2017年6月アーカイブ

マカロワ版「ラ・バヤデール」(全3幕)


振付・演出:ナタリア・マカロワ(マリウス・プティパ版による)
振付指導:オルガ・エヴレイノフ
装置:ピエール・ルイジ・サマリターニ
衣裳:ヨランダ・ソナベント



◆主な配役◆


ニキヤ(神殿の舞姫):上野水香
ソロル(戦士):ダニエル・カマルゴ
ガムザッティ(ラジャの娘):奈良春夏


ハイ・ブラーミン(大僧正):森川茉央
ラジャ(国王):木村和夫
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):入戸野伊織
アヤ(ガムザッティの召使):矢島まい
ソロルの友人:和田康佑
ブロンズ像:宮川新大


【第1幕】
侍女たちの踊り(ジャンベの踊り): 二瓶加奈子、三雲友里加


パ・ダクシオン:
沖香菜子、岸本夏未、髙浦由美子、中島理子
伝田陽美、三雲友里加、政本絵美、崔 美実
宮川新大、ブラウリオ・アルバレス


【第2幕】
影の王国(ヴァリエーション1):中川美雪
影の王国(ヴァリエーション2):三雲友里加
影の王国(ヴァリエーション3):二瓶加奈子


指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団



◆上演時間◆


第1幕 18:30~19:40


休憩  20分


第2幕 20:00~20:40


休憩  20分


第3幕 21:00~21:20 

タマラ・ロホとアリーナ・コジョカルが昔から大好きだった

 今年のイマージング・ダンサー・アワードで優勝し注目を集めている金原里奈は、まだ19歳の新進気鋭のダンサー。今回の日本公演が、故郷日本におけるプロとしての初舞台となる。
 バレエは5歳の時に始め、小学校5年生の時からコンクールに出場するようになり、将来は海外で踊りたいという夢を膨らませていった金原。2012年のYAGPの日本予選で一位を獲得し、第一志望のモナコの名門バレエ学校、プリンセス・グレース・アカデミーへの奨学金を得た。2015年、最終学年の時にはローザンヌ国際バレエコンクールに出場。プレッシャーの中見事入賞し、ENBに入団を果たした。「入賞も嬉しかったですが、第一志望のENBからコントラクトをいただけたことが何より嬉しかったです。タマラ・ロホさんとアリーナ・コジョカルさんが昔から大好きで、ずっと彼女たちを小さい頃からYouTubeで見て追いかけてきましたし、特にタマラさんは、プリンシパルを務めながら芸術監督をしているという、そんな素晴らしい女性の元で踊りたいという気持ちがあったからです。それからENBは公演数が多いことで有名で、ツアーカンパニーでたくさんチャンスが回ってくるというのも魅力でした」

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イマージング・ダンサー2017より


入団2年目で「くるみ割り人形」全幕主演に大抜擢

 入団1年目から、数々の大きな役に抜擢された金原。それは運だけではなく、毎日の努力の賜物といえるだろう。「公演数が多いだけに怪我人も出ますから、1年目は、自分以外のパートも全部予習したり、習わなくてもいいパートも習っておいたり、いつでも使ってもらえるように努力しましたね」。そんな努力が実って、昨夏のパリ・オペラ座ガルニエ宮での『海賊』では、怪我したダンサーに代わって急遽オダリスクの第二バリエーションを踊る機会を得、公演初日にロホと同じ舞台に立った金原。そして昨年末にはついに、入団2年目のアーティストでありながら『くるみ割り人形』全幕主演に大抜擢された。「日本でもモナコでも、全幕主演というのはしたことがなかったので、そんな初めての主役が、タマラさんやアリーナさん、絵里奈さん、栞さんといった私にとってのスターが踊っている役、というだけで感無量でした。ENBの『くるみ割り人形』はクララが最初から最後まで出ずっぱりで体力的にも大変ですが、そういう舞台を何回も経験することによって、カンパニーの中で成長していくのかなと思っています」

