2013年12月アーカイブ

NBSチケットセンターの年末年始の営業は下記のとおりとなります。


◆年末  12月28日(土) 13:00まで

◆年始  1月6日(月) 10:00より


なお、NBS WEBチケットでは年末年始も24時間いつでもチケットをご購入いただけますので、チケットをご希望の際にはWEBチケットをご利用ください!

2014年も引き続き、NBSチケットセンター・NBS WEBチケットをご利用いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 東京バレエ団の4度目のギリシャ公演は、アテネにおけるクリスマス公演。12月25日から30日まで、1都市で6日間にわたって毎日2プログラム、合計12公演を敢行中です。夕方4時から"子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」"、夜8時からは「エチュード」と、シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル、オリヴィエ・シャヌが客演する「マルグリットとアルマン」。折り返し地点にきたツアーのレポートをお届けします。

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 冬晴れのアテネの空に迎えられて12月22日に第1陣が到着すると、すぐに"子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」"の子役のリハーサルが開始。本作ではオーロラ姫の成長を表現する年齢違いの3人のオーロラ姫と、白雪姫の場面に登場するこびとたちを子役が演じますが、今回これらを現地アテネのバレエ学校の生徒たちが担当。ギリシャ人のリトル・ダンサーたちは十分な練習を積んできてくれて、日本・ギリシャ間の素晴らしいコラボレーションが実現しました。

 23日には第2陣がアテネ到着。昼間は劇場でリハーサル。夜には在ギリシャ日本大使公邸での夕食会にプリンシパルやスタッフが招待され、西林万寿夫日本大使をはじめ大使館の方々の歓迎を受けて、みな和やかなひと時を過ごしました。

 クリスマス・イヴともなると、日本と違って街に人影はなく店舗も休業。あたりは静寂に包まれます。いっぽうテレビでは、シルヴィ・ギエムの記者会見と「ねむれる森の美女」の映像を組み合わせた公演のコマーシャルが流れています。そして25日降誕祭当日にいよいよ初日が開幕しました。

 会場のメガロン アテネ・コンサート・ホール内のアレクサンドラ・トリアンティ・ホールは客席数1500の、上品な内装の中劇場です。"子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」"の観客は家族連れが中心。おめかしをして両親に連れられてやってきた子どもたちは、入場時に配られた"子ども「ねむり」"のイラスト入り特製缶バッチを嬉しそうに身に着けて鑑賞。そして幕が開き、氷室友演じるカタラビュットが「ヤーサス!」と声をかけると、わぁーっと歓声があがって客席が温まっていきます。この公演のために録音したギリシャ語ナレーションと、生のセリフの呼びかけが相乗効果を生んで、劇場中にウキウキとした楽しさが広がっていきました。

 最後は恒例の、登場人物たちが客席を歩きながらのご挨拶。オーロラ姫を演じた上野水香と王子役の木村和夫をはじめ、妖精や童話のキャラクターに扮した東京バレエ団のダンサーたちを、目をキラキラさせて見つめる客席のギリシャの子どもたち。そして大人の観客も温かい拍手を贈ってくださり、出演者と客席が一体になって喜びに溢れました。

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 夜の部は、打って変わってシックな服装に身を包んだ大人の観客が客席を埋めるなか開幕。「エチュード」初日は川島麻実子、柄本弾、松野乃知ほか。バレエ・クラスを模しながら、ロマンティック・バレエの情緒からハイ・テクニックの応酬までを華麗に見せる本作は、1980年代の欧州公演で東京バレエ団が伝説を作った演目です。今回は久しぶりの海外での上演ですが、終わると同時にやんやの拍手と喝采。そしてシルヴィ・ギエムが登場する「マルグリットとアルマン」はもちろんの大喝采で、スーパースターの人気ぶりを見せつけていました。

 本ツアー終了後、東京バレエ団の海外公演は、30か国150都市において722公演と記録を更新することになります。

 パリ・オペラ座バレエ団のアリス・ルナヴァンが12月20日にパリ・オペラ座ガルニエ宮で上演されたアンジュラン・プレルジョカージュ振付「ル・パルク」終演後に、エトワールに任命されました。任命は、パリ・オペラ座バレエ団芸術監督ブリジット・ルフェーヴルの推薦を受けて、総裁のニコラ・ジョエルにより行われました。

