2010年6月に行われる、英国ロイヤル・バレエ団日本公演「ロミオとジュリエット」に、英国ロイヤル・バレエ団ゲストプリンシパルの吉田都が出演することが決定いたしました。
吉田都は今シーズンで英国ロイヤル・バレエ団を退団することを発表しており、日本公演での「ロミオとジュリエット」がロイヤル・バレエ団での最後の公演となります。
吉田都を含む各演目の主演ダンサーの出演日等、詳細は12月下旬に当ホームページでお知らせする予定です。
英国ロイヤル・バレエ団2010年日本公演
「リーズの結婚」全2幕
[公演日程]
6月19日(土) 昼・夜、6月20日(日) <東京3回>
「うたかたの恋」全3幕
[公演日程]
6月22日(火)、23日(水) 、24日(木)<東京3回>
「ロミオとジュリエット」全3幕
[公演日程]
6月26日(土) 、27日(日)昼・夜 、28日(月) 、29日(火) <東京5回>
7月3日(土)<西宮 1回>
2009年11月アーカイブ
リハーサルはルグリ、吉岡美佳、上野水香、西村真由美、そしてド・バナ自身が踊るソリストのパートと、女性3名と男性5名、およびコール・ドの男女5名ずつのパートに大別されて進められていった。当初、キャストには役名がつけられていた(ルグリ→太陽、吉岡→地球、上野→金星、西村→月、ド・バナ→火星など)が、リハーサルが進むうち、役名はなくなることに。ド・バナによれば「名前は自分が求めているエネルギーを説明するために便宜的につけていただけ」なのだとか。ルグリが温かな光のような存在であるのに対して、西村は夜や冷たさを表し、上野が愛やパッションを体現すれば、ド・バナは武士のような闘争心や破壊力を表現するという。吉岡は時や空間、すべての事象の中心となる"ゼロ地点"の役割だ。
ルグリ&西村、上野&ド・バナのスピード感あふれるデュエットがみるみる間に形になっていく一方で、「時の象徴であり、永遠の存在。すべてであり、無でもある」と振付家から禅問答のようなイメージを与えられた吉岡は、能のすり足のような動きや水をすくうような仕草を交えながら、作品全体の核となる役割を、しなやかに創り上げていく。ルグリは自分の出番以外でもすべてのシーンを稽古場の片隅で見守りつつ、時に振付家の相談に乗り、時に自ら手本を示してダンサーにアドバイスを送っている。ルグリと共有する時間は、ソリストはもちろん、すべての団員にとってかけがえのない財産となるはずだ。
濃密なソリストのリハーサルに負けず劣らず、というよりさらなる熱気をもって繰り広げられたのが、群舞シーンの振付である。もっとも時間を要し、また振付家としてもっとも腕が鳴る場面ともいえるだろう。ルグリが「群舞の使い方がとても上手い。物語を語る必要がある時には語り、語らない時には語らない」とド・バナの振付術を賞していたが、その創作の過程を垣間見ることができた。
まずは大地の鼓動を感じさせるパーカッションの響きに乗せて、松下裕次以下男性5人によるエネルギッシュなダンスが観る者を圧倒する。「空間を大きく使って!」「背中を丸めてエネルギーを蓄えるように」「ここはクラシックのきれいなアラベスクで」と振付家の言葉が矢継ぎ早に飛ぶなか、ノンストップで踊り続ける5人。彼らの間を泳ぐように高木綾、奈良春夏、川島麻実子の女性3人が登場すると、今度は「セントラルパークでジョギングしてる人みたい」と、思わず笑いを誘うダメ出しも。「軽過ぎます、もっと力強く」との指示に、3人は真剣な眼差しで応えていく。そして男女10人が怒濤の如く交錯するシーンでは、幾通りものフォーメーションを試しながら、方向性を検討していった。前日固めた振りが翌日に変更になることもしばしばで、これも新作ならではの醍醐味か。ともあれ、津波のように寄せては返し、動きのダイナミズムを堪能できるシーンになりそうだ。
「とにかく創作なので、本当に探りながら創っていることを理解してください。特にこの場面は物語の中で大混乱が始まるところ。真ん中でパワフルに踊る男性5人のエネルギーに合うように、コール・ドの皆さんも力強く正確な踊りで表現してほしい」と、全員に語りかけるド・バナ。「まだ何か要素が足りない気もしますが、皆さんのせいではありません」とユーモアも忘れない。そう、これはまだまだ創作の途上に過ぎないのだ。
2週間強のリハーサル期間はアッという間に過ぎ去り、最後に報道陣を招いて公開リハーサルが行われた。荒削りながら、全体の4分の3程度にあたる8曲分を初めて通して披露。場面と場面のつなぎなどに課題が残るものの、ひとつの流れとして見ることでソロと群舞のメリハリがくっきりと浮び上がり、力強さと躍動感が伝わる仕上がりとなっていた。
「初めて通したとは思えない、素晴らしい出来です。特に男性5人の踊りには本当に驚きました」と、ド・バナは感に堪えない様子。「しばらく間が空きますが、一人ひとりがステップと同時に感情を大切にすることを忘れずに。ここまで忍耐強く付き合ってくれて本当にありがとうございました。でもまだシーンは残っているので、死ぬまで一緒ですよ(笑)」
未だ手つかずのシーンには、ルグリとド・バナのデュエットや、男性ダンサーとコール・ドのハードな群舞などが予定されているという。さらにフィナーレでは作品のテーマにつながる劇的効果を考えているというから楽しみだ。