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イマージング・ダンサー2017より


日本公演では大役、『海賊』のギュルナーラを

 もちろん将来はリード・プリンシパルを目標にしているが、それよりも大事なのは、毎日自分のベストを尽くせているかということだという。「これは賛成しない人もいると思うのですが、自分としては疲れてる時が一番追い込む時かな、と思っています。疲れている時に追い込むと強くなるし、常に疲れている状態でどれくらいできるかを考えています。でもそれは怪我につながりやすいし、タマラさんにも"里奈には長いキャリアがあると思うから、ちゃんと身体をケアして、休むことも覚えなさい"とアドバイスいただき、今は追い込みすぎないように、バランスを考えるようになりました。まだまだ難しいですけれど」
 日本で踊る『海賊』のギュルナーラ役は、今年5月のポーランド公演でデビューしたばかり。「回転ばかりで技術が本当に難しいので、前回はそのことで一杯一杯でしたが、日本公演までには演技面も頭の中で整理して、お客様に伝わるようにしたいです。日本公演でこんな大きな役を踊らせてもらえるなんて思っていなかったので、本当に楽しみにしています」
 ENBは、金原がそれまで描いていたバレエ団のイメージを、いい意味で覆すものだったという。「"バレエ団では、年功序列でチャンスが来るし、初めは役がもらえなくても地道に頑張らなきゃいけないともの"と学校時代に聞いていたので、そう覚悟していたのですが、こうして入団してすぐにチャンスをもらえて、クラスでも学校時代のようにみっちりみていただけて・・・。タマラさんにもクラス中にアドバイスをいただいたり、彼女の踊りを見ているだけでもとても勉強になります。彼女の元で踊れているのが本当に幸せです」

(取材、文/實川絢子 ライター)



photos:Laurent Liotardo


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 このたび〈バレエ・スプリーム〉に"英国ロイヤル・バレエ団チーム"の一員として参加予定だったサラ・ラムから、怪我のため公演への参加を断念せざるを得ないとの知らせが届きました。ラムは5月に怪我をしたのち、回復につとめておりましたが、依然、舞台には立てる状態ではないとのことです。
 サラ・ラムに代わって、チーム・リーダーのスティーヴン・マックレーの指名により、Aプロではフランチェスカ・ヘイワードが追加でフェデリコ・ボネッリと組んで踊り、Bプロでは英国ロイヤル・バレエ団のソリスト、金子扶生が新たに参加いたします。これにともない、AプロとBプロの演目が以下のように変更となります。
 サラ・ラムの出演を楽しみにされていた方には大変申し訳ございませんが、なにとぞご了承のほどお願い申し上げます。また、ラムから日本の観客に向けてのメッセージと、マックレーより金子扶生についてのメッセージが届いておりますので、あわせてご一読いただければ幸いです。

                                                             公益財団法人日本舞台芸術振興会

                                                                      

 変更となる演目
Aプロ   『アポロ』 サラ・ラム、フェデリコ・ボネッリ 

     → 『ロミオとジュリエット』よりパ・ド・ドゥ フランチェスカ・ヘイワード、フェデリコ・ボネッリ


Bプロ   『コンチェルト』 サラ・ラム、フェデリコ・ボネッリ 

     → 『白鳥の湖』第2幕よりパ・ド・ドゥ 金子扶生、フェデリコ・ボネッリ


●金子扶生(かねこ ふみ)バイオグラフィー

英国ロイヤル・バレエ団(ソリスト)
 
