2017年1月アーカイブ

エトワール任命はしっかりと仕事をした結果。誇りに感じています

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  昨年12月31日、『白鳥の湖』でオデット/オディールを初役で踊り、レオノール・ボラックはエトワールに任命された。この晩予定されていたエトワール二人が降板したことにより、オディール/オデットの代役だったレオノールがマチアス・エイマンと踊ることが発表されて以来、彼女がこの晩に任命されるのではないかという噂が立っていて...そしてそれが現実となったのだ。

「プルミエール・ダンサーがエトワールと踊る、というとそうした噂が立つものなので、私は耳を貸さないようにしていました。簡単ではないこの初役にベストを尽くし、最高の舞台を見せることが私には大切なことなので...。『白鳥の湖』はテクニック面も演技面も難しい作品です。それだけにやりがいのある仕事でした。その結果の任命。しっかりと仕事をしたといえる作品で任命されたということを、とても誇りに感じています」

 公演前、レオノールのリハーサルを見たオレリー・デュポン芸術監督からは、白鳥オデットは王妃であることを最初の登場から観客にわからせる必要がある、というアドヴァイスがあった。怯えて下ばかり向いていず、白鳥のポーズを威厳をもってすることといった、具体的な指導を彼女はもらったそうだ。

「任命が12月31日というのは少し象徴的...というのも、オレリーもエトワールに任命されたのも12月31日。素晴らしい継承がここにあると感じています」


small_600-_Lテゥonore Baulac - Le Lac des cygnes - Photo Svetlana Loboff -022.jpg
エフィーとリュセイオン──日本公演で演じる、二つの正反対の役

 3月の来日ツアーはプルミエール・ダンスーズ時代に配役がきまったものなので、ドゥミ・ソリスト役なのだが、とても興味深い2つの役を踊る。『ラ・シルフィード』のエフィー、そして『ダフニスとクロエ』のリュセイオンだ。

「エフィーは初役です。これは幼馴染のジェームスに首ったけの田舎の娘で、可愛いらしいけどあまり賢い女性ではなくて...彼がシルフィードのほうに惹かれるのは当然だと観客が思うように役創りをするつもりです。簡単ではないですけど。シルフィード役を踊るのはミリアム・ウルド=ブラーム。彼女と私は外見的に似ています。ジェームスの片側に彼の想像が生んだ非現実の女性シルフィードがいて、もう片側には現実の婚約者エフィーがいるというパ・ド・ドゥは、似ている私たちが踊ることで女性の二重性のようなものを見せられることになるので、これは面白い配役ですね」

 一方リュセイオンはエフィーとは正反対。主役のクロエを差し置いてダフニスを誘惑する毒のある年上の女性役である。舞台に登場の瞬間から、自信にあふれる女性であることを見せなければならない。

「どんな役でも舞台の最初の一歩はちょっと疑問をもってしまうものなのだけど、この役においてそれはまったく許されません。それだけでも難しいことなのに、クロエ役を踊るのがオレリー・デュポンなんですよ!」

 この作品の初演時にすでにリュセイオン役を踊っているレオノール。エトワールとしての自信と誇りで、素晴らしい舞台を見せることは間違いない。彼女が来日を楽しみにしているように、観客も彼女の来日を楽しみに待とう。


インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)

Photo:James Bort/OnP(ポートレート)、Photo Svetlana Loboff(舞台写真)







西日本新聞(2017年1月22日)読書館に掲載された、評論家梁木靖弘氏よる書評をご紹介します。


孤独な祝祭 カバー表1画像300.jpg これは稀有なインプレサリオの伝記である。このイタリア語を興行主、団長などと訳してみたところで、胡散臭くなるばかりだ。芸術家ではないが、舞台製作のすべてに権力と責任を持つ大物を西欧ではインプレサリオと呼ぶ。日本でそれに値する人物がいるとすれば、佐々木忠次だけだろう。
 ベジャールの振付や、クライバーの指揮に飛びつく愛好家でも、来日公演を実現させたのが誰かを知る人は少ない。筆者も例外ではない。40年前、興奮して見た二十世紀バレエ団の東京公演。それも佐々木だったと本書で知った。
 彼は海外から一流のオペラ・バレエを招聘しただけではない。主宰者として東京バレエ団を世界で絶賛されるカンパニーに育て上げた。また「ザ・カブキ」など傑出した創作バレエを作った。求めていた舞台は「人々が熱狂し、陶酔し、心躍らせる歓喜の場、祝祭空間としての劇場だった」。そのためには妥協しなかった。情熱はどこから来るのか。本書の最終章は「怒りの人」と題されているが、佐々木の情熱は、日本という国家に対する怒りに比例するようだ。彼の驚嘆すべき業績をいまだに理解も評価もしないのが日本である。彼はそれがわかっていたから、挑戦するように美の世界を構築しようとしたのではないか。
 それを象徴するのが、東京バレエ団の社屋。ギリシャ風の柱や装飾的な欄干のバルコニーを持つ「ヨーロッパ風建築」だが、「舞台のセットが組まれたかのような違和感」があると著者は言う。ただちに連想されるのはロココ趣味の三島由紀夫邸である。「佐々木にとっては、舞台世界こそが究極の美の世界であり、それを現実の部屋に取りこむことはまさに夢でさえあった」。彼の美意識は、三島に似ている。ベジャールが佐々木のために作ったバレエ「M」が、三島その人をテーマにしていたのもうなずける。
 白鳥の例を思い出す。佐々木忠次の生涯は、水中で必死にもがき続ける脚だった。そのおかげで水上に美しい白鳥を見ることができたのだと、思わずにはいられない。

