2016年8月アーカイブ

 初演から30年を迎えるモーリス・ベジャール振付「ザ・カブキ」のプロモーション映像が出来上がりました。



 

 日本人以上に日本文化に造詣が深かった20世紀の巨匠ベジャールが、歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」を元に「ザ・カブキ」を創作したのは1986年。以来、パリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、ボリショイ劇場、マリインスキー劇場などの著名オペラハウスをはじめ、15か国27都市でおよそ40万人もの人々を感動させた傑作です。そのハイライトを映像でお楽しみください。
 
small_TheKabuki13-no.0341Tsukamoto-Nara-Umezawa(photo_Kiyonori Hasegawa).jpgsmall_TheKabuki13-no.0808(photo_Kiyonori Hasegawa).jpg

photo:Kiyonori Hasegawa

■ 公演概要はこちらより
 
 
 

ミラノ・スカラ座バレエ団2016年日本公演
「ドン・キホーテ」(9/22、9/24夜)キトリ役変更のお知らせ

9月22日(木・祝)、および24日(土)夜にキトリ役を演じる予定だったポリーナ・セミオノワは、妊娠のため本公演への参加が不可能となりました。スカラ座は即座にセミオノワに代わるキトリ役のダンサーを探し始めましたが、バカンスシーズンをまたいだこともあって、ダンサー個人およびカンパニー側との連絡・調整が難航していました。このたびようやく芸術監督のビゴンゼッティの意向にそったシュツットガルト・バレエ団のエリサ・バデネスと調整がつきましたので、ここに発表させていただく次第です。
バデネスは新鋭ながら、シュツットガルトでもっとも勢いがあり、昨年の日本公演でも活躍したスターです。セミオノワのキトリ役を楽しみにされていた方々にはまことに申し訳ございませんが、以上の変更につき、なにとぞご理解のほどお願い申し上げます。


■ ミラノ・スカラ座バレエ団「ドン・キホーテ」9/22(木・祝)14:00、9/24(土)18:00
[キトリ役] ポリーナ・セミオノワ → エリサ・バデネスに変更


公益財団法人日本舞台芸術振興会



エリサ・バデネス Elisa Badenes

15-11Stuttgart_Elisa Badenes_KH5_4583(photo_Kiyonori Hasegawa).jpg今ヨーロッパでもっとも勢いがあり、頭角を現している若きスター。スペイン、バレンシア生まれ。2008年ローザンヌ国際コンクールを契機に英国ロイヤル・バレエ学校で学ぶ。09年にシュツットガルト・バレエ団研修生となり、10年に入団。13年にプリンシパルに昇進した。ユース・アメリカ・グランプリで金賞受賞。シュツットガルト・バレエ団のリード・アンダーソン監督が「彼女の才能は留まるところがない」と絶賛する逸材で、2015年の日本公演でも「ロミオとジュリエット」「オネーギン」両作に主演、ガラでは躍動感あふれる「ドン・キホーテ」パ・ド・ドゥで魅了した。



photo:Kiyonori Hasegawa

子どものためのバレエ
「ドン・キホーテの夢」


◆主な配役◆


キトリ/ドゥルシネア姫:川島麻実子
バジル:秋元康臣
ドン・キホーテ:木村和夫
サンチョ・パンサ: 氷室 友
ガマーシュ:岡崎隼也
ロレンツォ:永田雄大
エスパーダ:岸本秀雄
キューピッド: 森田理紗


ロシナンテ:山田眞央、八幡恵介
お嫁さん馬:中村瑛人、山本達史
二人のキトリの友人:金子仁美、中川美雪
闘牛士):
森川茉央、杉山優一、吉田蓮、入戸野伊織、和田康佑、安楽 葵

街の女の子:
有村玲音、植田葵仁加、岡田空、吉次ありす
街の男の子:
家田まひな、北川大聖、寺尾凛人、皆川心太郎
キッチンボーイズ: 遠藤羚嵐、大野麻州、利田太一、林桃ノ介
小さいキューピッドたち:
荒川日和、石川茉莉花、遠藤佳純、笠畑里紗
嶋尾志保、立花柚乃、千葉ひかる、中村芽衣子