 大阪の地主薫エコール・ド・バレエで学ぶ。2008年ヴァルナ国際バレエコンクールで金賞、2009年モスクワ国際バレエコンクールで銀賞、2010年にはジャクソン国際バレエコンクールで銀賞を受賞した。
 2010年に地主薫バレエ団に入団。同団では『くるみ割り人形』のクララ、金平糖の精、『ドン・キホーテ』のキトリを踊る。
 2010/2011年のシーズンに英国ロイヤル・バレエ団に入団。2012年にファースト・アーティスト、2013年にソリストに昇進した。
 英国ロイヤル・バレエ団でのおもなレパートリーに、『ドン・キホーテ』のキトリ、キトリの友人、ドリアードの女王、『くるみ割り人形』の金平糖の精、『眠れる森の美女』の森の草地の精、『二羽の鳩』のジプシーの少女、『ジゼル』のモイナ、『ヴィサラ』、『四つの気質』、『白鳥の湖』、『スイート・ヴァイオレット』、『リーメン』、『インフラ』、『メタモルフォシス:ティツィアーノ2012』の「ディアナとアクティオン」、『ウルフ・ワークス』などがある。


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サラ・ラムからのメッセージ

大切なお客様、ファンの皆様へ

素晴らしい友人、同僚たちと共に、皆様の前で踊ることが叶わなくなり、私自身とても悲しく、打ちひしがれております。世界で一番熱狂的にバレエを愛してくださる日本の皆さまのために、近い将来、必ず日本に戻れるようにと望んでおります!


●スティーヴン・マックレーからのメッセージ

画期的なプロジェクト〈バレエ・スプリーム〉に、英国ロイヤル・バレエ団の期待の星、金子扶生が参加することになり、大変嬉しく思っております。すでにロンドンで成功をおさめている扶生が、母国である日本に戻り、彼女の旅のひとときを皆さまと共有できるのは素晴らしいことです。


※表記の演目と出演者は2017年6月26日現在の予定です。やむをえない事情により変更となる場合がございますのであらかじめご了承ください。最終的なプログラムは公演当日に会場にて発表いたします。


会話を楽しむように、舞台でお客さんを巻き込んでいきたい


 『ジゼル』のアルブレヒト、アクラム・カーン振付『ジゼル』のヒラリオンなど、今シーズン立て続けに重要な役に抜擢され注目を集めている猿橋賢は、関西育ちの25歳。役ごとにまったく違う表情を見せて観客の心をつかんでやまない、まさに生粋のエンターテイナーだ。
 もともと「姉のバレエの発表会で同年代の男の子たちが持っていた剣ほしさに始めた」というバレエ。10代の頃は色々な葛藤もあったというが、17歳で奨学金を得てイングリッシュ・ナショナル・バレエスクールに留学してからは、腹をくくってバレエに取り組み、のめり込んでいった。ただし全て順風満帆というわけではなく、卒業を控えた3年生の時にバイク事故にあい、大怪我をしたことも。周囲が就職を決めていく中、焦りながらもリハビリに耐えて半年ほどで復活し、見事ENBへの入団契約を獲得した。 
  昨年にはジュニア・ソリストに昇進し、ロホからも大きく期待されている猿橋。「これからは重要な役を当たり前にやっていけるダンサーにならないといけないなと思っています。以前は大きな役をもらうと一杯一杯になってしまうことが多かったんですが、最近は余裕を持って舞台に立てるようになってきたので、これから自分の違った部分を伸ばしてもっといいダンサーになって、お客さんにより楽しんでもらえるようになりたいですね。そして舞台に立つ時には、自分自身が楽しむことにも重点を置いています。自分は会話が好きなのですが、踊りはある意味、時にお客さんをも巻き込むような会話だと思っていますから」