長期間にわたりリハーサルを共にしてきたルグリも、感慨を込めて振り返る。「パトリックはイマジネーションをたくさん与えて自由にさせてくれるように見えるけれど、彼の中には明確にイメージするものがあるんです。自由があるようで、ない(笑)。でも私自身は与えられたものを解釈して表現したい、つまり導かれたいタイプなので、彼は理想的な振付家なんですよ。東京バレエ団の皆さんは、彼の難しいスタイルに見事に順応していました。打てば響くように反応が返ってくるわけですから、振付家としてもまた一歩深められたんじゃないかな」
薫陶を受けたモーリス・ベジャールの言葉を引き、「クリエーションは永遠に生き続けるもの。幕が開いても日々変わっていくと思う」と語るド・バナ。東京バレエ団と共に創り出す新しい世界は、どうやらさらなる変化を遂げていきそうだ。本番ではどんな姿を私たちの前に見せてくれるのか、期待を込めて待ちたい。
東京バレエ団創立45周年記念公演VIII
マイ・キャストシリーズ[1]
「くるみ割り人形」(全2幕)
◆主な配役◆
クララ:アリーナ・コジョカル
くるみ割り王子:ヨハン・コボー
【第1幕】
クララの父:柄本武尊
クララの母:井脇幸江
兄フリッツ:井上良太
くるみ割り人形:高橋竜太
ドロッセルマイヤー:木村和夫
ピエロ:松下裕次
コロンビーヌ:岸本夏未
ムーア人:小笠原亮
ねずみの王様:平野玲
【第2幕】
スペイン:奈良春夏-後藤晴雄
アラビア:西村真由美-柄本弾
中国:佐伯知香-中川リョウ
ロシア:田中結子-松下裕次
フランス:村上美香-河合眞里-宮本祐宜
花のワルツ(ソリスト):
矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子、小川ふみ
宮本祐宜、梅澤紘貴、安田峻介、柄本弾
指揮: デヴィッド・ガーフォース
演奏: 東京ニューシティ管弦楽団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
◆上演時間◆
【第1幕】 15:00 ~ 15:55
休憩 20分
【第2幕】 16:15 ~ 17:05
東京バレエ団創立45周年記念公演VIII
「くるみ割り人形」(全2幕)
◆主な配役◆
クララ:アリーナ・コジョカル
くるみ割り王子:ヨハン・コボー
【第1幕】
クララの父:柄本武尊
クララの母:井脇幸江
兄フリッツ:青木淳一
くるみ割り人形:高橋竜太
ドロッセルマイヤー:後藤晴雄
ピエロ:平野玲
コロンビーヌ:高村順子
ムーア人:中川リョウ
ねずみの王様:梅澤紘貴
【第2幕】
スペイン:乾友子-木村和夫
アラビア:西村真由美-柄本弾
中国:岸本夏未-氷室友
ロシア:田中結子-小笠原亮
フランス:高村順子-吉川留衣-長瀬直義
花のワルツ(ソリスト):
矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子、日比マリア
宮本祐宜、梅澤紘貴、安田峻介、柄本弾
指揮: デヴィッド・ガーフォース
演奏: 東京ニューシティ管弦楽団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
◆上演時間◆
【第1幕】 18:00 ~ 18:55
休憩 20分
【第2幕】 19:15 ~ 20:05
東京バレエ団創立45周年記念公演VIII
マイ・キャストシリーズ[1]
「くるみ割り人形」(全2幕)
◆主な配役◆
クララ:佐伯知香
くるみ割り王子:松下裕次
【第1幕】
クララの父:柄本武尊
クララの母:井脇幸江
兄フリッツ:井上良太
くるみ割り人形:中村祐司
ドロッセルマイヤー:木村和夫
ピエロ:高橋竜太
コロンビーヌ:岸本夏未
ムーア人:中川リョウ
ねずみの王様:平野玲
【第2幕】
スペイン:奈良春夏-後藤晴雄
アラビア:西村真由美-柄本弾
中国:岸本夏未-中川リョウ
ロシア:田中結子-小笠原亮
フランス:村上美香-河合眞里-宮本祐宜
花のワルツ(ソリスト):
矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子、小川ふみ
宮本祐宜、梅澤紘貴、安田峻介、柄本弾
指揮: デヴィッド・ガーフォース
演奏: 東京ニューシティ管弦楽団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
◆上演時間◆
【第1幕】 13:30 ~ 14:25
休憩 20分
【第2幕】 14:45 ~ 15:35
2010年東京バレエ団ラインナップが決定いたしました。
2010年 |
1月 「ラ・シルフィード」全幕 |
ロマンティック・バレエの真髄に挑むニュー・ヒロイン、ニュー・ヒーローに乞うご期待! |
ラコット版「ラ・シルフィード」は、東京バレエ団の看板演目の一つ。この公演では、上野水香がラ・シルフィードに初挑戦します。「ジゼル」に次ぐ2作目となるロマンティック・バレエとなるこの機会は、バレエ・ファンからの熱烈な声に応えてのものす。抜群のテクニックの持ち主であり、人気沸騰中のレオニード・サラファーノフとのコンビは、さらに期待を高めるもの。また、東京バレエ団の新鋭による「マイ・キャスト」公演にも、輝くニュー・ヒロイン、ニュー・ヒーローが登場します。 photo:Kiyonori Hasegawa |
