2016年12月アーカイブ

12月28日パリ・オペラ座での「白鳥の湖」公演後にジェルマン・ルーヴェがエトワールに任命されました! ルーヴェの階級は現在スジェ。この12月パリ・オペラ座バスティーユで上演中のヌレエフ版「白鳥の湖」では、他日の主演がエトワールばかりという中、25日に王子役デビューを果たし、その2度目の主演で、芸術監督のオレリー・デュポンの推薦により昇進が決定されました。11月の昇級コンクールで来年からのプルミエ昇格が決まっていましたが、それを飛び越えての劇的な昇進劇です。

ルーヴェの舞台は3月の来日公演〈グラン・ガラ〉、3/10(金)と3/12(日)の「ダフニスとクロエ」でご覧になれます。

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ジェルマン・ルーヴェ インタビュー[1 ] >>


ジェルマン・ルーヴェ インタビュー[2] >>


〈グラン・ガラ〉概要>>


週刊オン★ステージ新聞 (2017年1月6日付号)に掲載された、舞踊評論家の新藤弘子さんによる書評をご紹介します。


バレエとオペラで世界と闘った日本人「孤独な祝祭 佐々木忠次」 
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  ページをめくるごとに驚きがあり、笑いも涙もある。ここまで書くのかという静かな衝撃もある。
 2016年四月、目黒通り沿いにある東京バレエ団社屋の一室で、八十三年の生涯を閉じた佐々木忠次。世界の一流の舞台芸術を日本に紹介し、東京バレエ団を率いて自らも世界を駆け巡った佐々木の生涯を、雑誌「AERA」の人物ルポ「現代の肖像」などで知られる追分日出子が、一冊の評伝にまとめた。
 書き出しは、1986年、東京バレエ団が初めてパリ・オペラ座ガルニエ宮で『ザ・カブキ』を上演した際の舞台裏の描写だ。日本では思いもよらぬようなトラブルにより、スケジュールが狂ったことで苛立つ佐々木は爪を噛み、オペラ座の中を小走りに動き回る。
 続いて東京バレエ団新社屋建築当時に、外観や内装への熱烈な思い入れや並外れた買い物好きのエピソードがユーモアをこめて語られ、常に前のめりで走っていたという佐々木の姿を読者の胸の中にじゅうぶんに立ち上がらせてから、記述は過去へ、彼の生い立ちへとさかのぼってゆく。
 1933年東京の本郷で生まれ、幼い頃を戦争の中で過ごした佐々木が、戦後はじめて行った日劇で、星の輝く群青色の舞台に「わ~、きれい...」と陶然とし、その場に座り込んでしまったというエピソードは、その後の佐々木の歩む道を示唆するようで印象的だ。
 大学で演劇を学んだあとオペラの舞台監督の仕事に打ち込み、美術の妹尾河童や演出の栗山昌良、指揮の岩城宏之ら、当時の気鋭の舞台人たちとスタッフ・クラブを結成するくだりは、仕事人としての佐々木の根幹がどのように作られていったのかが伺えて興味深い。そして佐々木が三十一歳のとき、東京バレエ団が発足する。
 代表に就任した佐々木が、当初は拠点も定まらなかったバレエ団の足場を徐々に固め、海外公演を重ねて世界でも喝采をもって迎えられるカンパニーへと育てていく過程は、戦後日本がたどった成長の歩みとも重なって読み応えがある。西欧のバレエ団とはダンサーの体格ひとつとってもまだまだ大きな差があった頃、日本人ならではの強みとして、いちはやく佐々木が着目し、磨き上げたアンサンブルの美しさは、現在の東京バレエ団の中にも脈々と受け継がれている。インプレサリオ(興行師)として、カルロス・クライバーやミラノ・スカラ座など音楽界の大物を日本に招こうと果敢な直接交渉を繰り広げる様子にも目を見張るが、バレエ愛好者の興味をそそるのは、やはり世界バレエフェスティバル誕生の経緯や、世界的な振付家やダンサーとの出会いと別れかもしれない。
 プリセツカヤ、クランコ、ギエムら多くの人が登場するが、とりわけモーリス・ベジャールとジョルジュ・ドンについては、「ミラノ・スカラ座への道 ベジャールの時代」という一章で詳述されている。
 『ボレロ』のメロディについての佐々木の問いにドンが答えた「そうなんだ、誰でも踊れるんだ」という言葉には、読む人それぞれに湧き上がる思いがあるだろう。
 第三回世界バレエフェスティバルでドンと東京バレエ団が初共演した『ボレロ』の熱狂。『ザ・カブキ』のリハーサルを観たベジャールが流した涙。2007年、ローザンヌで亡くなったベジャールとの別れの描写には胸が痛む。
 著者の取材は、東京バレエ団のダンサーやスタッフはもとより、海外で通訳を担当した人物や、長く絶縁状態にあった人々にも及ぶ。
 芸術への無理解に怒りを噴出させる一方で稚気にあふれ、人をもてなし喜ばせることが大好きだった佐々木の、相克に満ちた人生が行間から煌めき出すようだ。
 あとがきに書かれた「どれほど多くの人の人生を豊かなものに変えたか、一番わかっていないのは本人だと思った」という著者の言葉に、彼の手がけた舞台を観たひとりとして、深く賛同せずにはいられない。(文藝春秋 刊) 