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 ルナヴァンは、1990年パリ・オペラ座バレエ学校に入団し、97年に17歳でパリ・オペラ座バレエ団に入団。2004年にコリフェ、05年にスジェ、12年には、コンクールでキトリのヴァリエーションを踊って、プルミエール・ダンス―ズに昇進。

 この後、12月29日に「ル・パルク」、2月下旬~3月初旬までアグネス・デ・ミル振付「フォールリバー伝説」に主演予定。パリ・オペラ座バレエ団2014年日本公演では「ドン・キホーテ」(3月15日昼公演)にジョシュア・オファルトと共に主演予定です。エトワールとなり、初の日本公演をお見逃しなく!

[※2月24日付]
配役変更に伴い、ルナヴァンの出演日は3月13日、15日夜公演に変更になっております。

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photos : Agathe Poupeney / OnP


◆パリ・オペラ座バレエ団2014年日本公演の公式サイト>>>

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 2013年12月のクリスマス・シーズン、東京バレエ団はギリシャ・アテネにて第26次海外公演を行うべく、この週末にいよいよ旅立ちます。会場はアテネの複合型の劇場施設、メガロン アテネ・コンサート・ホールのアレクサンドラ・トリアンティ・ホール。演目は"子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」"と、シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッルをゲストに迎えての「マルグリットとアルマン」及び「エチュード」の二つで、6日間にわたって12回公演を実施いたします。

 ギリシャには、過去1973年、1996年、2008年と3度訪れており、今回が4度目の来訪となります。2008年6月のヘロド・アティクス野外音楽堂公演では、5,000席の客席が2公演とも満席となり、大きな喝采を得ました。東京バレエ団はツアー終了後には30カ国150都市において722公演を達成することになります。

 ことに"子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」"を海外で上演するのは、このアテネ公演が初めてとなります。今回は式典長(カタラビュット)のナレーションをギリシャ語で録音し、現地の観客の理解をうながしながら、要所要所で式典長がギリシャ語で子どもたちに語りかけコミュニケーションをとっていきます。また、カーテンコールで登場人物たちが客席をねり歩く、大好評の演出も現地で実現させて、積極的にコミュニケーションを図っていきます。

 クリスマスに賑わうアテネで、東京バレエ団はバレエの舞台を通して現地の人々と触れ合う、新しい形の国際文化交流を繰り広げます。


【第26次海外公演 日程】

12月25日 16:00 開演子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」
(上野水香、木村和夫)
   20:00 開演「マルグリットとアルマン」
(シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル主演)
「エチュード」
(川島麻実子、柄本弾、松野乃知)
12月26日 16:00 開演子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」
(吉川留衣、梅澤紘貴)
   20:00 開演「マルグリットとアルマン」
(シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル主演)
「エチュード」
(上野水香、柄本弾、松野乃知)
12月27日 16:00 開演子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」
(吉川留衣、梅澤紘貴)
   20:00 開演「マルグリットとアルマン」
(シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル主演)
「エチュード」
(上野水香、柄本弾、松野乃知)
12月28日 16:00 開演子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」
(三雲友里加、松野乃知)
   20:00 開演「マルグリットとアルマン」
(シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル主演)
「エチュード」
(奈良春夏、梅澤紘貴、入戸野伊織)
12月29日 16:00 開演子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」
(上野水香、木村和夫)
   20:00 開演「マルグリットとアルマン」
(シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル主演)
「エチュード」
(川島麻実子、梅澤紘貴、入戸野伊織)
12月30日 16:00 開演子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」
(三雲友里加、松野乃知)
   20:00 開演「マルグリットとアルマン」
(シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル主演)
「エチュード」
(奈良春夏、梅澤紘貴、入戸野伊織)



会場: メガロン アテネ・コンサート・ホール / アレクサンドラ・トリアンティ・ホール
    Megaron The Athens Concert Hall /Alexandra Trianti Hall

ゲストダンサー: シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル、オリヴィエ・シャヌ (「マルグリットとアルマン」)

東京バレエ団
「ザ・カブキ」(全2幕)

