜びや幸福を与えるような存在で、それが最後には人間の女性になる......。で、別の女性の生誕を助けるんだな、と解釈したわ」。

12-01.07_BBL02.jpg 一方、オスカーは「モーリスが遺してくれた創作ノートを読んでいろいろ考えたんだけど」と、頭の中でのベジャールとの対話を存分に味わっている様子なのが頼もしい。
「僕も、ライトというのは人間とは全く異なる存在だと思ったよ。そこには様々な世界、様々な色彩、様々な人物が重なり合っていくんだな、と。しかもそうした様々な人物は様々なイメージを背負っている。例えばジュリアンの貧しき者は、聖フランチェスコと重なり、それがサンフランシスコという街に繋がって行くと同時に、当然宗教的意味合いも背負わされている。また侯爵(裕福な者)も登場するが、当時の宮廷人の在り方、存在様式というものを背負っている。このように、登場人物各々が、一つの時代、一つの生活様式、そしてイメージ、色彩などを代表しているんだと思う。ライトだけはそうした人間とは違う次元にいるんだけど、最後には死というものを知る。その転換というのが一つのポイントで、それまで自分が希望を与えてきた人間たちと同じ列になる。つまり、光は実は人間各々の内側に元からあったもので、人々は内なる光を自分の中に見つけていくところにドラマがあるという内容なんだ。かなり哲学的だけど(笑)」
 オスカーが踊る赤毛の司祭は、実はヴィヴァルディその人。「でも彼は死後有名になったから、誰も明確なイメージを持っていないんだよ(笑)。モーリスの自由なクリエーションさ」。

12-01.07_BBL03.jpg カテリーナは30年前の初演を含め、数多くのヴァージョンを映像で研究したという。
 「で、ラストに"アーメンのヴァリエーション"があるんだけど、以前は控えめだったそこの踊りを、もっと外側にエネルギーを出すように踊っているわ。私という人間らしく(笑)」

(取材・文 佐藤友紀 フリーライター)


東京バレエ団
子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」

◆主な配役◆

オーロラ姫:沖香菜子
デジレ王子:松野乃知
リラの精:渡辺理恵
カラボス:川島麻実子
カタラビュット(式典長):氷室友
王さま:佐藤瑶
王妃さま:稲葉菜々

<プロローグ・第1幕>

乳母:大塚怜衣
優しさの精:高浦由美子
やんちゃの精:河合眞里
気前よさの精:加藤くるみ
のんきの精:宮下加瑞
度胸の精:金子仁美
4人の王子:梅澤紘貴、森川茉央、杉山優一、永田雄大
オーロラの友人:小川ふみ、河谷まりあ、二瓶加奈子、三雲友里加

<第2幕>

フロリナ王女と青い鳥:河谷まりあ、杉山優一
白い猫と長靴をはいた猫:金子仁美、岡崎隼也
赤ずきんとおおかみ:宮下加瑞、安田峻介
シンデレラとフォーチュン王子:高浦由美子、梅澤紘貴
白雪姫:小川ふみ



◆上演時間◆

<プロローグ・第1幕> 12:30 - 13:15

休 憩 15分

<第2幕> 13:30 - 14:10


---------------------------

主催:nbs_rogo.gif公益財団法人日本舞台芸術振興会/日本経済新聞社
後援:東京バレエ協議会/品川区教育委員会

東京バレエ団
子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」

◆主な配役◆

オーロラ姫:吉川留衣
デジレ王子:宮本祐宜
リラの精:二瓶加奈子
カラボス:伝田陽美
カタラビュット(式典長):岡崎隼也
王さま:永田雄大
王妃さま:小川ふみ

<プロローグ・第1幕>

乳母:河合眞里
優しさの精:村上美香
やんちゃの精:岸本夏未
気前よさの精:大塚怜衣
のんきの精:古閑彩都貴
度胸の精:阪井麻美
4人の王子:梅澤紘貴、森川茉央、安田峻介、杉山優一
オーロラの友人:河谷まりあ、政本絵美、加藤くるみ、三雲友里加

<第2幕>

フロリナ王女と青い鳥:三雲友里加、梅澤紘貴
白い猫と長靴をはいた猫:岸本夏未、吉田蓮
赤ずきんとおおかみ:古閑彩都貴、森川茉央
シンデレラとフォーチュン王子:村上美香、杉山優一
白雪姫:政本絵美



◆上演時間◆

<プロローグ・第1幕> 16:00 - 16:45

休 憩 15分

<第2幕> 17:00 - 17:40


---------------------------

主催:nbs_rogo.gif公益財団法人日本舞台芸術振興会/日本経済新聞社
後援:東京バレエ協議会/品川区教育委員会

東京バレエ団
子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」

◆主な配役◆

オーロラ姫:沖香菜子
デジレ王子:松野乃知
リラの精:渡辺理恵
カラボス:矢島まい
カタラビュット(式典長):氷室友
王さま:永田雄大
王妃さま:小川ふみ

<プロローグ・第1幕>

乳母:河合眞里
優しさの精:村上美香
やんちゃの精:岸本夏未
気前よさの精:大塚怜衣
のんきの精:古閑彩都貴
度胸の精:阪井麻美
4人の王子:梅澤紘貴、森川茉央、安田峻介、杉山優一
オーロラの友人:河谷まりあ、二瓶加奈子、政本絵美、三雲友里加

<第2幕>

フロリナ王女と青い鳥:三雲友里加、梅澤紘貴
白い猫と長靴をはいた猫:岸本夏未、吉田蓮
赤ずきんとおおかみ:古閑彩都貴、森川茉央
シンデレラとフォーチュン王子:村上美香、杉山優一
白雪姫:政本絵美



◆上演時間◆

<プロローグ・第1幕> 12:30 - 13:15

休 憩 15分

<第2幕> 13:30 - 14:10


---------------------------

主催:nbs_rogo.gif公益財団法人日本舞台芸術振興会/日本経済新聞社
後援:東京バレエ協議会/品川区教育委員会

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