新藤 弘子


バイエルン国立歌劇場
2017年日本公演

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公式サイトはこちら>>


R.ワーグナー作曲 
『タンホイザー』(全3幕)  
TANNHÄUSER
キリル・ペトレンコ指揮
ロメオ・カステルッチ演出

9月21日(木) 15:00  NHKホール
9月25日(月) 15:00  NHKホール
9月28日(木) 15:00  NHKホール

■予定されるキャスト
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ


■入場料(税込)
S=¥65,000 A=¥59,000  B=¥54,000  C=¥42,000  D=¥32,000 
E=¥25,000 F=¥17,000

エコノミー券=¥15,000  学生券=¥8,000


W.A.モーツァルト作曲
『魔笛』(全2幕)
DIE ZAUBERFLÖTE
アッシャー・フィッシュ指揮
アウグスト・エヴァーディング演出

9月23日(土・祝)15:00 東京文化会館
9月24日(日) 15:00 東京文化会館
9月27日(水) 18:00 東京文化会館
9月29日(金) 15:00 東京文化会館

■予定されるキャスト
ザラストロ:マッティ・サルミネン
タミーノ:ダニエル・ベーレ
夜の女王:ブレンダ・ラエ
パミーナ:ハンナ=エリザベス・ミュラー
パパゲーノ:ミヒャエル・ナジ


■入場料(税込)
S=¥56,000 A=¥49,000  B=¥42,000  C=¥35,000  D=¥26,000 
E=¥20,000 F=¥16,000

エコノミー券=¥15,000  学生券=¥8,000

■チケット発売

☆2演目セット券(S,A,B)
WEBチケット先行発売【座席選択】 2/27(月)21:00~3/6(月)18:00

WEB&電話一斉発売 3/18(土)10:00~ WEBチケット
NBSチケットセンター 03-3791-8888
東京文化会館チケットサービス

☆単独券
WEBチケット先行発売【座席選択】 3/25(土)21:00~3/31(金)18:00

一斉発売 4/15(土)10:00~
 

NBSチケットセンターは、下記のとおり年末年始休業とさせていただきます。

 2016年12月29日(木)~2017年1月3日(火)

また、12月28日(水)は、13:00までの営業とさせていただきます。
新年は、1月4日(水)10:00から通常営業いたします。

なお、NBS WEBチケットでは、年末年始も24時間ご予約を承っておりますので、どうぞご利用ください。

旧年中はNBSの公演をご愛顧いただき、誠にありがとうございました。
2017年が皆さま方にとりまして幸多き年となりますよう祈念いたしております。

パートナーが変わるごとに新しい物語が生まれる


「『ラ・シルフィード』にはたくさんの思い出があります。なんといっても、これはエトワール任命後に初めて踊った作品です。ピエール・ラコットとギレーヌ・テスマーとの仕事も、とても学ぶことが多く素晴らしかったし...」