◆主な配役◆

由良之助:森川茉央
直義:永田雄大
塩冶判官:松野乃知
顔世御前:渡辺理恵
力弥:竹下虎志
高師直:原田祥博
伴内:岡崎隼也
勘平:梅澤紘貴
おかる:吉川留衣
現代の勘平:和田康佑
現代のおかる:河合眞里
石堂:岸本秀雄
薬師寺:安田峻介
定九郎:野尻龍平
遊女:川島麻実子
与市兵衛:山田眞央
おかや:伝田陽美
お才:高木綾
ヴァリエーション1:野尻龍平
ヴァリエーション2:入戸野伊織


◆上演時間◆
第1幕 15:00 - 16:15
休憩  20分
第2幕 16:35 - 17:20

※音楽は特別録音によるテープを使用します。

東京バレエ団
「ザ・カブキ」(全2幕)

◆主な配役◆

由良之助:柄本弾
直義:森川茉央
塩冶判官:梅澤紘貴
顔世御前:奈良春夏
力弥:吉田蓮
高師直:木村和夫
伴内:氷室友
勘平:入戸野伊織
おかる:沖香菜子
現代の勘平:松野乃知
現代のおかる:三雲友里加
石堂:杉山優一
薬師寺:永田雄大
定九郎:岡崎隼也
遊女:吉川留衣
与市兵衛:山田眞央
おかや:伝田陽美
お才:高木綾
ヴァリエーション1:岡崎隼也
ヴァリエーション2:梅澤紘貴


◆上演時間◆

第1幕 15:00 - 16:15
休憩  20分
第2幕 16:35 - 17:20


※音楽は特別録音によるテープを使用します。

 照明デザイナー・高沢立生、音響デザイナー・市川文武、技術監督・立川好治による『ザ・カブキ』座談会。後半の話題からは、リハーサルの現場で次々と新しいアイディアを出し、実現させていくベジャールの才気、そのエネルギッシュな姿が浮かび上がってきます。


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立川 (本番直前、)劇場に入って初めて出てきたアイディアもありました。最後の「涅槃」のところは、ダンサーたちが一旦引っ込んで着替えますが、ベジャールさんにはその間がどうしても我慢ならない。そこで、繋ぎとして塩冶の亡霊を出し、師直の首を持ってくることになった。やってみると実に音楽的にはまるし、意味的にもはまる。驚くべき仕事だったと思います。

高沢 そういったことがたくさんあったね。例えば幕開きの現代の場面。

立川 当初は普通の現代の若者ふうにジーパンをはいたり、バラバラの衣裳でした。

高沢 それが、舞台稽古の段階で白の衣裳に統一することに。あの場面は、舞台の"額縁"を「テレビで埋めてほしい」とも言われていました。それは実現せず、今の形になりましたけど、ベジャールさんには、秋葉原の、テレビがたくさん並んだ風景が現代の日本の粋のように感じられたのではないかな。照明は、「もっと白く、白く」と言われた。白は、ベジャールさんにはとても現代的に思える色なのかもしれない。プロローグは白、義太夫の部分は(影を作らずに全体をまんべんなく照らす)"歌舞伎明かり"、そこからどんどんドラマティックになると、あるいはバレエの明かりになり、というのが基本で、あとはほとんど任せてくださいました。

市川 本当は、「山科閑居」(歌舞伎では九段目)も入るはずだったんです。振付の途中でベジャールさんは、「やっぱりこうしたい」とやめてしまい、かわりに外伝の「南部坂雪の別れ」が入った。「山崎街道」も本当は義太夫とオーケストラでいく予定でしたが、「ここは下座音楽でいきたい」と。で、「山崎街道」のための音楽が余っちゃったから、急遽それを討ち入りの場面のヴァリエーションに使ったんです。でも、全然不自然ではないでしょう?