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『海賊』より


パリ・オペラ座公演の初日でも披露した、"悪い奴だけど憎めない"ランケデム


 そんな演技をこよなく愛する舞台人猿橋にとって、『海賊』のランケデムは、演じていて楽しく、やりがいのある役の一つ。「悪いやつだけど憎めない、おもしろい役どころです。今はもうすんなり役に入っていけますが、初めて踊った時は"ここでコンラッドがこうきたらこういう反応しよう"とか、たくさんのバリエーションを考えてシャワーの中でフル演技していましたね(笑)。やはり市場を仕切っているボスなので、ヘコヘコしてはダメだけれど、海賊のコンラッドに対しては自分より力もあるから、あまり強く出すぎないように...などと色々考えて踊っています。ただあまりにも自分の頭の中で全てを決めてしまうと、振付になってしまって感情が伝わらないと思うと思うので、毎回の舞台で少しずつ変えてみたりもします」。昨年のパリ・オペラ座ガルニエ宮での公演では、初日のタマラ・ロホ主演日に堂々ランケデム役を踊った猿橋。「夢のような経験でした」と振り返るが、これは彼が踊る味のあるランケデムがそれだけ高く評価されていることの証であり、なるべくしてなったことといえるだろう。


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『海賊』より


ENBの躍進ぶりと実力を、日本のお客さまに見て、楽しんでもらいたい


 ロホが監督になって以来、大きな変革を経てきたバレエ団だが、その全てが自分の成長の糧になってきたという猿橋。「今のENBは、将来"あの時のENBはすごかった"と語り継がれるようなカンパニーになってきていると思うので、その中で踊らせてもらっているというのは光栄なことです。そして今回日本で踊るというのは、やはり思い入れのある故郷ですから、自分にとって特別なものがあります。前回2001年の日本公演から、ENBがどれだけ変わったのか、そして、カンパニーに今どれだけの実力があるかを自分の国の観客の皆さんに見せられるのは本当に楽しみです。謙虚に自分のできることを精一杯やって、お客さんに楽しんでもらえるよう、盛り上げていきたいですね」

(取材、文/實川絢子 ライター)


photos:ASH


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ENBの16年ぶりとなる日本公演まであと3週間!
来日を心待ちにしていらっしゃるファンの方も多いのではないでしょうか?
本日、「海賊」のランケデム役、ビルバント役が新たに決定いたしました!
ゲスト・アーティストのブルックリン・マックをはじめ、
主役級のダンサーがずらりとそろった大変贅沢な配役です。          
注目の日本人ソリスト、猿橋賢の名前も!
快進撃をつづけるENBからますます目が離せません!


7月14日(金)18:30開演
メドーラ:タマラ・ロホ
コンラッド:イサック・エルナンデス
アリ:セザール・コラレス
ギュルナーラ:ローレッタ・サマースケールズ
ランケデム:ブルックリン・マック
ビルバント:ヨナ・アコスタ


7月15日(土)14:00開演
メドーラ:ローレッタ・サマースケールズ
コンラッド:ブルックリン・マック
アリ:オシエル・グネオ
ギュルナーラ:金原 里奈
ランケデム:猿橋 賢
ビルバント:フェルナンド・ブッファラ


7月16日(日)14:00開演
メドーラ:タマラ・ロホ
コンラッド:イサック・エルナンデス
アリ:セザール・コラレス
ギュルナーラ:カーチャ・ハニュコワ
ランケデム:ジンハオ・チャン
ビルバント:ヨナ・アコスタ


7月17日(月祝)14:00開演
メドーラ:マリア・コチェトコワ
コンラッド:オシエル・グネオ
アリ:セザール・コラレス
ギュルナーラ:ローレッタ・サマースケールズ
ランケデム:ブルックリン・マック
ビルバント:フェルナンド・ブッファラ


ロイヤルではなく、あえてENBのバレエ学校へ。

 バレエ団最高位のリード・プリンシパルとして長年ENBを牽引してきた高橋絵里奈は、精緻な技術と繊細な演技が魅力の、英国で大人気の日本人バレリーナだ。
 北海道釧路出身で、バレエはもともとやっていた新体操のために始めたという。 小学校高学年の時に、新体操に専念するためにバレエを辞めたところ、母親から「絵里奈の何かが変わってしまった」と言われバレエがかけがえのないものであることに気付き、それからプロを目指して真剣に取り組むようになった。踊りに専念できる環境を求めて、中学卒業とともにイングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールに留学。「オーディションはロイヤル・バレエ学校と両方に合格したのですが、 性格上規模の小さいENBの方が合うんじゃないかという話になって、最終的に決めました。 だからもしロイヤルに行っていたら違う人生になっていたかもしれません。日本に帰ることになっていたかもしれませんし(笑)」