◆上演時間◆

第1幕 14:30〜15:20 

休憩 15分

第2幕 15:35〜16:00


子どものためのバレエ
「ドン・キホーテの夢」


◆主な配役◆


キトリ/ドゥルシネア姫:沖香菜子
バジル:宮川新大
ドン・キホーテ:安田峻介
サンチョ・パンサ: 中村瑛人
ガマーシュ:山田眞央
ロレンツォ:竹本悠一郎
エスパーダ:森川茉央
キューピッド:足立真里亜


ロシナンテ馬:河上知輝、樋口祐輝
お嫁さん馬:海田一成、高橋慈生
二人のキトリの友人:岸本夏未、秋山 瑛
闘牛士:杉山優一、松野乃知、岸本秀雄、吉田蓮、宮崎大樹、古道貴大

街の女の子:家田まひな、植田葵仁加、岡田空、吉次ありす
街の男の子:有村玲音、北川大聖、寺尾凛人、皆川心太郎
キッチンボーイズ: 遠藤羚嵐、大野麻州、利田太一、林桃ノ介
小さいキューピッドたち:
荒川日和、石川茉莉花、遠藤佳純、笠畑里紗
嶋尾志保、立花柚乃、千葉ひかる、中村芽衣子


◆上演時間◆

第1幕 11:30〜12:20

休憩 15分

第2幕 12:35〜13:00

<夏祭りガラ>

◆主な配役◆

「パキータ」
振付:マリウス・プティパ   音楽:レオン・ミンクス

プリンシパル:三雲友里加、松野乃知
ヴァリエーション1:金子仁美
ヴァリエーション2:秋山 瑛
ヴァリエーション3:二瓶加奈子
ソリスト:岸本夏未、矢島まい、小川ふみ、金子仁美、中川美雪、川淵 瞳


「スプリング・アンド・フォール」
振付:ジョン・ノイマイヤー   音楽:アントニン・ドヴォルザーク

川島麻実子-柄本 弾
吉川留衣、二瓶加奈子、矢島まい、小川ふみ、金子仁美、中川美雪
宮川新大、森川茉央、安田峻介、吉田 蓮、入戸野伊織、中村祐司、和田康佑、安楽 葵、樋口祐輝


「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール  音楽:モーリス・ラヴェル

上野水香
杉山優一、岸本秀雄、森川茉央、永田雄大


◆上演時間◆

パキータ 13:00〜13:30

休憩  15分

スプリング・アンド・フォール 13:45〜14:15

休憩  15分

ボレロ 14:30-14:50

<夏祭りガラ>

◆主な配役◆

「パキータ」
振付:マリウス・プティパ   音楽:レオン・ミンクス

プリンシパル:奈良春夏、宮川新大
ヴァリエーション1:中川美雪
ヴァリエーション2:伝田陽美
ヴァリエーション3:崔 美実
ソリスト:吉川留依、伝田陽美、二瓶加奈子、政本絵美、加藤くるみ、崔 美実


「スプリング・アンド・フォール」
振付:ジョン・ノイマイヤー   音楽:アントニン・ドヴォルザーク

沖香菜子-秋元康臣
渡辺理恵、岸本夏未、三雲友里加、金子仁美、川淵 瞳、髙浦由美子
杉山優一、岸本秀雄、岡崎隼也、松野乃知、安田峻介、中村祐司、和田康佑、安楽 葵、樋口祐輝


「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール  音楽:モーリス・ラヴェル

柄本 弾
杉山優一、岸本秀雄、森川茉央、永田雄大


◆上演時間◆

パキータ 19:00〜19:30

休憩  15分

スプリング・アンド・フォール 19:45〜20:15

休憩 15分

ボレロ 20:30〜20:50


 夏の〈バレエの王子さま〉公演で、アーティストとしてのさまざまな経験に基づく、風格を増した舞台を披露してくれたレオニード・サラファーノフ。ミハイロフスキー劇場バレエに所属しながら世界中で活躍しており、ことにミラノ・スカラ座バレエ団には若い時から定期的に客演。カンパニーにもレパートリーにも親しんでいる。その彼が9月のスカラ座バレエ団公演への意気込みや見どころを語ってくれた。
 
