インタビュー: 2011年4月アーカイブ

色香のある男性的体躯をいかした雄々しくも優雅な身のこなしで、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)を代表する男性プリンシパルのひとりとして活躍してきたイアン・マッケイ。スコットランド人らしいシャイながらも気さくな人柄で、近年のコレーラ・カンパニーでの経験やBRBの魅力などを誠実に語ってくれた。


---- イアンさんは10年来、カンパニーを代表するダンサーのひとりとしてバレエ団を牽引して来られました。ただ一時的に08年の日本公演後、スペインのコレーラ・カンパニー(アンヘル・コレーラが芸術監督を務めるバレエ団)に移籍されていました。なぜ移籍を決意されたのか、またなぜBRBに戻って来ることにしたのか、簡単に教えてください。

11-04.26_01.jpg僕は英国ロイヤル・バレエ学校在籍時にデヴィッド・ビントリーに直接スカウトされてBRBに入団したんです。ですから、ダンサーとしては学生時代からずっとロイヤル系列の組織のなかで踊ってきたわけです。そんななか自分のキャリアが9年目を迎えたとき、少し外の世界が見たくなった。別にBRBでのキャリアに不満があったわけではありません。ただ自分が尊敬するダンサーのひとりであるアンヘルに声を掛けてもらったとき、ちょっと冒険してみたくなったんです。結果的にスペインで2年間、新しいダンサーと新しいレパートリーに挑戦できたことは僕の大きな財産となりました。ただ正直2年経つころには、BRBの創作環境が恋しくなってもいました。ビントリーという現役振付家のもと、毎年のように新作バレエの創造に立ちあえる。またピーター・ライト、フレデリック・アシュトンといったイギリスの誇る財産演目も踊れる。これは予算の限られたプライベート・カンパニーでは、決して叶わない贅沢です。




---- それでBRBに戻る決意をされたわけですね。

無計画な僕はBRBと「いついつに戻ります」という契約を結んでスペインに去ったわけではなかったので、一度、行き場がなくなってしまったんです。それでとりあえず欧州の主要カンパニーのオーディションを受け始めた。そうしたら運良くデヴィッドに「なんでオーディションなんか受けてるんだ、是非戻ってきてくれ」と声をかけていただきまして、現在にいたるわけです。こうしてBRBに戻ってこられて、僕はとても幸せものです(笑)。


---- 3年前の日本公演で踊られた『美女と野獣』をはじめ、あなたはいままでも『カルミナ・ブラーナ』『エドワード2世』『シンデレラ』『シェイクスピア・スイート』などビントリー作品の多くで主演なさってきました。自身のキャリアの突破口になったと思える、特に印象深いビントリー作品があれば教えてください。

00年にデヴィッドが『アーサー 第一部/第二部』という二つの新作バレエを作ったとき、主要プリンシパルがみな不運にも怪我に見舞われたんです。そのときデヴィッドは、まだ二十歳そこそこの若造であった僕を主役に指名してくれた。「ほかに踊れる奴はいない。だから君が踊れないと困る」といってね(笑)。その作品で実力を発揮できたことで、いまの僕のキャリアは確実に開かれたように思います。以後、ほとんどのビントリー作品で主役を踊らせてもらえるようになりましたから。なので『アーサー』は僕にとって、とても印象深い演目です。


---- あなたはキャリアの早い段階から「パートナーリングの巧さ」で高い評価を得てきました。

僕は背中や腰がダンサーにしてはまっすぐで堅いんで、体がパートナーリングに向いてるんです(笑)。まあそれは冗談ですが、確かに僕はかなり早い段階からパートナーリングを重視してきました。いつでもパ・ド・ドゥでは、相手方の女性がより美しくよりラクに見えるよう務めてきました。もちろん僕だって、英国ロイヤル・バレエ団のセルゲイ・ポルーニンやボリショイ・バレエ団のイワン・ワシーリエフのようにターンやジャンプができないかな、と願ったことはありました。でも結局、それは僕の得意分野ではないんです。その事実にここ数年気付いてからは、より一層自分の得意なことに集中していけるようになりました。


11-04.26_02.jpg---- 日本公演ではピーター・ライト振付『眠れる森の美女』と、フレデリック・アシュトン振付『ダフニスとクロエ』で主演なさいます。二演目の魅力について教えてください。