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「コッペリア」より


「眠れる森の美女」で大抜擢、「くるみ割り人形」でプリンシパルに。

 学校を卒業後1996年にENBに入団し、以来人生の半分以上を英国で過ごしてきた高橋。中でも忘れがたい思い出は、 入団してまもなくのまだプリンシパルになっていない頃に、ベテランを差し置いてロイヤル・アルバート・ホールでの『眠れる森の美女』の初日の主役に大抜擢されたこと、そして2000年『くるみ割り人形』主演後にプリンシパルに任命されたことだ。「カーテンコール後、これから絵里奈をプリンシパルにすると監督に皆の前で言われて、それはもう、言葉にできないほどの感激と感動でした。中学を卒業してロンドンに来ることになり、長い間両親に遠くからサポートしてもらってきて、 こちらでプロとして成功したい、という思いでずっとやってきましたから」。 プリンシパルとなって17年、常に向上したいという思いは今も変わらない。その勉強熱心さとバレエに対する真摯な姿勢は、他の団員たちからも大きな尊敬を集めている。「ツアーが多いせいもあるかもしれませんが、ENBには大きな家族のような雰囲気があります。誰かが初めての役に取り組むときは皆でサポートしますし、他のバレエ団で客演しても、帰ってくるとなんとなく家に帰ってきたような気がするんです」

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「コッペリア」より

ストーリーのあるバレエで自分の思いを表現したい

 特にクラシック作品での評価が高く、ENBのほとんどの舞台で主演を努めてきた高橋。コミカルな演技もとても自然で、『コッペリア』のスワニルダ役はまさにはまり役だ。「人間と人形の違いを、お客様にすぐにわかってもらうにはどうしたらいいのか、初めて踊った時には悩みました。今でも、お客さんにもすぐ見てわかるように、一幕と二幕の違いをはっきりさせることを目指して踊っています。やはり私はストーリーのあるバレエで、自分の思いを踊りで表現するが好きなので、踊っていてもとても楽しい役です」
  今年2月に、夫であるソリストのジェームズ・ストリーターとの間に第一子が誕生したばかりで、今回の日本公演での『コッペリア』が産休後の本格的な舞台復帰となる予定。初めての日本となる息子を連れて、久しぶりに母国で踊れることを楽しみにしている。「小さい頃から踊りが好きでやってきたので、今でもその思いを忘れずに、心から踊りたいと思っています」

(取材・文/實川絢子 ライター)

photo: Laurent Liotardo

僕は踊るために生まれてきた

 わずか20歳にして世界的スターのカリスマを感じさせ 、公演の先々でセンセーションを起こしているセザール・コラレス。キューバ人の両親はともにバレエダンサーで、カナダとキューバを行き来しながら育った。
「劇場かスタジオでほとんどの時間を過ごしてきたので、1歳位の時からごく自然に、ラジオから流れてくる音楽に合わせて、両親の真似をして踊るようになりました。だから12歳で母親から"本気でバレエダンサーになりたい?"と聞かれた時、迷いはありませんでした。僕は踊るためにこの世に生まれてきたんだと信じていましたから」
 12歳でバレエ学校に入学した時、すでに周りの大人のダンサーの見よう見まねで、ダブル・トゥール・ザンレールなどの高度な技をマスターしていたというコラレス。周囲は彼がそれまでバレエを正式に習ったことがないと聞いて驚愕したという。「学校に入って生まれて初めて、5番ポジション等の基礎練習をすることになって、普通のバレエ学校の生徒とは逆の順番でバレエを習得したんです。オススメはしないけれど(笑)」。