(インタビュー・文/斎藤慶子 ロシアバレエ研究)

small_300-200SARAFANOV_LEONID E OLESIA 306.jpg

「僕はスカラ座バレエ団に育てられ、ともに成長できた」(サラファーノフ)


─ ヌレエフ版「ドン・キホーテ」のバジルを踊る醍醐味についておしえてください。

 マリインスキー劇場やミハイロフスキー劇場、ボリショイ劇場でも「ドン・キホーテ」は上演されていますが、それらよりもさらに技術的に難しいのがヌレエフ版です。特に1幕の登場場面が難しいのですが、その後も続いてたくさんの踊りがあります。おかげでこの作品を踊るときはいつも肉体的に最高のコンディションを得ることが出来て、スタミナもつきます。自分にとっては毎回が挑戦ですが、もっとも好きなプロダクションです。

─ ヌレエフ版「ドン・キホーテ」の演出全体についていえば、どんなところがお好きですか?

 ヌレエフ版は最初から最後までとても好きです。たとえばジョン・ランチベリーが編曲した音楽ですね。音色豊かなオーケストラ編成が特徴的で、古典的というよりはフォークロアに近い感じと言ったら良いでしょうか。スペインの民俗曲にとても似ているんです。それから舞台上に存在するたくさんのディテールも気に入っています。出演者数も非常に多いですし、何よりも踊り、踊り、踊りの連続です。テクニックや超絶技巧の極致です。

─ 以前と今を比べて、バジル役に取り組む際の違いがありますか。

 全般的な違いがあります。9年が経ちましたからね。私の生活は完全に変わりましたし、私の踊りも変わりました。経験からくる自信や落ち着きを得て、舞台上で起こっていることに対して自覚的になりました。それに加えてパートナリングですね。今は誰とでも組める自信があります。経験を積んだからでしょうね。それぞれのバレリーナに合うやり方はみんな違うんです。相手の身体のバランスを自分の腕だけでなく身体の内側から感じて、彼女と共に呼吸する感覚です。それからおそらくナチョ・ドゥアトの作品を踊ったことも大きいでしょう。相手の動きを後頭部のみでも感じることが求められます。そこで得た経験を今では古典作品を踊る時にも活かしています。

─ あなたはスカラ座バレエ団に何度も客演しています。あなたにとってスカラ座とは?

 私はこの劇場に育てられたと言っても過言ではありません。自分にとって初めてのゲスト契約を結んだのもスカラ座ですし、たくさんの経験を積ませていただきました。バレエ団のレベルもマハール・ワジーエフ監督のおかげで非常に上がりました。世界のトップのバレエ団と比べても遜色はありません。このバレエ団と共に成長することが出来て幸運でした。

─ この3月にスカラ座バレエ団の新鋭プリマ、ニコレッタ・マンニと「ドン・キホーテ」を共演しました。

 彼女とは数回踊りました。彼女は若いですが、すでにイタリア・バレエを代表するバレリーナだと言えると思います。訓練することを愛する、本当のプロフェッショナルです。

─ お子さんが3人いらっしゃいますね。末っ子のアレクサンドル君は昨年末にお生まれになったばかりです。

 以前は仕事だけの日々だったのですが、今は何よりも大事なのが家族です。家族が支えてくれているという確信があるので、舞台上でも以前より自信を持って踊ることができています。夜遅くに帰宅した時の、遠くから聞こえてくる小さな裸足の足音と「パパが帰ってきた!」という声は何物にも代えがたいです。

─ 自由な時間には何をなさっていますか?

