2014年1月アーカイブ

 東京バレエ団創立50周年シリーズのハイライトの一つ、ジョン・ノイマイヤー振付『ロミオとジュリエット』初演の開幕を間近に控え、ついにハンブルクからノイマイヤーが来日。1月27日、この日の朝に日本に到着したばかりというノイマイヤーが、記者懇親会に出席、作品への思いを語りました。

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 まず、「私の作品を通して日本の皆さんとコミュニケーションできる機会をいただいたことをとても嬉しく思います」と穏やかな笑顔で挨拶したノイマイヤー。『ロミオとジュリエット』について、「私が初めて手がけた全幕バレエです。ある意味、私の"独立宣言"ともいえるものでした。ずっと心の中に抱いていた、"バレエはこう変わっていき、こう発展していくべきだ"ということを示すチャンスだったのです」と初演当時を振り返ります。振付にあたって、「それまでに観た『ロミオとジュリエット』のバレエ作品、すべてを忘れ去った」というノイマイヤー。バレエでは、例えば、ティボルトは悪人で、年長のキャラクター、キャピュレット夫人は年を取った女性として登場することが多いものですが、バレエ作品での、そうしたステレオタイプな表現を指摘し、「シェイクスピアに立ち戻れば、ティボルトについて、そのような記述はありません。キャピュレット夫人などは、若くして結婚してジュリエットを産んだ、29歳か30歳くらいの女性です。私はバレエのこうした表現の仕方に、革命を起こしたいと考えたのです」。また、「シェイクスピアの作品が私のインスピレーションの源になっている大きな理由は、言葉を使わなくても存在しうる作品だからです。言葉になる以前に、何を書きたかったか、何を伝えたかったか、ということを、私はバレエで表現している。この作品は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』に対する、私の、とても個人的な解釈をバレエ化したものということができます」とも。

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 東京バレエ団のダンサーたちについては、「(指導のために先に来日していた)アシスタントたちの話では、東京バレエ団のダンサーたちはよりオープンになってきたようですね。自分の気持ちや感情を表す方法にはいろんなスタイル、メソッドがある。日本のバレエ団の舞台を観て、西洋の真似をしていると感じることがあります。が、私は日本の伝統が大好きですから、日本人としての自然な表現が作品に組み入れられることを、とても楽しみにしています。ぜひ、自分ならではの表現をしてほしいと思っています」。
 ノイマイヤーによるリハーサルは翌日にスタートするとのこと。まもなく、初演の幕があがります。

文:加藤智子(フリーライター)

photos : Nobuhiko Hikiji

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 東京バレエ団では、ジョン・ノイマイヤー振付『ロミオとジュリエット』バレエ団初演という大舞台を控え、年末年始にハンブルクから3人の指導者が来日。出演者が3つのスタジオに分かれてリハーサルが開始されました。1カ月強という短期間で初演作品を仕上げるというだけあって、2週間たった後も、リハーサルの内容は実に濃厚。主役カップルたちの稽古場からは、「ブラーヴォ! ブラーヴォ!!」と、指導者、ケヴィン・ヘイゲン氏の溌剌とした声が響いていました。

 ダンサーたちは、彼のアドバイスに熱心に耳を傾けています。第1幕、ロミオとジュリエットの出会いのパ・ド・ドゥ。初日に登場する沖香菜子と柄本弾のペアが踊る初々しい恋人たちは、短い時間の中でさまざまな表情を見せていきます。ジュリエットが、ふっと胸の前で両手をVの字に合わせるポーズでストップをかけたヘイゲン氏。「そこでのジュリエットは、彼女にとっての完璧な女性、ロザリンデの真似をしているんです。だから表情もそのようにしなければ」と説明します。すっと、大人びた雰囲気を漂わせる沖。リハーサル期間に入る前、「14歳の可愛らしい少女が大人へと変わっていく様子を、しっかりと表現できたら」と語る笑顔が印象的でした。

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沖香菜子、柄本弾、ケヴィン・ヘイゲン


 そんな彼女をキラキラとした目で追うロミオ=柄本弾。「ノイマイヤーさんの世界を少しでも吸収して、もっと"引き出し"を増やしたい」と新たな役柄に意欲的です。リハーサルは常に全力、スタジオ狭し、と縦横無尽に駆けていく、恋するロミオの姿が目を引きます。「この組はこの組ならではの良さがあった、と思っていただけるようにしたい」。沖との息も合ってきて、難易度の高いリフトにも「パーフェクト!」と声がかかります。

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沖香菜子、柄本弾


 もう一組の主役カップルには変更が生じ、ジュリエットは岸本夏未が踊ることに。「本当に私が踊るのかしら?」と冗談を飛ばしていたけれど、「今は緊張する暇がないほど必死。自分のジュリエット像をよく考えながら取り組んでいきたい」と、目指す方向を真っ直ぐに見据えています。リハーサルをはじめてからまだ日が浅い後藤晴雄とのパートナーシップ。短時間の稽古のなかでも、みるみるうちに呼吸が合うようになり、稽古を重ねる喜びをかみしめているよう。ヘイゲン氏からも「組んだばかりにしてはとてもいいね!」と大きな拍手を受けていました。

 後藤は4人の主役ダンサーのなかで最も経験豊富、ノイマイヤー作品の奥深さ、難しさを熟知しているだけに、「自分を前へ前へと鼓舞するようにいかないと」と、並々ならぬ覚悟。後輩ダンサーたちに負けじと、どんな場面も全力でのぞんでいます。ノイマイヤー作品の心理描写の美しさについて、「激しく踊り続けたあとに、すうっと二人が手を重ね合わせるポーズをもってきて、気持ちの高ぶりを表現する。そんなふうに、お客さんをぐっと集中させる瞬間がある。素晴らしいですね」と讃えていました。

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岸本夏未、後藤晴雄


 バルコニーのパ・ド・ドゥ、寝室のパ・ド・ドゥと、主役たちの見せ場は多彩。舞台での彼らの活躍が期待されます。

取材・文:加藤智子(フリーライター)

photos : Shinji Hosono

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 「ロミオとジュリエット」初演の配役に変更が生じました。2月6日と9日にジュリエットを踊る予定だった河谷まりあは、リハーサル中に肋骨を骨折したため出演できなくなりました。そのため河谷に代わって、岸本夏未がジュリエット役を踊ります。
 なお振付家のジョン・ノイマイヤーが、現在来日して振付指導に当たっているケヴィン・ヘイゲンと、ダンサーたちのリハーサルの進行状況等から検討した結果、公演初日の2月6日は沖香菜子・柄本弾がロミオとジュリエットを務めることが最善であるとの結論を下しました。
 以上の変更につき、なにとぞご理解いただきますようお願い申し上げます。




2月6日(木)6:30p.m. 沖香菜子、柄本弾 (← 河谷まりあ、後藤晴雄)
2月7日(金)6:30p.m. エレーヌ・ブシェ、ティアゴ・ボアディン
2月8日(土)2:00p.m. 沖香菜子、柄本弾
2月9日(日)2:00p.m. 岸本夏未、後藤晴雄(← 河谷まりあ、後藤晴雄)

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