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「海賊」でアリを踊るコラレス



若手にチャンスを与えるENBを選んだ

 13歳の時には、歌や演技は未経験だったにもかかわらず、オーディションでミュージカル『ビリー・エリオット』の主役の座を射止めた。1年半の間、バレエの訓練がおろそかになるのを心配した母親からバレエの個人特訓を受けつつ、夜はミュージカルに週に数回舞台に出演するという多忙な日々を過ごし、通常のバレエ学校の生徒とは比べ物にならない量の舞台経験を積んだ。その後両親の元でバレエに専念し、2013年のローザンヌ国際バレエコンクールで、生まれて初めてクラシックのバリエーションを舞台で踊り入賞。もっとバレエを極めたいと翌年17歳の時に挑戦したユース・アメリカ・グランプリではグランプリを受賞し、世界中のバレエ団からオファーが殺到した。「ENBを選んだのは、優れた指導陣がいることと、タマラが才能ある若手にどんどんチャンスを与えていることが理由です。実際に入団後すぐにプリンシパルの役をもらうことができ、今の僕にベストな決断でした」



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「海賊」のビルバンド役


バリシニコフやヌレエフばりの『海賊』のアリを

『海賊』のアリ役は、そんな若さとエネルギーの塊のようなコラレスのためにあるような役。「大好きなバリシニコフやヌレエフが踊るアリをビデオで何度も見ました。それにバレエ団の指導陣には伝説的なアリを踊ったムハメドフもいます。彼らの"いいとこどり"をして、さらに僕なりの動物的な野性味を加えて踊りたいと思っています。彼は奴隷で普段は抑圧されていて、一幕こそ静かにしていますが、二幕のソロではそれがいきなり爆発するんです!」
 一方『コッペリア』のフランツ役は、今回の日本公演が役デビューとなる。「喜怒哀楽の様々な感情を表現できるこの役は、今の年齢の僕にぴったり。技術的にもエキサイティングなので、楽しんで踊れるはずです!」。日本に行くのは今回が初めてというコラレス。「僕の野性味あふれる踊りを楽しみにしていてください! 」

(取材・文/實川絢子 ライター)


photos: Laurent Liotardo

■予定される演目
Aプロ 
「魔笛」
振付:モーリス・ベジャール 音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

Bプロ 
「ボレロ」 
振付:モーリス・ベジャール 音楽:モーリス・ラヴェル 
「ピアフ」 
振付:モーリス・ベジャール 音楽:エディット・ピアフ
「アニマ・ブルース」 
振付:ジル・ロマン 音楽:シティパーカッション(ティエリー・ホーシュテッター&jB メイアー)
「兄弟」 
振付:ジル・ロマン 音楽:モーリス・ラヴェル、エリック・サティ、吉田兄弟、美空ひばり、シティパーカッション(ティエリー・ホーシュテッター&jB メイアー)


連結smal_l400_04-06BBL_Magic Flute_no.0711(photo_Kiyonori Hasegawa).jpg
(左)「魔笛」photo:Kiyonori Hasegawa、(右)「アニマ・ブルース」photo:Francette Levieux


■公演日程:
Aプロ 「魔笛」
11月17日(金) 18:30
11月18日(土) 14:00
11月19日(日) 14:00

Bプロ 「ボレロ」「ピアフ」「アニマ・ブルース」「兄弟」
11月25日(土) 13:30
11月25日(土) 18:00
11月26日(日) 14:00

■公演会場:
東京文化会館(上野)

■入場料金(税込):
S=\17,000 A=\15,000 B=\13,000 C=\10,000 D=\8,000 E=\6,000 

■NBS WEBチケット先行発売[座席選択S~D]:7月18日(火)21:00~7日25日(火)18:00

■一斉発売:8月5日(土)10:00

■チケットのお申込み/お問合せ
NBSチケットセンター 03-3791-8888(平日10:00~18:00、土曜10:00~13:00)

■主催:公益財団法人日本舞台芸術振興会/日本経済新聞社 後援:スイス大使館

※未就学児のご入場はお断りいたします。

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