  おむつを替えています(笑)


small_500-300Don Chisciotte -Leonid Sarafanov - ph Brescia-Amisano Teatro alla Scala 432_K65A0179 x.jpg
photo:Brescia-Amisano/Teatro alla Scala 


【ミラノ・スカラ座バレエ団日本公演】
マリア・コチェトコワ インタビュー

 古典では正統派のテクニックで劇場を沸かせ、現代作品では捻りの効いた表現で観客を瞠目させる。ロシアに生まれ、米国を拠点に活躍するマリア・コチェトコワは、盤石の技術とモダンな表現を武器に、現代社会を颯爽と駆け抜けるバレリーナだ。その彼女が9月に東京で踊るのは、十八番とも言える『ドン・キホーテ』。来日公演について、またファッションや芸術等についてお話を伺った。

(インタビュー・文/尾崎瑠衣 バレエ・ジャーナリスト)


「アーティストとして成長できるチャンスはいつも東京が与えてくれるの」(コチェトコワ)

─ 2009年の世界バレエフェスティバルではキトリ役を踊り、センセーショナルな成功を収められました。『ドン・キホーテ』は得意な作品では?

キトリは大好きな役で、もう何年も踊っているの。今まで6つ異なる『ドン・キホーテ』を踊ったことがあるのよ。最初の頃に比べると、今はもっと舞台上でリラックスして、明確なイメージを持って踊ることができるわ。

─ 9月に東京で踊られるは華やかで見所満載のヌレエフ版です。

ヌレエフ版を踊るのは初めてなので本当に楽しみ。様式の点でも技術的な面でも私が踊ってきた版と違うから、そういった意味ではチャレンジね。スカラ座バレエ団との共演は今回が初めて。イワン(・ワシーリエフ)と踊るのも久しぶり。新しいことに挑戦できるからわくわくしているのよ。アーティストとして成長できるような新しいチャンスは、いつも東京が与えてくれるの!

─ バレエの外では、「ハーパーズ・バザー」や「ヴォーグ」等の有名ファッション誌にも登場するなど、コチェトコワさんはファッショニスタとしても世界的に有名です。

深く考えた結果ではなくて、自然な流れなの。バレエはとても厳格な世界だから、どこかで自由にしたいと思ったのかもしれないわ。洋服はそれを着ている人の人柄を語るから。私はまだ知名度のない才能ある若手デザイナーが好き。例えばメゾンキツネやジュリアンデイヴィッドは、関係者とも親しいの。

─ 同時に現代アートや映画、音楽など、幅広い芸術に関心をお持ちですね。

アーティストはみんな、芸術全般で何が起きているのか興味を持って当然よ。だって全てはつながっているのだから。舞台上では何も隠せないの。知性も、自分が誰であるかも。だから自分の内に表現すべきものを持っているのは重要。私はギャラリーへ行ったりすることでインスピレーションを得ているの。

─ 最先端のファッションやアートがお好きとのこと。ならば東京はコチェト
コワさんにとって刺激的な街なのでは?

そうなの!人も食べ物も文化も大好き。東京では次々と新しいことが生まれていて、限られた滞在時間ですべてを知るのは不可能ね。もしタイミングさえ合えば、実際に何年か住んでみたいと思うわ。公演で訪れる世界の他の場所に対しては、一度もこんなふうに感じたことはないの。東京だけなのよ。

 
 バレエだけでなく幅広い芸術に接して、表現者として日々進化を続けるコチェトコワ。9月の東京公演では彼女の新たなキトリ像が見られるに違いない。バレエファン必見の舞台になりそうだ。

photo: David Allen(portrait), Erik Tomasson(stage)

■ 米「ヴォーグ」誌に掲載されたコチェトコワの写真→ http://bit.ly/1WcmBbB

■ ミラノ・スカラ座バレエ団公演概要はこちらから。
 古典では正統派のテクニックで劇場を沸かせ、現代作品では捻りの効いた表現で観客を瞠目させる。ロシアに生まれ、米国を拠点に活躍するマリア・コチェトコワは、盤石の技術とモダンな表現を武器に、現代社会を颯爽と駆け抜けるバレリーナだ。その彼女が9月に東京で踊るのは、十八番とも言える『ドン・キホーテ』。来日公演について、またファッションや芸術等についてお話を伺った。

(インタビュー・文/尾崎瑠衣 バレエ・ジャーナリスト)

small200-300_MARIA KOCHETKOVA  ph david allen.jpg
「アーティストとして成長できるチャンスはいつも東京が与えてくれるの」(コチェトコワ)


─ 2009年の世界バレエフェスティバルではキトリ役を踊り、センセーショナルな成功を収められました。『ドン・キホーテ』は得意な作品では?