(評論家 梁木靖弘)

ロビンズを踊るのはとても快適なの!
 
 12月のオペラ・ガルニエの公演〈イリ・キリアン〉中、『ベラ・フィギュラ』と『Tar and Feathers』でドロテは大活躍をみせた。キリアン作品を踊りたい! と前々から願っていただけに、途中風邪で5日間も寝込んでしまったものの、喜びでいっぱいだ。

「イリ・キリアンと仕事をするって、これは素晴らしいこと。リハーサルで動きを説明するのに、彼は信じられないようなフレーズを発するのよ。例えばだけど、(体の前に横向きに平行においた両腕の間隔を徐々に縮めて行きながら)、ほら、世界が終わりだ、すべてが消滅する...というように。こうした強烈なイメージを与えられると精神的に語りかけてくることが大きくて、想像力が満たされます。精神面での手がかりを思いながら私たちは踊ることになります。クラシック作品のような物語なしに、彼は観客に精神的な旅をさせようと努めているのだと思います。彼の作品を見るたびに教会にいたり、ミサに立ち会っているような気がしたのがなぜなのか...今こうしたことが理解できるようになりました」

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 クリスマスも大晦日も劇場で過ごしたドロテ。来日公演のリハーサル開始前の冬休みは、昨年同様ドバイで開催されるガラに大勢の若いダンサーたちと共に参加する。ユーゴ・マルシャンとヌレエフ作品のパ・ド・ドゥを2つ踊るそうだ。これは来日ツアーで踊る『テーマとヴァリエーション』に備え、クラシックのテクニックの準備も兼ねてのセレクションとか。バランシンのこの作品を踊るのは、ドロテには東京のグラン・ガラが始めてとなる。彼女を配役した芸術監督オレリー・デュポンは、「ドロテは素晴らしいテクニックの持ち主です。これを踊る彼女のエネルギーにはパートナーも乗せられるはずよ」と。その期待に応えるのは、間違いないだろう。

 グラン・ガラではジョジュア・オファルトと共に『アザー・ダンス』も踊る。オペラ座ですでに『イン・ザ・ナイト』『コンサート』などに配役され、ロビンズ作品の常連のようなドロテだが、こちらも来日ツアーが初舞台となる。
「これが踊れることになって、すごく嬉しいわ。踊る二人の間でちょっとした遊びがあるので、パートナーとの間に通うあうものが必要ね。その点パートナーのジョジュアとは、過去にガラを含めて舞台を何度も共にしているので...。ロビンズの作品は音楽がいいし、どことなくジャズっぽい感じも好き。踊るのがとっても快適です。私、コンクールで自由曲にロビンスを踊るごとに昇級できたのよ。ロビンズの作品って、踊り手のパーソナリティーが現れる...裸にされる感じがあって...。シンプルなだけに難しいんですよ、ロビンズを踊るというのは」

 来日ツアーから戻るや、彼女に『真夏の夜の夢』の公演がオペラ・ガルニエで待っている。そしてオペラ座外の活動としては、短編映画フェスティバルに出品される作品の撮影が春にスタート。彼女はオペラ座のダンサー役で、それに向けて演劇の指導も受けているそうで、いよいよ女優デビューである。フォロアーが40Kを超えたインスタグラムには、愛らしい長女リリーの姿も時々登場するようになり、私生活の充実ぶりもうかがわせる彼女。日本ではすでにおなじみのドロテではあるが、活動の場を広げ、内面的にも成熟を続けているエトワールダンサーとして、新たなる輝きで観客に喜びと驚きを与えてくれるだろう。


インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


Photo:James Bort/OnP(ポートレート)