僕の思うもっとも美しい『眠れる森の美女』が、このライト版です。キャラクター・ロールとして登場するリラの精や、2幕終わりの『Awakening Pas de Deux (目覚めのパ・ド・ドゥ)』など、物語性を豊かにする工夫が随所に施されています。王子がキスをして、姫が目を覚まして、結婚する、という単純なお伽噺では見えて来ない男女の親密さが描かれているように思います。『ダフニスとクロエ』は、数年前のBRB初演時にアンソニー・ダウエルから直接指導を受けました。僕は物語バレエを踊ることが大好きなのですが、この演目ではあえてストーリーを伝えようと思わなくても、ステップを正確にこなすことで話がおのずと見えてくるんです。まさにアシュトンという天才振付家の面目躍如たる奥ゆかしくも美しい演目だと思います。


取材・文/岩城京子(演劇・舞踊ライター)

写真:【上】「眠れる森の美女」(王子)、【下】「ダフニスとクロエ」(ダフニス) (c)Bill Cooper


東京バレエ団「ラ・バヤデール」にソロル役でゲスト出演する、イーゴリ・ゼレンスキー、マシュー・ゴールディングからのコメントをお届けします。
「ラ・バヤデール」はいよいよ明日初日。ゼレンスキー、ゴールディン、東京バレエ団のスタッフとキャストが想いをひとつになってお届けする舞台にご期待ください。


イーゴリ・ゼレンスキー

 今回のお話をいただいたとき、スケジュールが詰まっていたこともあり、最初は少し悩んだのですが、結局お受けすることにしました。強いて理由をあげるとすれば、これも何かの縁なのではないかと思ったのです。(東京バレエ団総監督の)佐々木さんとは、ずっとお仕事をさせていただきたいと思っていたのですが、なかなか機会がなく、今回ようやく実現しました。
 ニキヤの小出領子さんの印象をお話しすることは、まだできません。リハーサルでは全てを出すわけではないですから。私はこれまで何度も「ラ・バヤデール」を踊ってきて作品をよく知っていますし、芸術監督という役職柄、ダンサーのこともよくわかっています。今、言えるのは、領子は非常にプロフェッショナルなダンサーであり、 "本番では全てがうまくいくだろう"ということだけです
 今回、日本に久しぶりに帰ってくることができてとても幸せです。そして日本で舞台に立てることを本当に嬉しく思っています。



マシュー・ゴールディング

 日本が今大変な状況だということはもちろんわかっていました。しかし、日本の舞台で踊れることはよいチャンスだと思いましたし、こうした状況だからこそ経験すべきだと考え、来日することを決めました。
 日本に来るのも、東京バレエ団と共演するのも今回がはじめてですが、相手役の上野水香さんはとても素晴らしいダンサーですし、オランダ国立バレエ団で「ラ・バヤデール」のソロルを踊ったときに指導してくださった、オルガ(・エヴレイノフ)さんがいらっしゃるので、とても心強く思っています。
 日本の観客の皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

中断しておりました英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団主演ダンサーインタビュー連載を再開いたします。
2回目は、「眠れる森の美女」のオーロラ姫、「真夏の夜の夢」のタイターニアで主演する佐久間奈緒。日本での公演を彼女自身もとても楽しみにしてくれています。

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11-04.08Sakuma01.jpg 「褒められても『もっとできると良かった』『次はこうしたい』と答えるので、いつも周囲から『ナオは満足しない』と言われます(笑)。昨日より今日、今日より明日と考えていて、終わりがない。そこが面白いんです」
 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)で02年にプリンシパルに昇進し、来年で10年。英国では観客のみならず専門家筋からも高い評価を受けている佐久間だが、その姿勢は意外なほど謙虚だった。
「まだまだ磨かなければならない部分がたくさんあります。その一方、以前は重点的に稽古して組み立てていた演技面ではここ3〜4年、自然に感情が湧いてくるようになって。最近は振り・動き・カウントをメインに稽古し、あとは本番で生まれる魔法のようなものを、思いきり楽しんでいます。日本と英国の滞在年数がほぼ同じになったのですが、英国では意思表示がはっきりしていてストレートですから、日常生活も舞台での表現に生きているのかもしれません(笑)」