2月 <マニュエル・ルグリの新しき世界>Aプロ ルグリ×ド・バナ×東京バレエ団 スーパーコラボレーション |
世界の頂点を極めたトップ・ダンサーの新境地を示す話題作! |
バレエ界に燦然と輝くトップ・スター、マニュエル・ルグリが、大きな信頼を寄せる振付家兼ダンサーであるパトリック・ド・バナとともに、東京バレエ団とのコラボレーションを実現。世界初演となる「ホワイト・シャドウ」のリハーサルは、すでに2009年10月から開始しています。東京バレエ団が、パリ・オペラ座を離れたルグリの新たなページを飾ることとなるこの公演は、バレエ・ファンなら見逃すことはできないはずです。 photo:Kiyonori Hasegawa |
2月 「シルヴィア」全幕【東京バレエ団初演】 |
ギリシャ神話の世界に繰り広げられる、絢爛・優美な恋と冒険の物語 |
東京バレエ団創立45周年記念公演シリーズの終盤のハイライトとなるのが、この「シルヴィア」。東京バレエ団初演となるこの公演には、ベルリン国立バレエ団の看板バレリーナ、ポリーナ・セミオノワとアメリカン・バレエ・シアターのプリンシパル、マルセロ・ゴメスが登場します。アシュトン振付の特徴である優美なロイヤル・スタイルが繰り広げられるこの作品が、東京バレエ団の新たな魅力を引き出します。 photo:Enrico Nawrath |
4月 「ザ・カブキ」全幕 |
世界に認められた不朽の名作、東京バレエ団の渾身の名舞台は見逃せない! |
東京バレエ団にとって、亡きモーリス・ベジャールによって遺された数々の作品のなかでも、最初のオリジナル作品である「ザ・カブキ」は、最も意義深いものといえます。また、1986年初演以来、世界中で高い評価を獲得し、いまや不朽の名作として認められているこの作品を上演し続けることは、東京バレエ団に課された使命でもあります。今回の公演では、次代を見据えたキャスティングにも注目が高まります。 photo:Kiyonori Hasegawa
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5月 「オネーギン」全幕【東京バレエ団初演】 |
実力を認められたからこそ叶った念願の東京バレエ団初演! |
ジョン・クランコ振付「オネーギン」は、作品への敬愛から、上演に対してクランコ財団によって厳しく管理されています。20世紀の物語バレエのなかで最も成功したオリジナル作品といわれるこの傑作を上演することは、東京バレエ団にとっても長年にわたる悲願でした。45周年記念公演の掉尾を飾るこの公演は、またひとつ東京バレエ団の新しい歴史を記すものとなるにちがいありません。 photo:Kiyonori Hasegawa |
6~7月 第24次海外ツアー 8月 海外公演帰朝報告公演(仮称) |
世界の舞台での喝采を浴し、さらなる飛躍を見せる! |
第 24回を数える海外ツアーは、トルコのアスペンドス、ハンブルク、ミラノ、ベルリンなどへと向かいます。プログラムは「ザ・カブキ」と〈ベジャール・プロ〉。ツアーのハイライトは、海外公演通算700回目の公演開催といえるでしょう。海外の檜舞台に立ち、観客たちからの喝采を得ることは、ダンサーたちにとって大きな自信と飛躍する力をもたらします。帰国直後の公演では、ひとまわり大きく成長した東京バレエ団が、きっと日本のファンを楽しませることでしょう。 |
9~10月 「ジゼル」全幕 |
ロマンティック・バレエの真髄を見せる東京バレエ団の美しさが日本各地へ! |
ロマンティック・バレエの代表作の一つ「ジゼル」では、プリマはもとより、東京バレエ団が世界に誇るアンサンブルの美しさも見どころとなります。東京バレエ団が描き出す幽玄世界の美しさは、すでに高い評価を得ているもの。日本の各地で待つ東京バレエ団ファンの皆さまのもとに、美しくも切ない、胸を打つ感動の舞台をお届けします。 photo:Kiyonori Hasegawa |
12月 「M」全幕 |
「私は三島を愛するためにこれを創った」とべジャールは語った。 |
「M」は、ベジャールが独特の感性によって作家三島由紀夫をバレエで表現した東京バレエ団オリジナル作品。ベジャールは日本の天才作家を愛し、その魂に寄り添うことを願ってこの作品を創ったといいます。そのために必要とされたのが、ベジャールの表現世界を真に理解する東京バレエ団だったのです。2010年は三島由紀夫の生誕85年、没後40年に当たります。鮮烈な美学と思想に彩られた三島の魂を感じる舞台をお楽しみください。 photo:Kiyonori Hasegawa |
2010年4月、モーリス・ベジャールが東京バレエ団のために創作した「ザ・カブキ」の上演が決定いたしました。
東京バレエ団「ザ・カブキ」
■公演日
2010年4月24日(土)3:00p.m./4月25日(日)3:00p.m.