 キトリは大好きな役で、もう何年も踊っているの。今まで6つ異なる『ドン・キホーテ』を踊ったことがあるのよ。最初の頃に比べると、今はもっと舞台上でリラックスして、明確なイメージを持って踊ることができるわ。

─ 9月に東京で踊られるは華やかで見所満載のヌレエフ版です。

 ヌレエフ版を踊るのは初めてなので本当に楽しみ。様式の点でも技術的な面でも私が踊ってきた版と違うから、そういった意味ではチャレンジね。スカラ座バレエ団との共演は今回が初めて。イワン(・ワシーリエフ)と踊るのも久しぶり。新しいことに挑戦できるからわくわくしているのよ。アーティストとして成長できるような新しいチャンスは、いつも東京が与えてくれるの!

─ バレエの外では、「ハーパーズ・バザー」や「ヴォーグ」等の有名ファッション誌にも登場するなど、コチェトコワさんはファッショニスタとしても世界的に有名です。

 深く考えた結果ではなくて、自然な流れなの。バレエはとても厳格な世界だから、どこかで自由にしたいと思ったのかもしれないわ。洋服はそれを着ている人の人柄を語るから。私はまだ知名度のない才能ある若手デザイナーが好き。例えばメゾンキツネやジュリアンデイヴィッドは、関係者とも親しいの。

─ 同時に現代アートや映画、音楽など、幅広い芸術に関心をお持ちですね。

 アーティストはみんな、芸術全般で何が起きているのか興味を持って当然よ。だって全てはつながっているのだから。舞台上では何も隠せないの。知性も、自分が誰であるかも。だから自分の内に表現すべきものを持っているのは重要。私はギャラリーへ行ったりすることでインスピレーションを得ているの。

─ 最先端のファッションやアートがお好きとのこと。ならば東京はコチェトコワさんにとって刺激的な街なのでは?

 そうなの! 人も食べ物も文化も大好き。東京では次々と新しいことが生まれていて、限られた滞在時間ですべてを知るのは不可能ね。もしタイミングさえ合えば、実際に何年か住んでみたいと思うわ。公演で訪れる世界の他の場所に対しては、一度もこんなふうに感じたことはないの。東京だけなのよ。

 
 バレエだけでなく幅広い芸術に接して、表現者として日々進化を続けるコチェトコワ。9月の東京公演では彼女の新たなキトリ像が見られるに違いない。バレエファン必見の舞台になりそうだ。

trim_500-323_MARIA KOCHETKOVA ph erik tomasson.jpg
photo: David Allen(portrait), Erik Tomasson(stage)





trim_300-450px_Claudio Coviello  ph Brescia-Amisano Teatro alla Scala IMG_5704.jpg
 前回2013年の来日公演では『ロミオとジュリエット』に主演した、イタリア人プリンシパルのクラウディオ・コヴィエッロ。その若くエレガントなロミオを、覚えている方も多いだろう。本拠地でのシーズンを終えた直後の彼に、お話を伺った。


「ヌレエフ版「ドン・キホーテ」ならではの魅力を伝えたい」(コヴィエッロ)


─  バレエを始めたきっかけを教えてください。

 5歳のとき、夏休みのアクティビティとして始めました。バレエといっても音楽に合わせて身体を動かすようなものでしたが、活発な子供だった僕には向いていたんですね。夏休みが終わると、両親がバレエ学校を探してくれました。初めは古典バレエの何たるかも良く分かっていなくて、唯一知っていたのが、当時すでに大スターだったロベルト・ボッレ。その完璧な身体美を見ては、いつかは自分もこんなダンサーになりたいと感じていました。



200-400px_Claudio Coviello in prova per Cello Suites ph Brescia e Amisano teatro alla scala K K65A2918.jpg─  今回踊られる、ヌレエフ版『ドン・キホーテ』の魅力は?