 そんな彼女にとって、BRB来日公演で披露する2作品の一つ、フレデリック・アシュトン振付『真夏の夜の夢』は大いに演じ甲斐のある作品だという。
「コメディーありラブストーリーありで演劇的要素が強く、陽気な作品です。最初に踊ったのは2年ほど前。オリジナル・キャストのアントワネット・シブレーさんとアンソニー・ダウエルさんに直接、ご指導いただきました。アシュトンの動きはとても特徴的。私が踊るのは妖精の女王タイターニアなので、脚さばきは素早く、それでいて地に足がついていないかのような軽やかさを出さなければならない難しさがあります」
 今や世界中で上演されているアシュトン作品だが、英国のダンサーが踊るのを観て「さすがお家芸」と感心することはやはり多い。秘訣は何だろうか?
「普段のクラスでアシュトンそのものをやるわけではないんですが、速い動きのパなどが多く入っているので、間接的に練習になっているのかもしれません。彼の作品はBRBでもたくさんレパートリーに入っていますし、自分が踊る機会も他のダンサーが踊るのを観る機会も多いんです。英国が生んだアシュトン・スタイルを、この機にしっかりとお見せしたいですね!」

11-04.08Sakuma02.jpg 日本公演でのもう1つの演目は『眠れる森の美女』。BRBの前芸術監督ピーター・ライトによる改訂版だ。
「03年に初めて踊った時、ピーター・ライトさんから、テクニックは良いと言っていただいたのですが、同時にそこにこだわり過ぎないようにと注意を受けて。1幕ではオーロラの16歳の誕生日の高揚感や輝きを、2幕では幻想なので王子とも目を合わさず独特の雰囲気を、3幕では格式高いロイヤル・ウェディングで女性として成長した姿を......と、幕毎に異なるオーロラの色合いを出して踊るよう、心がけています」
 また、2幕の終わりには、通常のバージョンにはないパ・ド・ドゥがある点にも注目したい。
「王子がオーロラを起こしたあと、相手の目を見ながらお互いに寄り添うような感じで、7分間のパ・ド・ドゥを踊るんです。結婚式の前に二人が愛を育むさまが伝わる、とても素敵なパ・ド・ドゥなんですよ」

 さて、この日本公演の2作品両方で佐久間のパートナーを務めるのは、ツァオ・チー。長年コンビを組み、同時期に昇進を続けて今に至るプリンシパル同士だ。
「彼も私と同じく満足しないタイプ。だからこそずっと一緒に踊り、高め合うことができたんだと思います。『くるみ割り人形』の金平糖の精と王子で初めて主役をもらった時は、昼休みも惜しんで練習しましたね。13年間、ほぼすべての作品をパートナーとして踊ってきたので、息が合うといった次元を超えるほど、お互いを知り尽くしているんです。音楽的な感性も合いますし、難しい技も安心してできます。私たちが長い歳月をかけて築いたパートナーシップを、ぜひご覧いただきたいですね。バレエ団の日本公演で主役を務める重責を、きちんと果たしたいと考えています」

 今まさに充実期を迎えているといった印象の彼女。その舞台はきっと、止まることなく進み続ける者だけに許される、自信と輝きであふれるに違いない。

11-04.08Sakuma03.JPG
取材・文:高橋彩子(舞踊・演劇ライター)
撮影:引地信彦、Bill Cooper (舞台写真)

-NBSニュースvol.290より転載-



 東日本大震災から3週間が過ぎましたが、いまだ困難な生活を余儀なくされている被災者の方々には、心よりお見舞いを申し上げるとともに、被災地の1日も早い復興を願ってやみません。
 NBSには、3月11日の震災発生より今日まで、世界中の多くのアーティストや歌劇場、オーケストラから、日本へのお見舞い、励ましのメッセージが多数寄せられています。日本が1日も早く元気になることを願う彼らの声を順次、この場で紹介させていただきたいと思います。

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日本の皆様へ

11-04.05GilRoman.jpg私をはじめカンパニー一同が日本を愛し尊敬していることを、
皆様はよくご存じのことと思います。
私の心は皆様と共にあります。

どのようにして私たちがお役に立てるかわかりません。
しかし私たちの想いが皆様とつねに共にあることを忘れないでください。

皆様の勇気に心からの賞賛の意を表します。

ジル・ロマン及びBBLダンサー一同より



Dear friends,

You are aware of the love and respect me and all the company have for your
country, and my heart went out to you.
We don't know how to help, but please know that you are continually in our
thoughts and that we are full of admiration for your courage.

Gil et les danseurs du BBL


photo:Toru Hiraiwa



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