■会場:Bunkamura オーチャードホール
■主な出演
由良之助:柄本 弾(4/24)、後藤晴雄(4/25)
顔世御前:二階堂由依(4/24)上野水香(4/25)ほか
■入場料(税込)
S=¥9,000 A=¥7,000 B=¥5,000 C=¥4,000 D=¥3,000
エコノミー券=¥2,000
(イープラスのみで2010年3/26(金)より受付。お一人様2枚まで)
学生券=¥1,500
(NBS電話予約、電子チケットぴあのみで2010年3/26(金)より受付。25歳までの学生が対象。公演当日学生券必携)
■ペア割引券
S席ペア割=¥17,000 A席ペア割=¥13,000
*配役は2010年11月20日現在の予定です。出演者の怪我等の理由により変更になる場合がありますので、ご了承ください。正式な配役は公演当日に発表いたします。
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今回の公演では、由良之助、顔世御前に新キャストが登場します。
初日に由良之助を演じるのは、20歳になったばかりの柄本弾(つかもとだん)。
柄本は2008年に東京バレエ団に入団。今年3月の「白鳥の湖」<Stars of tomorrow>でロットバルト役に抜擢され、来年1月の「ラ・シルフィード」(マイ・キャスト公演)では、ジェイムズ役で初主演が決まっています。
その舞台度胸と184センチの長身、大らかで柔らかい踊りが認められ、由良之助に大抜擢された柄本。爽やかな風貌と青年らしい真っ直ぐな視線は、何も知らない若者が現代から過去へとタイムトリップし、さまざまな体験を経て、「義」のために生き、死んでいく「ザ・カブキ」の由良之助にピッタリ重なります。
入団直後の海外公演で四十七士に加わったのが「ザ・カブキ」との最初の"遭遇"だったという柄本は「リハーサルの初日、ほかの作品とはちがう気迫を感じました。実際にはじめて四十七士として舞台に立ったときには鳥肌がたった・・・」と言います。その後の昨年末の東京公演では、アンダースタディとしてリハーサルに臨んでおり、先輩たちの演技を間近に見ながら、由良之助という役についての理解を深めてきました。「由良之助はリーダーとして四十七士を力強く引っ張っていく表現が必要だと思っています。これまで自分の踊りにはなかった強さを出していくのかが課題です」と語る柄本。18年ぶりに誕生する新・由良之助に期待が高まります。
そして、柄本とともに、初日の顔世御前に抜擢されたのは、入団1年目、弱冠17歳の二階堂由依(にかいどうゆい)です。
二階堂は名古屋市出身。3歳でバレエをはじめ、中学卒業後は全寮制のバレエ学校に入学。ワガノワ・バレエ学校出身の先生に認められ、通常の授業以外に特別に夜間個人レッスンを受けるなど、バレエ漬けの2年間を送りました。「今の自分の実力を知りたい」と今年2月の東京バレエ団のオーディションを受験し、見事合格。4月から晴れて東京バレエ団の一員となりました。
二階堂にはじめて会った人は、誰もが彼女のスタイルに釘付けになるはずです。スレンダーな172センチの長身、拳(こぶし)大の小さな顔、そして身体の半分以上あるのではないかというほど長く、まっすぐな足・・・日本人離れ、というより外国人ダンサーでも滅多にいないほどのスタイルの持ち主なのです。
9月の「ラ・バヤデール」でニキヤの影で初舞台を踏み、本日初日を迎える「くるみ割り人形」での"雪の精"が本格的な東京バレエ団のデビューとなる二階堂。この大抜擢に「今はまだリハーサルも始まっていませんし、不安でいっぱいの状態です。いろんな方からのアドバイスをしっかり聞いて研究しながら、練習を重ねて顔世御前になりきれるよう、がんばります」と今の素直な気持ちを語っています。
そして、昨年の第23次海外公演で顔世御前を演じ絶賛された上野水香も、19歳で由良之助に抜擢されて以来、世界各地で喝采を浴びてきた後藤晴雄の磐石のサポートで、日本デビューを果たします。
上野はフィレンツェ、スペイン、ローザンヌなどで顔世御前を5回演じていますが、そのときの印象を含めて、日本でこの役に挑む抱負を次のように語っています。
「ザ・カブキ」は見ていた時も素敵な作品だと思っていましたが、演じてみてその素晴らしさに改めて気づかされました。とくに印象深いのは判官の切腹の場面です。顔世は切腹する塩冶判官の後ろを、桜の枝を持って通り過ぎるのですが、照明で引かれた道筋を歩くうちに気持ちが自然と高まり、夫への思いや悲しみが強く込み上げてくる。その瞬間、自分の身体が宙に浮かんで実態が失われてしまい、顔世の感情や情熱そのものと一体化してしまうような、今思い出しても鳥肌がたつ感覚を毎回体験していました。この物語の中に居られることに幸福を感じますし、この素晴らしさをぜひ多くの方に伝えたいと思います。」
新たな息吹を感じさせる、2010年の「ザ・カブキ」にご期待ください!
東京バレエ団創立45周年記念公演VIII
「くるみ割り人形」(全2幕)
◆主な配役◆
クララ:アリーナ・コジョカル
くるみ割り王子:ヨハン・コボー
【第1幕】
クララの父:柄本武尊
クララの母:井脇幸江
兄フリッツ:青木淳一
くるみ割り人形:氷室友
ドロッセルマイヤー:後藤晴雄
ピエロ:平野玲
コロンビーヌ:高村順子
ムーア人:小笠原亮
ねずみの王様:梅澤紘貴
【第2幕】
スペイン:乾友子-木村和夫
アラビア:西村真由美-柄本弾
中国:佐伯知香-高橋竜太
ロシア:田中結子-松下裕次
フランス:高村順子-吉川留衣-長瀬直義
花のワルツ(ソリスト):
矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子、日比マリア
宮本祐宜、梅澤紘貴、安田峻介、柄本武尊
指揮: デヴィッド・ガーフォース
演奏: 東京ニューシティ管弦楽団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
◆上演時間◆
【第1幕】 19:00 ~ 19:55
休憩 20分
【第2幕】 20:15 ~ 21:05