 初演から27年、今回で通算上演回数185回を達成する『ザ・カブキ』。この作品を踊り継いでいく柄本、森川ら新世代の由良之助ダンサーに、期待が寄せられる。



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市川 これはもう、東京バレエ団最高の古典作品と言ってもいいんじゃないでしょうか。約30年間、全然古びることなく、「今出来上がったばかり」のような新鮮さで観ることができる。忠臣蔵という話に目をつけたベジャールさんは凄いですね。

森川 しっかり受け継いでいかなければと思います。

柄本 もっともっと学ぶ必要があると再確認させていただきました。自分なりに研究を重ねながら、次の由良之助に取り組んでいきたいですね。

森川 この作品への愛に満ち溢れておられる皆さんの期待は、決して裏切りたくないと思います。


取材・文:加藤智子(フリーライター)

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※座談会の模様は、「ザ・カブキ」公演プログラムでさらに詳しくお届けします。


写真:長谷川清徳(舞台)、吉澤隆(初演時リハーサル)

 東京バレエ団創立50周年記念シリーズ第1弾、モーリス・ベジャール振付『ザ・カブキ』公演を目前に控え、照明デザイナー・高沢立生、音響デザイナー・市川文武、技術監督・立川好治による座談会が実現しました。3人とも、1986年4月の『ザ・カブキ』世界初演に携わり、その後も国内外の数多くの公演に立ちあってきたベテラン・スタッフです。当日は、5代目由良之助ダンサーの柄本弾、今回が由良之助デビューとなる森川茉央も同席。当時のベジャールの貴重なエピソードが次々と飛び出したこの座談会の模様を、2回にわたってダイジェストでご紹介します。


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高沢 1984年の東京バレエ団創立20周年。そこで上演する作品をベジャールさんにお願いしていたのでしたね。

市川 83年の秋に、やっとOKを出したベジャールさんが、「『仮名手本忠臣蔵』をやりたい、作曲は黛敏郎に頼みたい」と言われた。ベジャールさんは三島由紀夫が好きで、三島原作の黛さんのオペラ『金閣寺』を聴いていたのです。(東京バレエ団代表の)佐々木(忠次)さんは喜んですぐ黛さんに電話をかけてきた。ちょうどその時、僕は黛さんとスタジオで中島貞夫監督の「序の舞」という映画の音楽を録音している最中でした。黛さんに聞いたら、「ベジャールのバレエの作曲をしてほしい」という電話だったという。「"忠臣蔵"をバレエにするんだってさ」と。ええっ? 歌舞伎ならほかにもあるのに、よりによって男ばっかりの「忠臣蔵」かと(笑)。それが発端でした。

 ベジャールから「全体の構成は任せる。好きなように書いてくれ」と任せられた黛敏郎。全十一段という長大な浄瑠璃台本を、原稿用紙一枚にも満たない程に短く抜粋し、物語をまとめあげたという。録音が開始されたのは、初演の前年、85年の秋。

市川 まずは義太夫を録音、その後オーケストラを録音しました。オケの録音にはベジャールさんも立ちあわれました。それをトラックダウンしてベジャールさんにお渡ししたのが12月の暮れ。

高沢 で、1月にリハーサルして、その後一度帰国されて、3月にまた来日された。ベジャールさんの振付はすごく速かったね。湯水のように出てくるし、変えるとなったらすぐ変えちゃう。衣裳もヌーノ・コルテ=レアルのデザイン画がありましたが、使ったり使わなかったりで、どんどん変えちゃう。

立川 稽古場で「こういうものが必要」と言われるのだけれど、それをどう使うのか、我々にはわからない(笑)。例えば、「ジャパニーズ・アルファベットを書いた幕が要る」、「振り被せて振り落とす薄い幕が要る。それには血を描け」という。が、それをどこでどんなふうにお使いになるのか、稽古場ではわからないんですよ。それでデザインを持っていくと、「こうではない」。いろはの幕の文字の書体、太さ、配置には凄く細かいダメ出しをされました。いろは四十七文字は、普通七文字刻みにし、一番下を「とがなくてしす(咎なくて死す)」と読ませますが、ここでは6文字刻みに組んでいる。すると、最後に一文字分の空白ができる。ベジャールさんは、わざとこうしたんだと思うのです。最後に空白を作って、「お前たちはあそこに何を書くのか」と言いたいのではないかと。

取材・文:加藤智子(フリーライター)

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※座談会の模様は、「ザ・カブキ」公演プログラムでさらに詳しくお届けします。

舞台写真:長谷川清徳

13-12.03_05.jpg 振付家モーリス・ベジャールとは30年以上の交流があり、一緒にデュエット作『コーデリアの死』(〈パ・ド・ドゥの芸術〉)も踊った、歌舞伎俳優の坂東玉三郎さん。ベジャールが東京バレエ団に振付けた『ザ・カブキ』も、初演から観ていて、一昨年の花柳壽輔さんの会でも一部だけだが改めて観て、「きれいでしたね」という感想を口にしていた。そんな玉三郎さんに、12月14日の『ザ・カブキ』で由良之助を踊る柄本弾が話を聞くという、夢のような顔合わせが実現した。