 まずは、バジル役のキャラクターです。他の劇的なバレエの主役とも、素のままの自分とも違うので、なりきるのはチャレンジでもあり、楽しみでもあります。もちろん、ヌレエフの振付は男性の踊りの数が多いし、普通は右回りだけのところに左右両方の回転があったりと、技術的にも難しい。でも作品の本当の見どころは、この振付だからこそ醸し出せる独特のチャーミングさと、場面ごとのムードの変化だと思います。特に最後のグラン・パ・ド・ドゥでは、結婚する二人の心の高まりを伝えたいですね。

─   パートナーは、同じくイタリア人プリンシパルのニコレッタ・マンニです。

 彼女と踊るのは、とても気持ちがいいですよ。僕たちは同い年だし、同僚というだけでなく友人としても気持ちの通じる相手。特に今回のキトリは、パワフルで技術も強い彼女に似合いの役で、踊る喜びが僕にも伝わってきます。

─   前回公演の際の日本の印象は?

 憧れだったロミオ役でデビューした特別なツアーでしたが、そのこと以外に、ひとつ忘れがたい思い出があります。僕はいつもお守りにブレスレットをしているのですが、開演直前にそれを外し、袖にいたスタッフの方に預けてそのままに...なくしたものと諦めていましたが、ある日スカラ座宛に東京から一通の封筒が届き、中からそのブレスレットが出てきたんです。これには本当に感動しました。その日本で再びみなさんのために踊れる日を、心待ちにしています。


 スカラ座にいると全てが美に包まれており、特にリハーサルの舞台から誰もいない客席を見渡すたびに歴史の重みを実感するというコヴィエッロ。イタリア的な陽気さの横溢する『ドン・キホーテ』の中心に立つ彼の姿が、今から楽しみだ。


インタビュー・文/長野由紀(舞踊評論家)


400-500px_Don Q Claudio Coviello ph Brescia e Amisano - Teatro alla Scala K65A1417 x.jpg

photos:Marco Brescia e Rudy Amisano/Teatro alla Scala





trim_small_Nicoletta Manni - ph Marco Brescia e Rudy Amisano - Teatro alla Scala K61A9378 x.jpg
  2013年にミラノ・スカラ座バレエに入団し、翌年にはプリンシパルに昇進。ニコレッタ・マンニは、すでに現在の同団の顔といってもよい存在だ。最近はロベルト・ボッレやレオニード・サラファーノフら有名ゲストとの共演も多く、今年6月には、ローラン・プティ振付『ノートルダム・ド・パリ』の主役として東京に招かれたばかりだ。



「ヒロインのキトリは自分に近い性格で好きな役です」(マンニ)

─ バレエを始めたきっかけは?

  母がバレエ教室を開いていたので、2歳のときに自然に始めました。母に付いて行って、初めは遊んでいるような感覚でしたが、次第にバレエに恋してしまったんです。母は私を無理やりダンサーにしようとはしませんでしたが、私自身がスカラ座バレエ学校に入りたいというと、応援してくれました。

200-400px_Cinderella Nicoletta Manni in prova - ph Brescia e Amisano K65A8170.jpg
─ スカラ座バレエ学校を卒業後は、まずベルリン国立バレエ団に入団されました。

  卒業の時私は17歳でしたが、イタリアでは18歳にならないとバレエ団に入れないのです。それで国外のオーディションに目を向け、最初に受けたベルリンに合格。当時芸術監督だったウラジーミル・マラーホフから契約をもらい、3年半在籍しました。2011年の来日公演にも、マラーホフ版『シンデレラ』とエイフマン振付『チャイコフスキー』のコール・ド・バレエとして参加したんですよ。