リハーサル・レポートを挟んだので、ちょっと間が空いてしまいましたが、「ホワイト・シャドウ」のリハーサル写真(3)をお届けします。
「ド・バナと東京バレエ団とのプログラム(Aプロ)では<マニュエル・ルグリの新しき世界>という公演のヴィジョンを見ていただけます。つまり僕がこれからどういった方向に進みたいのかが、Aプロをご覧いなればわかっていただけると思うのです。シルヴィ(・ギエム)との久しぶりの共演ということで、Bプロに注目が集まりがちですが、ぜひ両方のプログラムをご覧いただきたいですね」と語るルグリ。
12月中旬に、ルグリとド・バナは再び来日。「ホワイト・シャドウ」のリハーサルが再開します。
リハーサルの進行状況は、レポート、写真などでお知らせしてまいりますので、ひとつの作品の誕生を見守ってください。
2010年3月に2年ぶり10度目の日本公演を行う、英国ロイヤル・バレエ団の公演日が決定いたしました。前売開始は2010年2月下旬を予定しております。
こちらよりご確認ください>>>
2010年、NBSでは6月に英国ロイヤル・バレエ団、9月に英国ロイヤル・オペラの日本公演を開催いたします。ロイヤル・バレエ団は2年ぶり10度目の、そしてロイヤル・オペラは実に18年ぶりの待望の日本公演が実現することになりました。
この、いうなれば"英国ロイヤル・オペラ・ハウス 日本シーズン"を前に、英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)総支配人のトニー・ホール氏が来日。11月12日(火) に日本のマスコミとの記者懇親会を行いました。
ホール氏は、BBC(英国放送協会)出身。最高経営責任者として、ニュースとスポーツを扱う英国初の24時間ラジオ-BBCニュース24やBBCニュースオンラインを立ち上げるなど、大きな功績を残しました。
2001年にROH総支配人に就任後は公的な助成金に頼っていた経営体質を改善、スポンサーの獲得やファンドレイジング活動を積極的に推進することにより、ROHに経済的な安定をもたらした手腕が高く評価されています。また、新しき観客の創出にも力を注ぎ、これまでのオペラハウスにない発想で、さまざまな取り組みを行っています。
トニー・ホール氏のコメント
2010年はロイヤル・オペラ・ハウスにとってとても重要な年になります。ロイヤル・バレエ団が6月に、そしてロイヤル・オペラは9月に、3ヶ月をおかずしてほぼ同時に日本公演を行うことになるからです。
――英国ロイヤル・バレエ団日本公演について
ロイヤル・バレエ団は今回が10回目の日本公演となりますが、来日するたびに、日本の観客から大変あたたかく迎えられています。
今回の日本公演での上演作品(フレデリック・アシュトン振付「リーズの結婚」、ケネス・マクミンラン振付「うたかたの恋」、「ロミオとジュリエット」) は、ロイヤル・バレエ団のベストなものをご覧いただこうという考えで選んだと芸術監督のモニカ・メイスンが言っています。「うたかたの恋」は他の2作に比べて地味な印象を与えるかもしれませんが、ストーリーテリング的な要素があり、先日行われたロンドンでの公演も大好評でした。また男性ダンサーにとって非 常に難しい作品ですので、我々のバレエ団には優れた男性ダンサーたちがたくさんいることを観ていただきたいというのも、この作品が選ばれた理由のひとつに なっています。
――英国ロイヤル・オペラ18年ぶりの日本公演
ロイヤル・オペラは、18年ぶりということで、いささかご無沙汰しすぎた感はありますが、ロイヤル・バレエ団同様に日本の皆さまに歓迎していただけると信じております。
ロイヤル・オペラは8年前(2001年)より、アントニオ・パッパーノが音楽監督として率いています。私がここで申し上げるまでもなく、彼は真の音楽家であり、オーケストラや合唱からベストな才能を引き出す手腕は広く知られています。
日本公演では、リチャード・エア演出の「椿姫」とロラン・ペリー演出の「マノン」をご覧いただきます。「マノン」は来年6月の初演となりますので、まだ 具体的なことは申し上げられませんが、プランを見た限りでは素晴らしいものになると確信しています。ペリーはROHでこれまでも仕事をしているため、 チームワークが非常によく、カンパニーのことをよく考えてくれているので、私自身も楽しみにしています。
――ロイヤル・オペラ・ハウスの現状
ROHでは、この10年間、これまでバレエやオペラを観たことのない層、年齢層の若い観客に劇場に足を運んでもらうため、さまざまな試みを実行してきました。
そのひとつの例として挙げられるのが、大衆紙サン(Sun)の読者に向けて、7.5ポンド(約1,100円)から20ポンド(約3,000円)程度の(通常より割安な)料金を設定した公演の実施です。サン紙の読者はそれほど収入の高くない人が大半を占めており、企画を発表した当初は、そのような層がオペラやバレエを 観るはずがないという声も多かったのですが、結果的には約9割がはじめてバレエやオペラを観るという方たちでした。
ロイヤル・バレエ団の日本公演で上演する「うたかたの恋」をご覧になった方たちは、上演中は物音ひとつ立てずに舞台に見入り、終わった直後には一瞬水を 打ったように静まり、その後割れんばかりの拍手が起こりました。これをみても、サン紙とのタイアップ公演は大成功を収めたと言えます。
また9月には、こちらも来年ロイヤル・オペラが日本で上演するパッパーノ指揮による「椿姫」を、トラファルガー広場に設置した屋外大スクリーンをはじめ、国内外の劇場でライブ・ビューイングとして上演し、約10万人の観客を集めました。
このように、新しい見せ方によって、多くの方にバレエ、オペラに興味を持ってもらい、劇場に足を運んでもらえることが実証されたと言えます。
日本でも多くの皆さまに、英国ロイヤル・バレエ団、英国ロイヤル・オペラの公演をお楽しみいただきたいと願っています。
英国ロイヤル・バレエ団2010年日本公演
「リーズの結婚」全2幕
(振付:フレデリック・アシュトン/音楽:フェルナンド・エロルド(編曲:ジョン・ランチベリー))
[公演日程]