 玉三郎さんが鼓童と共に『アマテラス』を上演中の京都まで出向く新幹線の中でも、緊張した面持ちだった柄本。だが、玉三郎さんの細やかな心遣いに安心し、持ち前の舞台度胸もあってか、堂々と自分の聞きたいことを質問する姿が印象的だった。

 例えばベジャールという人物について。「自分は生前のベジャールさんとお会いしたことがないのですが、玉三郎さんからご覧になって、ベジャールさんという方はどんな方でしたか?」との質問に対しては、「いろいろな意味で"濃い"方でしたね」という深い言葉が玉三郎さんの答。「もちろん情も濃かったけれども、私が初めてベジャールさんにお会いした1977、78年頃はまるでブルドーザーのように自分の求めるものをグワッと掘り起こしていくイメージだったのが、年齢と共に次第にベジャール・バレエ団の団員たちが"お父さんのようだ"と言うような、優しくその人のいいところを引き出して作品をより濃いものにしていった。そんなベジャールさんと親しくさせていただいたのは、私の宝物です」。


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 『ザ・カブキ』の創作でベジャールが悩んでいた時、奇しくも歌舞伎座で、原作である「『仮名手本忠臣蔵』のおかるを演じていた」という玉三郎さんに、柄本が尋ねたのは「僕は討ち入りのシーンがやっぱり一番好きで、他の作品では味わえない達成感、高揚感みたいなものを感じるのですが、玉三郎さんが『忠臣蔵』でお好きなシーン、見どころはどこですか?」なる質問。これに対しての玉三郎さんの答は、長年『忠臣蔵』という作品に深く関わってきた方ならではのものだった。「『忠臣蔵』は、物語の発端があって、松の廊下、切腹とストーリーが進んでいきますが、あとは周りの人間の話、言わば外伝、外伝なんですね。それがある瞬間、フッと『忠臣蔵』のドラマに戻っていく。そこがやはり素敵だなと思います」。

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 この後、『ザ・カブキ』でも採り入れられている"手鏡を使って手紙を盗み見する"場面に代表されるような、「そんなこと、あるわけないでしょう(笑)」話で盛り上がり。「でも、『白鳥の湖』にしても『ジゼル』や『眠れる森の美女』にしても、理屈ではあり得ない話を成立させる力がある。そこが人々の心をとらえるのでしょうね」とは、バレエにも造詣が深い玉三郎さんならではの言葉。「18、19歳の頃に見たレニングラード・バレエに感銘を受け、同じ舞台に立つ者としての身体作りをしたい」と、以来毎日欠かさずストレッチをしているエピソードを教えてくれるなど、柄本にとっても忘れられない時間になったようだ。


取材・文:佐藤友紀(フリーライター)


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※坂東玉三郎さんと柄本弾の対談は、「ザ・カブキ」公演プログラムでさらに詳しくお届けします。


撮影:岡本隆史 舞台写真:長谷川清徳



シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー
「聖なる怪物たち」

芸術監督・振付:アクラム・カーン

ダンサー:シルヴィ・ギエム、アクラム・カーン

振付(ギエムのソロ):林懐民
振付(カーンのソロ):ガウリ・シャルマ・トリパティ

音楽:フィリップ・シェパード
およびイヴァ・ビトヴァー、ナンド・アクアヴィヴァ、トニー・カサロンガの歌より

照明:ミッキ・クントゥ
装置:針生康
衣裳:伊藤景
構成:ギィ・クールズ

演奏:アリーズ・スルイター(ヴァイオリン)
ラウラ・アンスティ(チェロ)
コールド・リンケ(パーカッション)
ファヘーム・マザール(ヴォーカル)
ジュリエット・ファン・ペテゲム(ヴォーカル)

技術主任:ファビアナ・ピッチョーリ
音響技術:ニコラ・フォール
ツアー・マネージャー: マシータ・オマー

◆上演時間◆
15:00-16:15

※本公演には休憩がございません。開演に遅れるとご自分のお席におつきいただけませんのでご注意ください。

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