 こう当時を振り返るマチュー。その後、パリ・オペラ座だけでなく東京バレエ団とも踊り、世界バレエフェスティバルでも...というように、キルト姿で踊るマチューの舞台を見た人はすでに大勢いることだろう。面白いことに、彼のパートナーは公演ごとに変わっている。これまで踊った相手はオレリー・デュポン、イザベル・シアラヴォラ、斎藤友佳理、吉岡美佳、エフゲーニャ・オブラスツォーワ、ドロテ・ジルベール。そして、今回はアマンディーヌ・アルビッソンだ。

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「相手が変わるごとに、前とは少し異なる物語を僕は作り上げることができます。新しいセンセーションが得られて、新しいパートナーとの間に新しい対話が生まれ...相手が変わることには、こういった面白があります。日本で踊るアマンディーヌとの稽古はこれから。どんな驚きが待っているのか、わくわくします」

 一方、『テーマとヴァリエーション』は日本で踊るのが初めての作品だ。ずいぶんと以前にバリシニコフの映像を見た時に、"最高だ! 踊ってみたい"とダンサーとしての幻想を掻き立てられたという。
「だけど、実際に踊るとなると、話は別です。技術的に簡単な作品ではないし、あの素晴らしいチャイコフスキーの音楽に浸りたいので、できればこの作品については観客のままでいたい、って思ってしまいます(笑)」

 
オレリーの希望で、この年末、ロットバルトに挑戦!

 12月はオペラ・バスチーユの『白鳥の湖』でジークフリート役が6公演あり、さらに芸術監督オレリーの希望で、マチューはロットバルト役に初挑戦することになった。

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「新しい役を得ることで、『白鳥の湖』という作品に対してこれまでとは違うヴィジョンをもつことができますね。プリンス以外の登場人物について、よりよく理解できるようになります。技術面での発見もありますよ。ロットバルトとのパ・ド・ドゥで、こうしてくれたらいいのに、とプリンス役で踊っていて思っていたことが、実は不可能なのだ、ということがわかったり...。でも、似ているようで似ていない鏡の関係にある王子とロットバルトを同時期に踊るというのは、複雑な仕事と言えます。鏡の向こう側に行かねばならないのですから。プリンスとロットバルトの関係というのは、ダンサー同士の関係で変わってくると思います。それに身長差や年齢差といった要素も大きな関わりがありますね。ロットバルトの方が大柄なら、プリンスに対して威圧的であることを観客にわからせるのは簡単ですが、小柄な場合はプリンスを支配する立場であることを観客にわからせるための努力が必要...といったように」

 マチュー"ロットバルト"の初舞台は12月25日。プリンスを踊るのはジェルマン・ルーヴェで、彼もこの晩が初舞台だ。二人がいったいどのような鏡関係を見せるのか。これはまさに見てのお楽しみ! である。

 
インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


Photo:James Bort/OnP(ポートレート)、Anne Deniau/OnP(舞台写真)





◆主な配役◆


クララ: 沖香菜子
くるみ割り王子: ダニール・シムキン


【第1幕】
クララの父: 永田雄大
クララの母: 奈良春夏
兄フリッツ: 岸本夏未
くるみ割り人形: 高橋慈生
ドロッセルマイヤー: 木村和夫
ピエロ: 河上知輝
コロンビーヌ: 中島理子
ムーア人: 吉田 蓮
ねずみの王様: 森川茉央

【第2幕】
スペイン: 二瓶加奈子-岸本秀雄
アラビア: 政本絵美-ブラウリオ・アルバレス
中国: 岸本夏未-高橋慈生
ロシア: 伝田陽美-入戸野伊織
フランス: 中川美雪-足立真里亜-山本達史
花のワルツ(ソリスト):
吉川留衣、小川ふみ、加藤くるみ、崔美実
森川茉央、杉山優一、松野乃知、永田雄大

指揮: 井田勝大
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団




第1幕 14:00 - 14:50

休憩  20分

第2幕  15:10 - 16:00

◆主な配役◆

クララ: 川島麻実子
くるみ割り王子: 秋元康臣

【第1幕】

クララの父: 森川茉央
クララの母: 奈良春夏
兄フリッツ: 吉川留衣
くるみ割り人形: 高橋慈生
ドロッセルマイヤー: 柄本 弾
ピエロ: 樋口祐輝
コロンビーヌ: 中川美雪
ムーア人: 井福俊太郎
ねずみの王様: 永田雄大