6月19日(土) 昼・夜、6月20日(日) 昼 - 東京 3回
「うたかたの恋」全3幕
(振付:ケネス・マクミラン/音楽:フランツ・リスト(編曲:ジョン・ランチベリー))
[公演日程]
6月22日(火)、23日(水) 、24日(木) - 東京 3回
「ロミオとジュリエット」全3幕
(振付:ケネス・マクミラン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ)
[公演日程]
6月26日(土) 、27日(日)昼・夜 、28日(月) 、29日(火) - 東京 5回
7月3日(土) - 西宮 1回
英国ロイヤル・オペラ 2010年日本公演
「マノン」[新演出版2010年6月初演]
(作曲:ジュール・マスネ/演出:ロラン・ペリー)
[公演日程]
9月11日(土) 、14日(火)、17日(金) 、20日(月・祝) - 東京 4回
[出演]
アンナ・ネトレプコ
マシュー・ポレンザーニ
「椿姫」
(作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ/演出:リチャード・エア)
[公演日程]
9月12日(日) 、16日(木)、19日(日) 、22日(水) - 東京・横浜 計4回
[出演]
アンジェラ・ゲオルギュー
サイモン・キーンリサイド
ジェームズ・ヴァレンティ
開幕まで、1ヶ月半となったシルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー「聖なる怪物たち」。
初演から3年。世界各地で大きな話題を呼んできたこの作品が、ようやく日本に登場します。
日本公演を待ち望んでいらしたファンの方も多いのではないでしょうか。
実はシルヴィ・ギエムも日本での上演を熱望していた一人。
日本を、そして日本のファンを心から愛するシルヴィは、この作品を日本で上演する機会をずっと待っていたのです。
待望の日本公演あたり、シルヴィからNBSのスタッフに寄せられた希望があります。
それは、「聖なる怪物たち」の中で語られるシルヴィとアクラム・カーンの台詞を事前に翻訳して、ホームページにアップして欲しいということ。
実は「聖なる怪物たち」では、二人の対話が大きな役割を果たしています。
作品の中にはこんな風に台詞が登場します。
英語の台詞ですので、もちろん公演では字幕を用意していますが、字幕に集中するあまり、舞台での二人の表情や動きを見逃して欲しくないとシルヴィは願っているのです。
そこで、シルヴィからの日本の観客の皆さまへのプレゼントともいうべき、「聖なる怪物たち」の台詞対訳テキストを公演情報ページにアップしました。
またダウンロード用のPDFファイルも用意しましたので、プリントしてご活用ください。
対訳テキストを事前にお読みになり、二人の対話の内容を把握していただくことで、より一層舞台を楽しんでいただけるのではないでしょうか。
そして、この舞台をご覧になれば、シルヴィ・ギエムとアクラム・カーンは、一流のダンサーであるとともに、一流のアクターであることが、おわかりいただけるはずです。
>>>「聖なる怪物たち」MOVIE&DIALOGUEページ
◆Dance Cube -チャコット webマガジン
チャコットのwebマガジン-「Dance Cube」にマニュエル・ルグリのインタビューが掲載されています(筆者:佐々木三重子さん)。
このインタビューは、「ホワイト・シャドウ」のリハーサル中に行われたもの。<マニュエル・ルグリの新しき世界>の上演作品、出演者について、また今後の展望など、たっぷりとルグリが語っています。ぜひご覧ください。
>>>Dance Cube
◆シアターテレビジョン(CS放送)
シルヴィ・ギエム、アクラム・カーンのインタビューで綴る特別番組がシアターテレビジョンで放送中です!
2人の出会いから作品制作のプロセス、作品の見所など舞台映像を交えて構成されたこの番組をご覧いただくと、来日公演がますます楽しみになっていただけるはずです。
11月10日 04:05
11月11日 20:00
11月13日 09:25
11月16日 17:00
11月18日 06:00
11月20日 08:30
11月21日 19:30
11月23日 19:00/26:15
11月25日 09:30
11月28日 15:30
11月30日 08:30
お待たせしました! <マニュエル・ルグリの新しき世界>、Aプロ(ルグリ×ド・バナ×東京バレエ団 スーパー・コラボレーション)で上演される、新作「ホワイト・シャドウ」のリハーサル・レポートが届きました。
オーディションから最終日まで、数回にわたって稽古場を取材してくださった市川安紀さんのレポートは公演をご覧になる方必読です!
パリ・オペラ座での華やかなキャリアに一区切りをつけ、新たなステージへと歩み始めたマニュエル・ルグリ。「過去ではなく今を見せたい」と語る彼にとって、振付家パトリック・ド・バナとのクリエーションは、実に刺激的な作業であるようだ。ベジャール・バレエのソリストとして活躍し、ナチョ・デュアト作品の経験も多いド・バナについて、ルグリは「豊かな音楽性と独自の世界観を持つ振付家。とりわけダンサーを生かす術に長けている」と惚れこんでいる様子。となれば、世界初演となる『ホワイト・シャドウ』で、ド・バナがルグリ&東京バレエ団と共にどんな世界を創り上げてくれるのか、期待を抱かずにはいられない。
10月中旬、来日したド・バナとルグリによる女性キャストのオーディションを皮切りに、2週間を超えるリハーサルがスタートした。男性キャストについては8月にオーディション済みだが、「創作の最初の段階からダンサーは私にとって非常に大きな存在。レントゲン写真を撮るように、ダンサーの人間性も見るようなつもりで直感的に選んだ」というド・バナ。振付家にインスピレーションを与える精鋭たちが揃い、全神経を集中させてゼロからの創作に挑んでいく。ソリストはルグリ、ド・バナ、吉岡美佳、上野水香、西村真由美という強力な布陣だ。