 このたびパリ・オペラ座バレエ団公演〈グラン・ガラ〉の出演者に変更が生じました。パリ・オペラ座バレエ団より、ローラ・エッケがやむを得ない個人的な事情により日本公演に参加できなくなったという連絡が入りました。
 エッケが出演予定だった3月9日と11日18:30の「テーマとヴァリエーション」には、エッケに代わりましてドロテ・ジルベールが出演いたします。またこの変更に伴い、ジルベールが出演予定だった3月11日13:30の「テーマとヴァリエーション」にはヴァランティーヌ・コラサントが出演いたします。パートナーの男性の変更はございません。
 当初の配役での公演を楽しみにしていた方々には大変申し訳ございませんが、以上の変更につき、なにとぞご理解を賜りますようお願い申し上げます。


〈グラン・ガラ〉「テーマとヴァリエーション」

3月9日(木)18:30 
ローラ・エッケ/マチュー・ガニオ → ドロテ・ジルベール/ マチュー・ガニオ
3月11日(土)13:30 
ドロテ・ジルベール/ジョシュア・オファルト → ヴァランティーヌ・コラサント/ ジョシュア・オファルト
3月11日(土)18:30 
ローラ・エッケ /マチュー・ガニオ → ドロテ・ジルベール / マチュー・ガニオ

NBS創立35周年記念特別企画!クリスマス×お年玉キャンペーン
パリ・オペラ座バレエ団日本公演ご購入者様限定!! 特別イベントご招待&スペシャルグッズプレゼント

NBSは本年創立35周年を迎えました。
これも長年にわたってご支援くださったお客様のおかげと、スタッフ一同心より御礼申し上げます。
そこで、この度NBS会員の皆様に感謝の気持ちをこめ、クリスマス×お年玉キャンペーンを実施することになりました。
ぜひこの機会をご利用いただき、至高の舞台芸術を心ゆくまでご堪能ください!

NBS創立35周年記念特別企画!クリスマス×お年玉キャンペーン

対象公演 パリ・オペラ座バレエ団2017年日本公演 全公演
キャンペーン期間 発売日(先行販売含む)~2017年1月14日(土)
対象 上記期間内にNBS WEBチケット、またはNBSチケットセンターの電話予約にてパリ・オペラ座バレエ団公演のS、A席をご購入いただいた方に特別プレゼントを進呈!
(バレエの祭典会員様は追加券をご購入いただいた方が対象となります)
当選された方には2017年1月31日までに郵送にてお知らせいたします。
賞品

エトワール賞-公演終演後、プライベート・バックステージツアーにご招待!!
+ダンサーの直筆サイン入りプログラム&ポスター
5名様


プルミエ賞-パリ・オペラ座バレエ団「ラ・シルフィード」
パリ現地の公演プログラム
5名様


スジェ賞-パリ・オペラ座特製はちみつ
※パリ・オペラ座ガルニエ宮の屋上で養蜂されている蜂からとれたはちみつです。
15名様


コリフェ賞-パリ・オペラ座 特製キーホルダー
35名様


カドリーユ賞-パリ・オペラ座 2017年来日記念特製ポストカード(非売品)
100名様


オレリー特別賞-オレリー・デュポン直筆サイン入り公演プログラム
+オレリー・デュポン引退公演「マノン」DVD
3名様

※写真はイメージです。実際とは異なる場合があります。

パリ・オペラ座では観られない!!
オレリー・デュポン特別出演!!

「ダフニスとクロエ」をエルヴェという最高のパートナーと踊ります。

オレリーのインタビューはこちら!
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 12月31日パリ・オペラ座バスティーユで上演された「白鳥の湖」で、新エトワールがもう一人誕生しました! プルミエール・ダンスーズだったレオノール・ボラックがオデット/オディールを踊って成功を収め、終演後にエトワールに任命されました。
 ボラックは当初、このオデット/オディール役での出演は予定されていませんでしたが、公演期間中に代役としての出演が決まり、その舞台をみごとにダンサー最高位へのステップに変えたという、3日前のジェルマン・ルーヴェの任命にも劣らぬ劇的な昇進。オレリー・デュポン芸術監督のもと若きエトワールが2名出そろい、日本公演への布石も万端といったところでしょうか。
 ボラックは、3月の日本公演で「ラ・シルフィード」エフィーと、〈グラン・ガラ〉の「ダフニスとクロエ」リュセイオンを踊る予定です。どうぞご期待ください!

レオノール・ボラックunnamed_size600.jpg
Photo:Michel Lidvac


「ラ・シルフィード」の概要はこちら>>


〈グラン・ガラ〉の概要はこちら>>

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