【第2幕】

スペイン: 秋山 瑛-入戸野伊織
アラビア: 三雲友里加-松野乃知
中国: 岸本夏未-吉田 蓮
ロシア: 二瓶加奈子-宮川新大
フランス: 中川美雪-足立真里亜-山本達史
花のワルツ(ソリスト):
伝田陽美、小川ふみ、崔美実、川淵 瞳
杉山優一、岸本秀雄、ブラウリオ・アルバレス、和田康佑

指揮: 井田勝大
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


◆上演時間◆

第1幕 14:00 - 14:50

休憩   20分

第2幕  15:10 - 16:00

◆主な配役◆


クララ: 沖香菜子
くるみ割り王子: ダニール・シムキン

【第1幕】

クララの父: 永田雄大
クララの母: 奈良春夏
兄フリッツ: 岸本夏未
くるみ割り人形: 中村祐司
ドロッセルマイヤー: 木村和夫
ピエロ: 山本達史
コロンビーヌ: 中島理子
ムーア人: 吉田 蓮
ねずみの王様: 森川茉央

【第2幕】

スペイン: 二瓶加奈子-宮川新大
アラビア: 崔美実-ブラウリオ・アルバレス
中国: 岸本夏未-岡崎隼也
ロシア: 伝田陽美-入戸野伊織
フランス: 中川美雪-秋山 瑛-岸本秀雄
花のワルツ(ソリスト):
吉川留衣、三雲友里加、政本絵美、加藤くるみ
森川茉央、杉山優一、松野乃知、永田雄大

指揮: 井田勝大
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


◆上演時間◆

第1幕 19:00 - 19:50

休憩   20分

第2幕  20:10 - 21:00

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個性的なリュセイオンと控えめなエフィー、両極の女性役に挑戦

前回の来日公演では『ドン・キホーテ』のキトリ、『椿姫』のプリュダンス役を踊って大活躍をしたヴァランティーヌ。12月はオペラ・ガルニエではイリ・キリアンの『ベラ・フィギュラ』と『詩編交響曲』に、オペラ・バスチーユの『白鳥の湖』ではスペインの踊りに配役され、忙しい毎日を送っている。

「大変だけど、うれしいことです。キリアンは以前から仕事をしてみたいと夢見ていた振付家。化粧もなく、コスチュームも超シンプル、裏に隠れられる役柄もなく、ダンサーたちに自分自身であれ、と要求するのが彼の作品。だから私たちは気分や疲労の度合いで、毎晩異なることを観客にみせることになりますね。すごく面白い仕事です。『白鳥の湖』、これに参加できるのは、とても幸運です。毎回童心に返って舞台を眺めてしまいます! このようにオペラ座バレエ団では、さまざまなスタイルの作品を踊れる機会があるのがいいですね」

 種々の役を踊るが、表現しやすく、人物に入り込みやすいというのは、強く、個性のある女性だ。彼女がプルミエール・ダンスーズへの昇級を決めたコンクールでの自由曲は『カルメン』だったし、ガラ公演で演目が選べるときにはキトリを踊る、ということからもわかるだろう。

 3月の来日公演で彼女が配役されている『ダフニスとクロエ』のリセオン役も、こうした役の延長上といえるだろう。バンジャマン・ミルピエによるこの作品は抽象的ではあるが、古代ギリシャ時代に書かれた物語のようにリュセイオンはダフニスを誘惑する年上の女性というのが振付けにも生きている。

「ミルピエ作品を踊るのは、これが初めてとなります。でも彼のスタイルは知っているし、オペラ座でこの作品が踊られた時に目をつけていたパ・ド・ドゥがあって...それを日本で踊れることができるのが、とてもうれしいです」

 彼女は『ラ・シルフィード』でジェイムズの婚約者エフィー役にも配役されている。これは、リュセイオンとは180度異なる女性だ。プルミエール・ダンスーズに上がった直後に、オペラ座で踊っている。