ド・バナによれば、ホワイト・シャドウ(白い影)とは「生と死を繰り返しながら、永遠や調和にたどり着いたときに見えてくる世界」だという。うーむ、目指す高みは普遍的かつ深遠なるものらしい。だがそこに到達するには、極めて具体的で緻密な共同作業の積み重ねがあるのみだ。原始の記憶を呼び覚ますパーカッションのリズムから、激しくも叙情あふれる弦楽奏まで、多彩な音色に乗せて、起伏に富んだシーンがひとつひとつ創り上げられていく。
自身が優れたダンサーでもあるド・バナが、ダンサーたちに与えるイマジネーション豊かな指示も印象的だ。「魚が呼吸しているように」「鷲のように力強く」「サメのようにいつも獲物を探し求めて」......等々。テクニックはもとより、ダンサー自身の想像力、研ぎすまされた感性がいかに必要であるかを痛感させられる。「パトリックの要求は高く、彼独特の世界だと思うけれど、私には非常に訴えかけてくる力があるんです。東京バレエ団のダンサーがもともと好奇心旺盛で新しいものに興味を持ってくれることは知っていましたが、初日から本当にハングリーに、この作品の世界に入り込もうとする姿勢に感心しました」と、ルグリ。エネルギーを全開にして振付家に食らいついていくダンサーたちの熱気が、リハーサルスタジオの温度を確実に上げている。このクリエーションがどんな進化を見せていくのか、続きは後編で紹介しよう。
●プロジェクト始動
製作にあたり、最初に脚本家のギーさんからこの作品について簡単な説明がありました。私が着目したのは、このパフォーマンスの主題のひとつでもある、"名声(スターダム)と自由(フリーダム)"、"伝統と現代"、"西洋と東洋"、"強健と柔軟性"といった「相反するものの調和」です。アクラムさんとシルヴィさんは"伝統と現代"を結ぶ貴重なダンサーであり、目まぐるしく変化する時代を駆け抜けている世界観と、舞台を降りた時の平静さの双方を空間に表現できないかと考えはじめました。
また、個人的には、 "Sacred Monsters"(『聖なる怪物たち』)タイトルから、氷河期の素晴らしい恐竜たちが消えてしまったときの危機感のようなものを暗喩的に想像していました。そのため、"いつの時代"、"どこの国"とも言えないような世界を想定しました。
●リハーサルから見つけた舞台装置のイメージ
製作期間は3ヶ月。最初アクラムさんとシルヴィさんの練習を見学し、カメラとスケッチブックを手に、できるだけたくさんの彼らのムーヴメントを読み取ろうと努力しました。
アクラムさんのスピーディーな動きは、重力に逆らわずに地球の中心に吸い付けられているように安定しています。一方、シルヴィさんのしなやかで優雅な動きは、重力があたかも存在しないように宙を描く軌跡として記憶に残ります。
その二人が一緒に踊る場面で「ウェーブ・ムーヴメント」と私が呼んでいる振付けがあります。体つきも動きも全く特徴の異なる二人が、二人の間にさまよう重力が解け合うがごとく、波のように連鎖する様々な動作を取り入れている振付です。
その動きをスケッチしていた時に、ある一つのイメージが浮かんできました。反復する波の動きのシークエンスです。波はいったいどうして永遠の続くのか?そのようなプリミティブな問いに答えるような創作過程でした。
●デザインの決定。そして製作作業に・・・
その一方で、どのように彼らが舞台上のスペースを使っているかを把握することは、ダンスの舞台美術を製作する上で非常に大切です。二人の動きの軌跡を邪魔することなく、ひとつの景観として存在する空間とは一体どういうものかを土台に空間デザインを絞っていきました。
そのうえで、二人のダンサーの重力へのアプローチを空間に置き換えてみたいと考えました。彼らの身体能力を見ていると同じ地球上でも重力に対する接し方は様々だといえます。それらの調和された動きは、いかにシンプルであっても、複雑に働く脳からの信号が身体全体に細かく行き届いているように思います。シンプルに見える自然ほど構成は複雑なものではないかという考えです。
何週間かの試行錯誤の後、ようやくひとつのデザインに絞り込むことができました。それは、連鎖的な波のような曲線をもつ壁です。この壁は、二つの異なった世界をツイストしながらつなげるような形をイメージしています。
次に、先ほどのアイデアを持続しながら、何とか素材の重量の軽いものを探しました。3年間世界中をツアーしたこの作品にでは、ツアーの時にセットがどのように運ばれるか考えるのは重要な仕事でした。
具体的なデザインの手法を簡単に説明しますと、二つの壁のプロポーションは、自然界に存在する黄金比として知られるフィボナッチ指数などを参考に、いくつもの異なる大きさの円の接点をつなげ合わせてつくりました。その具体的な創作過程の段階では、重視していた重力への相異なるアプローチの表現方法も劇場空間では多様に表現できる事を再確認しました。
最終的には、二つの異なった世界が繋がる、または引き千切れていく瞬間を凍らせたような緊迫感に、シルビィさんとアクラムさん、そしてライヴで多彩な音楽家たちが息を吹き込きこんでいく舞台を想定しました。照明のミッキー(クントゥ)さんの時を感じさせる空間効果と、(伊藤)景さんのダンサーの動きがくっきりと映える衣装デザインに支えられ、舞台空間全体の視覚効果が仕上がりました。
●「聖なる怪物たち」の開幕、そして日本へ
こうして、3ヶ月かけて創りあげた装置が劇場に届き、セットアップした時のことを今でも思い出します。初演の一週間前のことです。出演者やこの作品のために多くの責任を負って働いている関係者が心配そうに息をひそめています。テクニカル・ディレクターのファビアナさんの協力のもと、私の生み出した舞台空間が立ち上がったとき、そんなみんなの顔に微笑が浮かびました。その時に本当の意味で、初めてプレッシャーを感じたのを覚えています。同時に、私にチャンスを与えてくださった方々の度量の大きさを感じました。
実は、観客がアクラムさんとシルヴィさんのダンスに夢中になっているうちに、舞台空間はふわっと消えてなくなるような環境を想定してみました。観客の皆さんにはこの二人のスター・ダンサーのムーヴメントをはっきり記憶に残していただきたいと願っています。皆様にはどのようにご覧になっていただけるでしょうか?