─ 今回は、『ドン・キホーテ』で同い年のクラウディオ・コヴィエッロと共演します。

  若手にどんどんチャンスを与えてくれるのがスカラ座のいいところですが、クラウディオとはこの作品を習いだした時期も一緒、他にもヌレエフ版『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』で組んでいるし、共に成長してきたという気持ちがあります。


 ヒロインのキトリは自分に近い性格で、好きな役です。第1幕はパワーに溢れ、第2幕はロマンティックに、そして第3幕は幸せな結婚式でしかもテクニックを全開にしてと、様々な面を出せるのも楽しいですね。お父さんやガマーシュ、キホーテなどバジル以外にも周囲の役との演技のやりとりが多いのも気に入っています。色彩豊かでお客様にとっても楽しいバレエだと思うので、日本のみなさんの前で初めてこれを踊れるのを幸せに思っています。

 
 キトリの他にも強いキャラクターの役、特に『白鳥の湖』のオディールが好きだったが、7月にラトマンスキー版を主演して「オデットのことも大好きになった」というマンニ。言葉の端々に充実ぶりを感じさせる新進のスターの、輝くような舞台を期待したい。

インタビュー・文/長野由紀(舞踊評論家)


600-400px_Don Chisciotte - Nicoletta Manni - ph Brescia-Amisano Teatro alla Scala   K65A1858.jpg
photos:Marco Brescia e Rudy Amisano/Teatro alla Scala


この7月、ミラノ・スカラ座バレエ団公演を鑑賞するため現地を訪れた舞踊評論家の長野由紀さんによる現地レポートと、「ドン・キホーテ」日本公演に主演するニコレッタ・マンニ、クラウディオ・コヴィエッロのインタビューを今週、続けてお届けします。


487335MBDG(400px-268px).jpg

美しく風格ある歌劇場と、設立以来の由緒あるバレエ団 
 
 ミラノ・スカラ座といえば世界にその名を轟かすオペラの殿堂だが、そのバレエ団もまた、1778年に現在の歌劇場の開場と同時に設立された由緒あるカンパニーである。19世紀にはマリー・タリオーニ、ファニー・エルスラーら稀代の舞姫、20世紀後半には生え抜きのカルラ・フラッチや時代の寵児だったルドルフ・ヌレエフらがたびたびその舞台に立った他、付属のバレエ学校からは、後に『白鳥の湖』の初演者となるピエリーナ・レニャーニらを輩出した。
 
 現在でもロベルト・ボッレ、スヴェトラーナ・ザハーロワ、レオニード・サラファーノフら華やかなゲストの名前がプログラムを彩るが、その妙技に酔うだけでなく若手の成長を見守ることが、現地の観客の気質だとか。

x 202_IMG_8758(photo_Marco Brescia and Rudy Amisano-Teatro alla Scala)400-266px.jpg
「ドン・キホーテ」の舞台より  

 
   そのことを象徴するように、2015/16年のシーズンを締めくくったアレクセイ・ラトマンスキーによるプティパ/イワーノフ復刻版『白鳥の湖』は、団員ばかり三組の主演キャストを揃え、じつにみごとな出来栄えだった。そもそもの強みである豊かで自発的な個々の表現力に加え、古い時代の舞踊や衣裳のスタイルがよく再現され、この名作が生まれた時代にタイムスリップしたかのよう。


492356MBDG(400px-200px).jpg
  赤、白、金を基調とする観客席には華美とは無縁の風格があり、見渡すほどに美しい。もしかしたらレニャーニの魂もこのどこかに舞い降りて、満足気に舞台を見つめているのではないか―ふとそんな夢想に捕らわれるほど、歴史の重みと現在の充実を実感する舞台だった。


長野由紀(舞踊評論家)



■ ミラノ・スカラ座バレエ団公演概要はこちらから。 


photos:Marco Brescia and Rudy Amisano / Teatro alla Scala

月別 アーカイブ

ウェブページ

  • pdf
  • images
Powered by Movable Type 5.12

このアーカイブについて

このページには、2016年8月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2016年7月です。

次のアーカイブは2016年9月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。