「控えめで、恥ずかしがり屋、そして結婚を望んでいる若い女性というのがエフィーなので、ナイーヴや無垢といった面が要求されます...この女性に入り込むのは、私には簡単ではなかったですね。でも、それだけに、こうした役に取り込むことが仕事としてはとっても興味深い、といえます。まずは、私のあり余るエネルギーのはけ口をいかにみつけるか、から(笑)。テクニック的にはピュアなフレンチ・スタイルなので、下肢の仕事が大切。これはたっぷりと稽古しなくては!」 

 桜が咲く上野公園。これが彼女の前回の来日ツアーの最高の思い出だという。今回、きっと桜はまだだろうな、と少々残念そう。でも、日本のバレエファンの温かな歓迎、ポストイットやミニ手帳など細々とした品の買い物...ヴァランティーヌの来日への期待は尽きない様子だ。
 


インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


Photo:James Bort/OnP






 パリ・オペラ座バレエ団来日公演〈グラン・ガラ〉で上演される、ジョージ・バランシン振付の「テーマとヴァリエーション」の映像が届きました。主演はローラ・エッケとジョシュア・オファルトです。
 素晴らしいテクニックをもつオペラ座ダンサーたちが踊る、華やかで心躍る「テーマとヴァリエーション」。来年3月、映像とは違う組み合わせの、3組のエトワールペア主演によって披露されます。どうぞお楽しみに!




正統派ダンスール・ノーブルのエトワール候補としていま大注目のジェルマン・ルーヴェのインタビュー。第2回は、この年末公演で大抜擢を受けた『白鳥の湖』についてです。

エトワールに混ざってジークフリートを踊れる幸運

 来日の前に、ジェルマンにはパリで大きな仕事が控えている。『白鳥の湖』のジークフリート役をクリスマスから大晦日にかけて、3晩踊るのだ。オレリー・デュポンがこの配役を発表したのはコンクール前で、彼はスジェ。オペラ座のヒエラルキーを尊重し、主役にはエトワールを配すると宣言している彼女による、異例の抜擢といえよう。

「 『白鳥の湖』はいつか主役を踊りたいと夢見ていた作品です。前回のオペラ座の公演では、パ・ド・トロワやマズルカなどコール・ド・バレエで踊っています。それにガラで第2幕、第3幕のパ・ド・ドゥを踊ることがよくあるし、前回のコンクールでは第1幕のスロー・ヴァリエーションを自由曲に選んでいます。ビデオで何度もみているし、よく知っている作品だ、といえます。
 ジークフリート役を踊れるのは、とても嬉しいです。でも、『白鳥の湖』では僕以外はエトワールばかりが配役されているので、これはすごい幸運だとわかるだけに、スジェの僕を主役に選んでくれたことをオペラ座の上層部に失望させたくない、という思いが強くあって。実はこの間のスジェからプルミエールに上がるコンクールがとってもストレスだったのです。彼らの僕に対する期待にふさわしい仕事をみせたいと思ったので...」

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「白鳥の湖」ジークフリート(2015年の昇級コンクールより) photo:Sébastien Mathé

 今回のコンクールはオペラ・ガルニエで公演〈ジョージ・バランシン〉の真っ最中のことだった。彼は『ブラームス・シェーンベルグ・カルテット』と『ソナチネ』に配役されていたので、コンクールのための稽古の時間を捻出するのも大変だったのだが、無事に1席のプルミエ・ダンスールのポストを獲得することができた。

「エトワールに混じって自分もジークフリートを踊るのだ、という公演へのストレスはあります。でも、そのことを意識していたらストレスが増すばかり。プレッシャー、他人の視線といったことから自分を解放する必要があります。だから、こう思うようにしています。"外科医とちがって、人命はかかっていないんだ。美しい踊りをみせ、舞台上で喜びが感じられ、観客と分かち合うことができることが大切なんだ"と」

 テクニック的には難しいけれど、学校時代からの仕事の積み重ねの延長上にあるのがヌレエフの『白鳥の湖』だという。これまで怠ることなくやってきたら、自然に踊れるはず! と、ジェルマンの発言はなんとも頼もしい。『白鳥の湖』の主役を踊ることによって、一回り大きくなって来日するに違いない。


インタビュー・文/濱田琴子(ジャーナリスト、在パリ)


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