針生康寄稿(1)はこちら>>>
針生 康 Shizuka HARIU
ダンスを愛するデザイナー。 Scenography and Architecture
東京理科大学院修士課程建築学専攻後、針生承一建築研究所勤務。渡英。ディビッドアドジェイの元で建築アシスタント。2002年より文化庁在外芸術家派遣制度やポーラ美術財団の助成により、ロンドン芸術大学セントラルセントマーチン校にて博士課程前期課程修了。『コンテンポラリーダンスのための舞台美術の研究と実践』その後、ベルギーのローザスダンスカンパニーや、オペラの舞台美術アシスタントを経て、2003年よりフリーランスの舞台美術家として活動。様々なコンテンポラリーダンス作品の舞台美術と照明デザインを手がけている。また、主にベルギーと日本にて建築家Shin Bogdan Hagiwara とコラボレーションにて建築のプロジェクトを開始。現在リーズメトロポリタン大学院(英国)にて博士課程後期修了のための展覧会、ディスレキシアのためのユネスコ パリ本部での展覧会デザイン等準備中。
◆フィガロジャポン11/20号(阪急コミュニケーションズ/11月5日発売)
Actualitéにまもなく開幕する「くるみ割り人形」に主演するアリーナ・コジョカルのインタビューが掲載されました。
2010年2月に上演いたします<マニュエル・ルグリの新しい世界>の公演情報ページを公開いたしました。
ルグリのインタビュー、Bプロ「ルグリと輝ける世界のスターたち」に出演するダンサーのプロフィールも掲載しておりますので、ご覧ください。
◆<マニュエル・ルグリの新しき世界>公演情報はこちら>>>
「ホワイト・シャドウ」のリハーサル写真2回目はこちら。
「ホワイト・シャドウ」の出演者は23人。
マニュエル・ルグリ、パトリック・ド・バナ、吉岡美佳、上野水香、西村真由美のほか、ソリストの男性5名(リハーサルキャストは、松下裕次、氷室友、小笠原亮、宮本祐宜、岡崎隼也)と女性3名(リハーサルキャストは、高木綾、奈良春夏、川島麻実子)、そしてコール・ド・バレエ10名。
ルグリと西村真由美、ド・バナと上野水香、そして、ルグリとド・バナのパ・ド・ドゥなど、それぞれ個性の違う13景で構成される予定です。
<マニュエル・ルグリの新しき世界>の公演概要詳細が決定いたしましたので、お知らせいたします。
<マニュエル・ルグリの新しき世界>
Aプロ
ルグリ×ド・バナ×東京バレエ団 スーパーコラボレーション[新作初演]
【公演日時】
2010年2月3日(水) 7:00p.m.
2010年2月4日(木) 7:00p.m.
【上演作品】
「ザ・ピクチャー・オブ...」
振付:パトリック・ド・バナ 音楽:ヘンリー・パーセル
出演:マニュエル・ルグリ
「クリアチュア」
振付:パトリック・ド・バナ
音楽:デム・トリオ(トルコの伝統音楽)、マジード・ハラジ、ダファー・ヨーゼフ
出演:オレリー・デュポン、フリーデマン・フォーゲル
ほか東京バレエ団
「ホワイト・シャドウ」(世界初演)
振付:パトリック・ド・バナ 音楽:アルマン・アマー
出演:マニュエル・ルグリ、パトリック・ド・バナ
吉岡美佳、上野水香、西村真由美、ほか東京バレエ団
Bプロ
ルグリと輝ける世界のスターたち
【公演日】
2010年2月6日(土) 6:00 p.m.
2010年2月7日(日) 1:30 p.m.
2010年2月8日(月) 6:30 p.m.
2010年2月9日(火) 6:30 p.m.
【出演者】
マニュエル・ルグリ
シルヴィ・ギエム
アニエス・ルテステュ(パリ・オペラ座バレエ団)
オレリー・デュポン(パリ・オペラ座バレエ団)
ヘザー・オグデン(ナショナル・バレエ・オブ・カナダ)
上野水香(東京バレエ団)
ヘレナ・マーティン
パトリック・ド・バナ
フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ団)
ギヨーム・コテ(ナショナル・バレエ・オブ・カナダ)
デヴィッド・ホールバーグ(アメリカン・バレエ・シアター)
【プログラム】
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【会場】 ゆうぽうとホール
【入場料(税込)】
Aプロ S=¥14,000 A=¥12,000 B=¥9,000 C=¥6,000 D=¥4,000
Bプロ S=¥19,000 A=¥16,000 B=¥13,000 C=¥10,000 D=¥7,000
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エコノミー券=Aプロ:¥ 3,000、Bプロ:¥4,000
(12月25日よりイープラスのみで受付。お一人様2枚まで)
学生券= Aプロ:¥ 3,000、Bプロ:¥4,000
(12月25日よりNBS電話予約のみで受付。25歳までの学生が対象。公演当日、学生証必携)
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◆ペア券 ※NBSチケットセンター電話予約のみで受付
Aプロ S席ペア券=¥27,000 A席ペア券=¥23,000
Bプロ S席ペア券=¥37,000 A席ペア券=¥31,000
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※未就学児童のご入場はお断りします。
【チケット発売】
◆一斉前売開始:2009年11月28日(土) 10:00~
◆NBS WEBチケット先行抽選予約受付(S,A券):11/11(水)10:00~11/16(月)18:00
【お問い合わせ】NBSチケットセンター:03-3791-8888
※「三人姉妹」「アザー・ダンス」はピアノ演奏、他は特別録音によるテープを使用します。
※出演者及び演目は2009年11月3日現在の予定です。出演者の都合、けが等により変更になる場合があります。正式な演目及び配役は公演当日に発表いたします。
演劇情報誌「シアターガイド」に、アクラム・カーンのロング・インタビューが掲載されています。先日お知らせした、Grazia12月号のシルヴィ・ギエムのインタビューと併せてご一読ください。
◆シアターガイド12月号(モーニングデスク/11月2日発売)